良性腫瘍の種類と特徴
良性腫瘍の基本的特徴と診断
良性腫瘍は、悪性腫瘍とは異なり、成長が限定的で腫瘍細胞が体の他の部位に転移しないことが最大の特徴です 。これらの腫瘍は周囲の正常組織を押しのけるようにしてゆっくりと大きくなりますが、浸潤や転移をすることはありません 。
参考)皮膚の良性腫瘍の治療は古林形成外科上野院|形成外科専門医によ…
診断においては、視診(見た目による判断)、触診(触って判断)、ダーモスコピーという皮膚表面を特殊な拡大鏡で観察する診察を組み合わせて、総合的に良性か悪性かを判断します 。多くの良性腫瘍は「正常な」細胞、つまり多かれ少なかれ完全に分化または成熟した細胞で構成されており、発生した組織に基づいて命名されることが多いのが特徴です 。
医療従事者として注意すべき点は、良性腫瘍であっても適切な診断が重要だということです。確定診断には組織検査(皮膚生検検査)が必要になることがあり、ダーモスコピー検査によって多くの腫瘍を識別することが可能です 。
参考)皮膚の良性腫瘍の治療は古林形成外科札幌院|形成外科専門医によ…
良性腫瘍脂肪腫の種類と症状
脂肪腫は皮下に発生する軟部組織の腫瘍の中で最も多く見られる良性腫瘍です 。成熟した脂肪細胞で構成されており、皮膚の下に柔らかいしこりとして触れ、痛みはほとんどなく、ゆっくりと大きくなるのが特徴です 。
参考)脂肪腫|日本形成外科学会
脂肪腫の分類は発生部位によって行われ、皮膚の下に生じるものを浅在性脂肪腫、筋膜の下や筋肉内・筋肉間に生じるものを深在性脂肪腫と呼びます 。また、内部に含まれる細胞の成分によって線維脂肪腫、筋脂肪腫、血管脂肪腫などのタイプに分けられます 。
参考)脂肪腫|大阪皮膚のできものと粉瘤クリニック古林形成外科難波院
💡 診断のポイント
- 触感:柔らかく、やや弾力があり、多少の可動性を有する
- 症状:一般的に痛みはないが、血管脂肪腫や神経を圧迫している場合は痛みを伴うことがある
- 発生頻度:約80%の脂肪腫に染色体異常が認められる
現在のところ脂肪腫の発生原因は完全には解明されていませんが、服が擦れるなどの外部刺激を受けやすい場所にできる傾向があることが分かっています 。
参考)脂肪腫は小さい間は放置して大丈夫?症状や治療法を詳しく解説 …
良性腫瘍粉瘤(表皮嚢腫)の診断と症状
粉瘤は皮膚の下に袋状の構造(嚢胞)が形成され、その中に角質や皮脂などの老廃物が蓄積することで生じる良性腫瘍です 。医学的には「表皮嚢腫」または「アテローム」とも呼ばれています 。
粉瘤の初期症状は皮膚の下に小さなしこりとして現れますが、通常は痛みやかゆみといった自覚症状がほとんどないため、気づかずに放置されることも少なくありません 。皮脂腺の出口が角質などで詰まって袋状に膨らんだもので、内容物は悪臭のある粥状になった皮膚の角質です 。
参考)皮下良性腫瘍
📋 粉瘤の進行段階
- 初期:数ミリ程度の小さな盛り上がり、痛みやかゆみなし
- 進行期:徐々に大きくなり、中央に「へそ」(小さな黒点)が見える
- 炎症期:細菌感染により赤み、腫れ、痛み、悪臭などが出現
炎症を伴った状態は「炎症性粉瘤」と呼ばれ、膿の排出や抗生物質の投与、さらには切開や摘出などの外科的治療が必要になることがあります 。
参考)粉瘤の症状・治療方法とは
良性腫瘍血管腫の特徴と治療法
血管腫は血管が異常に増殖して形成される腫瘍で、赤や青紫色をしているのが特徴です 。触ると柔らかく、圧力をかけると色が薄くなる性質を持ち、血管内皮細胞の増殖によって発生します 。
参考)口腔の良性腫瘍とは?放っておいてもいいの?症状、原因、治療方…
血管腫の種類は発生する血管の種類によって分類され、毛細血管性血管腫、海綿状血管腫、混合型血管腫などがあります。多くの場合、生後数週間から数か月で現れ、自然に縮小することもありますが、部位や大きさによっては治療が必要になることがあります。
血管平滑筋由来の腫瘍も良性腫瘍の一つで、立毛筋由来平滑筋腫は体幹や四肢に小結節として現れ、単発性と多発性の2種類があります 。陰部平滑筋腫は大陰唇、会陰、陰茎、乳頭、乳輪部などの部位に発生する特徴があります 。
良性腫瘍神経線維腫の診断と合併症
神経線維腫は、シュワン細胞(末梢神経線維の周りを覆う細胞)や末梢神経を支持するその他の細胞が増殖した良性の腫瘍で、肌色をしているのが特徴です 。神経線維腫症1型(NF1)の患者に多く見られ、全身のあらゆる神経に影響を及ぼす可能性があります 。
参考)神経線維腫症 – 23. 小児の健康上の問題 – MSDマニ…
神経線維腫症1型は神経皮膚症候群の一つで、神経系(脳、脊髄、末梢神経)と皮膚が侵される病気です 。カフェ・オ・レ斑、神経線維腫を主徴とする常染色体優性遺伝の全身性母斑症であり、皮膚、神経系、眼、骨などに多種病変が年齢の変化とともに出現し、多彩な症候を呈します 。
参考)https://xmil.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2023/04/hjr_03_05.pdf
⚠️ 重要な合併症
- 脊髄圧迫:腫瘍が脊髄を圧迫すると、体の様々な部分で麻痺や感覚障害が生じる
- 末梢神経症状:痛みやピリピリ感、しびれ、脱力が生じることがある
- 血管病変:稀だがNF1患者の0.4~6.4%に血管障害が生じ、動脈破裂は致死率の高い合併症
神経の中にできる神経線維腫は、脊髄神経根でよくみられ、この部位にできたものの多くは症状をほとんど引き起こしません 。しかし、腫瘍が神経を圧迫すると重篤な症状が現れる可能性があるため、定期的な経過観察が重要です 。
神経線維腫症の詳細な病態と症状について – MSDマニュアル
神経線維腫症の病態、症状、診断についての専門的な情報
良性腫瘍の適切な診断と管理には、各種類の特徴を理解し、悪性腫瘍との鑑別を行うことが重要です。症状や部位、患者の年齢や既往歴を総合的に評価し、必要に応じて組織検査を実施することで、確実な診断と適切な治療方針の決定が可能になります。