再発性多発軟骨炎と診断基準と治療

再発性多発軟骨炎 診断基準

この記事の概要(医療従事者向け)
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診断基準は複数

再発性多発軟骨炎(RP)は、McAdam、Damiani/Levine、Michetなど複数の診断基準があり、目的(研究/臨床、早期/進行)で使い分けが生じます。

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日本の「手引き」を軸に整理

日本では小児慢性特定疾病などでMichet改変の診断の手引きが提示され、耳介・鼻・喉頭気管の炎症と、眼病変・難聴/前庭障害・血清反応陰性関節炎の組合せで考えます。

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気道病変は診断と予後の両方で重要

気道軟骨炎は約半数で、狭窄や軟化による気道閉塞が死因になり得るため、診断の確度を上げるだけでなく重症度評価・早期介入の観点でも最重要ポイントです。

再発性多発軟骨炎 診断基準とMichet改変の要点

 

再発性多発軟骨炎(RP)は「これ1つで確定」という特異的検査が現時点で存在せず、臨床所見・血液検査・画像・病理を総合して診断する疾患として位置付けられています。

そのため、現場では“どの診断基準で、どこまで満たしたらRPとして扱うか”をチーム内で言語化しておくことが、診断遅延と不要な検査の両方を減らします。

日本語で参照しやすい枠組みとして、小児慢性特定疾病情報センターの「診断の手引き(Michetらの診断基準を改変)」は、軟骨炎の部位と付随症状の組み合わせで診断に近づく設計です。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/7cc7ca740d5c5f98d845f25a1692a9b76bd5562f

手引きの骨格は、(1)耳介・鼻・喉頭気管軟骨の3つのうち2つ以上に“証明された炎症”がある、または(2)それらのうち1つに“証明された炎症”があり、眼病変・難聴/前庭障害・血清反応陰性関節炎のうち2つを満たす、などの組合せです。

さらに(3)軟骨病変あるいは上記の付随所見のいずれか1つ+当該軟骨部の組織所見(軟骨変性や炎症細胞浸潤など)という“病理で押し切る”ルートも明記されています。

「証明された炎症」をどう証明するかが実務上の論点になります。

耳介なら疼痛・発赤・腫脹・変形といった典型像、鼻なら鼻根部痛と鞍鼻、喉頭気管なら嗄声・咳嗽・喘鳴・呼吸困難など、手引きに列挙されている臨床像の確認が第一歩です。

ここで重要なのは、診断基準が“症状の羅列”に見えても、実際には「軟骨(あるいはプロテオグリカン豊富組織)が炎症で壊れていく」時間軸を捉える設計だと理解する点で、初期では項目が揃わない可能性を前提に疑い続ける必要があります。

参考)301 Moved Permanently

再発性多発軟骨炎 診断基準で頻出の臨床症状(耳介軟骨炎・鼻軟骨炎・気道軟骨炎)

RPの臨床像で、全経過を通じて最も多いのは耳介軟骨炎で、次いで気道軟骨、鼻軟骨、関節軟骨などの炎症が主体とされています。

この頻度情報は、診断基準を読む際の“重み付け”として役立ち、特に耳介軟骨炎は「まず疑う入口」になりやすい一方、気道病変は「見落とすと致命的」になり得る点で性格が異なります。

耳介軟骨炎は疼痛・発赤・腫脹・変形が典型で、進行すると耳介崩壊から外耳道狭窄をきたし伝音性難聴を合併し得る、と整理されています。

ここで臨床的に有用な“意外な落とし穴”は、患者が「耳が痛い」と言っていても、感染性外耳炎や蜂窩織炎として抗菌薬で経過観察され、再発の反復で初めてRPが疑われるパターンです(疼痛が強いほど感染を想起しやすい)。

鼻軟骨炎は鼻根部の疼痛・発赤・腫脹・変形として現れ、鞍鼻を呈することがある、と手引きに明示されています。

鞍鼻が成立した段階は組織破壊が進んだサインなので、既に「診断基準を満たしやすいが、可逆性は低い」局面である点が現場の意思決定(早期に免疫抑制へ舵を切るか等)に直結します。

喉頭気管軟骨炎は“半数の患者に合併”し、嗄声、咳嗽、喘鳴、呼吸困難を呈し、狭窄や軟化による気道閉塞が死因となる、とまとめられています。

この項目は診断基準の一要素であると同時に、重症度・予後規定因子として扱うべきで、難病情報センターでも高度気道病変ではステロイド単独で抑えられないことがあるため早期から免疫抑制薬の使用を推奨すると記載されています。

再発性多発軟骨炎 診断基準を支える検査・組織所見(生検・炎症反応・画像)

難病情報センターの記載では、RPの診断に特異的な検査は存在せず、臨床所見、補助的血液検査、画像所見、軟骨病変の生検の総合判断で診断する、とされています。

さらに、血清学的な診断マーカーがない現状では、生検(耳、鼻、気道など)による病理学的診断は、臨床的に診断が明らかであっても基本的には必要、と踏み込んで記載されています。

一方で、生検で特異的所見が得られるかはタイミングなどに依存する、とも明記されており、「やれば必ず確定する検査」ではない点は、検査計画の段階で患者説明に織り込むべきです。

小児慢性特定疾病の手引きでは、組織所見として「軟骨の変性(好塩基性低下、弾性線維と膠原線維の変性・断裂、線維化、石灰化)および炎症細胞浸潤など本症に合致した所見」が例示されています。

この“病理ルート”は、典型症状が揃いにくい早期や、気道限局型などで診断基準の臨床項目が不足する局面で特に価値が高い一方、侵襲(部位によっては気道生検など)とリターンを天秤にかける必要があります。link.springer+1​

補助検査の使いどころとしては、炎症反応(CRPなど)そのものが特異的ではないため「否定目的」には弱く、むしろ“活動性の裏付け”や重症度評価とセットで解釈するのが現実的です。

難病情報センターには重症度分類の項目としてCRP(2.0mg/dL以上)も含まれており、診断というより「管理指標」として取り込まれている点が実務に近い設計です。

ここで臨床上の工夫として、画像は「基準を満たすため」ではなく「危険部位を見落とさないため」に使う、という目的の置き換えが有効です。

特に気道病変は致死的になり得るため、呼吸器症状が軽微でも、耳介・鼻・眼などの所見が揃った時点で“気道を評価する理由”をチームで共有しておくと診断基準が機能しやすくなります。semanticscholar+1​

再発性多発軟骨炎 診断基準と鑑別診断(感染・自己免疫・合併)

RPは稀少疾患で、原因不明とされ、疫学情報や病態研究が十分でないという背景が示されています。

この“稀少性”そのものが鑑別の難しさに直結し、現場ではまず頻度の高い感染症・外傷・他の炎症性疾患に診断が引っ張られがちです。

耳介の発赤・腫脹・疼痛は感染性疾患と紛らわしく、RPの耳介軟骨炎は放置・遷延で耳介崩壊や外耳道閉塞、難聴につながり得るため、反復性・左右差・軟骨部優位など“経過と分布”に注目することが重要です。

鼻軟骨炎も同様に、鞍鼻が成立する前段階で拾い上げないと不可逆変形につながるため、「鼻根部痛+炎症所見+他部位の軟骨炎(耳介など)」という組み合わせは強いシグナルとして扱うべきです。

気道症状(喘鳴、呼吸困難など)は喘息・COPD・感染で説明されてしまうことがある一方、RPでは喉頭気管の狭窄や軟化による気道閉塞が死因となる、と明示されているため、“呼吸器内科・耳鼻科のどちらの文脈でもRPを思い出す”体制が安全性に直結します。

また、RPは心血管病変や中枢神経病変などの合併で予後不良が残るとされ、末梢・中枢神経症状は約10%程度に観察される、とまとめられています。

「診断基準の項目にないから後回し」ではなく、疑った時点で“重症臓器のスクリーニング”を意識することが、結果的に診断の確度と予後の両方を改善します。

参考:成人のRP患者の25~35%に関節リウマチや血管炎症候群など他の自己免疫疾患を合併することがある、と手引きに記載されています。

この情報は“意外に見落とされやすい”ポイントで、RPを診断した瞬間に鑑別が終わるのではなく、併存疾患の探索(症状がRP由来か併存疾患由来か)へ視点を切り替える必要があります。

再発性多発軟骨炎 診断基準を満たす前の「疑い方」(独自視点:早期・限局型の実務)

検索上位の解説は診断基準の一覧提示に寄りやすい一方、実臨床で最も困るのは「まだ基準を満たしていないが、RPとして動かないと危ない」状況です。

難病情報センターにも、診断は総合判断であり、生検のタイミングで所見が左右される、と書かれているため、“基準未満=否定”と短絡しない姿勢が公式情報とも整合します。

そこで独自視点として、RP疑いの段階で役立つ「基準の使い方」を、現場の行動に落とすと次のようになります。semanticscholar+1​

🩺 まず「軟骨炎の地図」を作る:耳介・鼻・喉頭気管の3点セットを意識して診察・問診し、1カ所だけでも“証明された炎症”に近い所見があるなら、残り2カ所の症状(嗄声、鼻根部痛、再発性耳痛など)を具体的に掘ります。

🔍 「付随所見」を取りに行く:眼病変、難聴/前庭障害、血清反応陰性関節炎は、患者が主訴として言わないことがあるため、チェックリスト化して拾い、Michet改変の組合せに当てはめます。

⚠️ 気道は“症状軽くても評価”:喉頭気管軟骨炎は半数に合併し、気道閉塞が死因になり得るため、呼吸器症状が軽度でも「喘鳴の質」「労作時の変化」「嗄声」などを系統立てて確認し、必要なら専門科連携を早めます。

🧪 生検は“確定目的+除外目的”:RPは特異的血清マーカーがなく、生検が基本的に必要と書かれている一方でタイミング依存でもあるため、病理で押すのか、鑑別(感染・腫瘍など)を同時に進めるのか、目的を明確にして選択します。

最後に、チーム運用の観点では「診断基準は診断のゴールではなく、診断を説明可能にする枠組み」と定義しておくと、初期・限局型の迷いが減ります。link.springer+1​

RPは約500人程度という推計も示される希少疾患で、情報の希薄さが診断遅延を招きやすいため、院内での疑い症例の共有(耳介+喘鳴など)こそが“早期診断の実装”になります。


難病の全体像(症状頻度、診断基準カテゴリ、重症度分類の考え方)を確認できる:難病情報センター:再発性多発軟骨炎(指定難病55)
Michet改変の診断の手引き(組合せ、病理所見の例示、主要症状の整理)を確認できる:小児慢性特定疾病情報センター:再発性多発軟骨炎 診断の手引き

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