再石灰化で虫歯は治るのか

再石灰化で虫歯は治る

この記事のポイント
🦷

初期虫歯は治る可能性がある

エナメル質表層の白濁段階では、再石灰化によって修復が期待できます

⚗️

脱灰と再石灰化のバランスが鍵

口腔内のpH変化により、歯は常に溶解と修復を繰り返しています

💧

唾液とフッ素が再石灰化を促進

適切なセルフケアで自然治癒力を最大限に活用できます

再石灰化による初期虫歯の修復メカニズム

再石灰化とは、歯のエナメル質が酸によって溶け出したミネラル成分を、唾液中のカルシウムイオンやリン酸イオンが再び取り込んで修復する現象です。口腔内は通常中性に保たれていますが、食事をすると虫歯菌が糖分を栄養源として酸を生成し、pH5.5以下になるとエナメル質を構成するハイドロキシアパタイトからカルシウムとリン酸が溶け出します。この現象を「脱灰」といいます。

参考)https://www.earth.jp/mondahmin/column/07/


食後約1時間は脱灰と再石灰化が繰り返され、このバランスが保たれている間は健康な歯が維持されます。初期虫歯の段階で脱灰よりも再石灰化が促進されると、歯は修復されて元に戻ります。ただし、これはエナメル質表面に白濁や薄い変色が見られる段階に限られ、穴が開いていない状態でなければなりません。

参考)初期虫歯は、再石灰化で治る?!歯医者に行かず初期虫歯を治す3…


唾液にはカルシウムイオンとリン酸イオンが過飽和状態で含まれており、口腔内のpHが中性6.5〜7.5に戻ると、これらのイオンがエナメル質の中に戻って再び固体のミネラルになります。この再石灰化プロセスにより、初期虫歯は自然治癒する可能性があるのです。

参考)虫歯が自然に治る?「再石灰化」を知って虫歯ゼロの歯になろう!…

再石灰化を促進するフッ素の作用

フッ素は再石灰化を大きく促進する物質として知られており、わずか0.05ppm以上の濃度があれば再石灰化促進作用が発揮されます。フッ素が再石灰化を促進する主な理由は、脱灰されたエナメル質中のリン酸カルシウムの反応性を高める働きにあります。

参考)なぜ、フッ素が再石灰化を促進するか?


脱灰されたエナメル質にはハイドロキシアパタイト以外にも、ブルーシャイトやリン酸オクタカルシウムなど様々なリン酸カルシウムが存在します。フッ素が存在すると、これらのリン酸カルシウムの反応性が高まり、ハイドロキシアパタイトに変化し、さらにフッ化ハイドロキシアパタイトやフルオロアパタイトへと転化します。これらのフッ素含有アパタイトは溶解度積が小さいため、カルシウムイオンとリン酸イオンの濃度が比較的低い条件下でも結晶化しやすく、再石灰化が促進されるのです。​
フッ素入り歯磨き粉を使用する際は、濃度が重要です。1450ppmのフッ素濃度を持つ歯磨き粉は、1000ppmのものと比較して有意に再石灰化効果が高いことが示されています。また、歯磨き後のすすぎを1回にすることで、口腔内にフッ素が長く留まり、再石灰化効果がさらに高まります。

参考)虫歯にならない方法① 再石灰化の強化法3選 – 栗林歯科医院…

初期虫歯の見分け方と白濁の特徴

初期虫歯を見分けるには、歯の表面に現れる白濁(ホワイトスポット)に注目する必要があります。この白濁は、エナメル質が酸によって溶け始めているサインであり、まだ穴が開いていない脱灰の段階です。

参考)http://www5.famille.ne.jp/~ekimae/sub7-67-5.html


初期虫歯による白濁には特徴的な性質があります。表面がザラザラしており、光沢が失われている点が重要な見分け方です。乾いた状態の時に見えやすく、鏡で歯の表面をよく観察すると気付けます。一方、エナメル質形成不全による白斑は表面が滑らかで光沢があるため、触感で区別できます。

参考)虫歯の初期症状とは?早期発見のポイントと治療法も


白濁が進行すると、茶色や黒っぽい変色として現れることもありますが、この段階でも痛みがないため見落としやすいのが特徴です。初期虫歯とは、エナメル質の表面が白く濁ったり薄く変色している段階でまだ穴は開いていない状態を指します。この状態ではミネラルが唾液に溶け出しただけなので、再石灰化が起これば元に近い構造が回復する可能性があります。

参考)虫歯は自然治癒できる?専門医が教える再石灰化の全知識|金町駅…

虫歯予防のための効果的なセルフケア

再石灰化を促進し虫歯を予防するためには、日々のセルフケアが不可欠です。まず基本となるのは、朝食・昼食・夕食後の1日最低3回の歯磨きです。特に夜寝る前の歯磨きは必須で、睡眠時は唾液の分泌量が減少するため、虫歯菌が活動しやすくなるからです。

参考)虫歯予防のためのセルフケア


歯磨きだけでは歯と歯の間の汚れは十分に落とせないため、フロスや歯間ブラシの使用も重要です。フッ素入り歯磨き粉を使用し、磨いた後のすすぎは1回に抑えることで、フッ素が口腔内に長く留まり再石灰化効果が高まります。

参考)虫歯予防のために今日からできる!効果的なセルフケア5選


また、フッ化物洗口液の利用も効果的な予防法の一つです。4歳以上であれば使用でき、歯科医院専用のキシリトール100%配合ガムを噛むことも、唾液分泌を増やし再石灰化に効果があると考えられています。市販のキシリトールガムは55〜65%しか含まれていないため、効果を求めるなら歯科医院専用のものが推奨されます。​

食生活が再石灰化に与える影響

食生活の習慣は、脱灰と再石灰化のバランスに大きく影響します。だらだらと長時間食事をしていたり、間食が多かったりすると脱灰ばかりが進み、再石灰化の作用が追いつかなくなります。糖質を頻繁に摂取したり、オーラルケアを怠って歯垢が長時間付着しているような口内環境が続くと、再石灰化の修復スピードが追いつかず、初期虫歯へと進行してしまいます。

参考)不規則な食生活を続けると歯にも影響があるの? href=”https://www.furusawa-dc.com/2221″ target=”_blank”>https://www.furusawa-dc.com/2221amp;#8211;…


再石灰化を促進する食品として、乳製品が特に重要です。牛乳・チーズ・ヨーグルトなどにはカルシウムとリンが豊富に含まれており、歯の再石灰化を促します。特にチーズは唾液分泌促進作用があり、口の中のpHを中和する効果もあるため、虫歯予防に有効です。

参考)食べることでむし歯を予防!今日から始める「美味しく賢い」食生…


おやつや甘いものを控えることも重要な対策です。食事の回数や間隔を適切に管理し、食後は速やかに歯磨きを行うことで、脱灰の時間を最小限に抑え、再石灰化の時間を確保できます。このように食生活を見直すことは、再石灰化による初期虫歯の自然治癒を促す上で欠かせない要素なのです。​

唾液の分泌を促進して虫歯を予防する

唾液は再石灰化において中心的な役割を果たす重要な体液です。唾液による虫歯予防で最も効果を実感しやすいのは「自浄作用」で、食べかすや細菌を洗い流す働きがあります。また、再石灰化作用は唾液に含まれるリン酸やカルシウムが主体となって進行します。

参考)https://tsuruokashika.com/blog/2024/01/24/%E8%99%AB%E6%AD%AF%E4%BA%88%E9%98%B2%E3%81%AB%E3%81%AF%E5%94%BE%E6%B6%B2%E3%81%8C%E5%8A%B9%E3%81%8F%E3%81%A3%E3%81%A6%E6%9C%AC%E5%BD%93%EF%BC%9F%E9%8E%8C%E5%80%89%E3%81%AE%E6%AD%AF%E7%A7%91%E5%8C%BB/


唾液の分泌量が少なかったり、唾液自体の質に問題がある場合、脱灰が優位に立ちやすくなります。そのため、唾液の分泌を促進することが虫歯予防の鍵となります。ガムを噛むことは唾液の分泌量を増やす効果的な方法で、特にキシリトール配合のガムは再石灰化促進に役立ちます。

参考)むし歯が自然に治る?『再石灰化』の不思議|門真の歯科・歯医者…


食事の際によく噛むことも唾液分泌を促進する重要な習慣です。十分な咀嚼は唾液腺を刺激し、唾液の分泌量を増やすだけでなく、唾液の質も向上させます。水分補給も忘れてはいけません。口腔内が乾燥すると唾液の分泌が減少し、再石灰化の機会が失われるため、こまめに水を飲むことが推奨されます。​
<参考リンク>

フッ素による再石灰化の詳しいメカニズムについて、リン酸カルシウムの反応性向上と共通イオン効果の観点から解説されています。

なぜ、フッ素が再石灰化を促進するか?

初期虫歯の自然治癒の条件と、削らずに済む判断基準について専門医が詳しく解説しています。

虫歯は自然治癒できる?専門医が教える再石灰化の全知識