ルパタジン 作用機序
ルパタジン 作用機序とヒスタミンH1受容体拮抗作用
ルパタジン(ルパフィン)は、第二世代抗ヒスタミン薬として「選択的ヒスタミンH1受容体拮抗作用」を基本作用に持ちます。
ヒスタミンがH1受容体に結合して生じる、血管拡張・血管透過性亢進・知覚神経刺激などを上流で遮断することで、くしゃみ、鼻汁、鼻内そう痒感、蕁麻疹の痒みといった症状を抑えます。
PMDA資料では、in vitroでのH1受容体に対する親和性(Kiapp)や、モルモット摘出回腸での抗ヒスタミン作用(IC50)など、受容体レベルの裏付けが示されています。
医療従事者向けに押さえておくと説明が通りやすいのは、「H1遮断=鼻水・くしゃみ・痒み」だけで終えず、臓器・組織の反応(血管、粘膜、知覚神経)まで短く結びつけることです。
また、ex vivo評価で末梢(肺)H1受容体への結合はある一方、中枢(小脳)H1受容体への結合がほとんど認められなかった、という記載は「眠気が比較的抑えられうる」説明の根拠として使えます(ただし眠気は副作用として一定頻度で起こり得ます)。
参考)医療用医薬品 : ルパフィン (ルパフィン錠10mg)
ルパタジン 作用機序とPAF拮抗作用(DUAL作用)
ルパタジンの特徴は、H1受容体拮抗に加えて、PAF(血小板活性化因子)という別系統のケミカルメディエーターにも拮抗する「DUAL作用」にあります。
PAFは炎症、血管透過性、気管支収縮などに関与し、アレルギー反応の“症状の厚み”に寄与し得るため、ヒスタミン単独では説明しにくい局面(例:鼻閉の一部、炎症の持続)を語るときに便利な概念です。
PMDA資料では、ウサギ血小板を用いた試験で、ルパタジンがPAF受容体に「非競合的」に結合し得ること、Kiapp(551 nM)などが示されています。
臨床現場の会話では「H1+PAFの二重遮断だから“効く範囲が広い”」という表現が独り歩きしやすいので、次のように言語化すると監修で突っ込まれにくくなります。
- ヒスタミン:即時型症状(痒み、くしゃみ、鼻汁)に直結しやすい。
- PAF:血管透過性や炎症反応に関わり、症状の増悪・持続の一部に関与し得る。
参考)ルパフィン錠10mgの効能・副作用|ケアネット医療用医薬品検…
- したがってルパタジンは、ケミカルメディエーターの系統が異なる2経路を抑える薬理デザインである。
ルパタジン 作用機序を臨床へ:アレルギー性鼻炎と蕁麻疹
国内の医薬品インタビューフォームでは、ルパタジンが「アレルギー性鼻炎」「蕁麻疹」「皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒」で承認され、鼻症状や痒みの改善が記載されています。
作用機序の説明としても、ケミカルメディエーターを抑えることで血管透過性亢進などの即時型症状を抑え、さらに白血球の遊走活性化も抑えるため遅延型症状の抑制も期待して開発された、というストーリーが示されています。
この「即時型+遅延型」という言い回しは、患者さんの実感(“その場の痒み”と“ぶり返し”)の両方に触れられる一方、過剰な効果断定に見えないように「期待」「寄与し得る」といった助詞の置き方が重要です。
また、用量として「通常10mg、症状に応じて20mgまで増量可能」が示され、重症度が高い群で20mgの差が見られた解析などもIFに記載されています。
一方で副作用として眠気が一定割合で見られており、第二世代でも「眠気ゼロ」ではない点は、服薬指導や運転等の注意喚起とセットで押さえるべきです。
ルパタジン 作用機序と代謝物デスロラタジン(意外に重要)
ルパタジンは「本体の薬理」だけでなく、代謝物の寄与も説明の質を上げるポイントです。
IFには、代謝物であるデスロラタジンとその水酸化体もヒスタミン受容体への拮抗作用を持ち、ルパタジンの選択的H1受容体拮抗作用の発現に寄与している、という記載があります。
つまり、同じ“抗ヒスタミン薬”の説明でも、ルパタジンは「親化合物+代謝物の合算」でH1遮断の臨床効果を語れる設計になっており、ここを押さえると薬効の持続や個体差(代謝の影響)を議論しやすくなります。
さらにPMDA資料では、代謝物のうちUR-12790(デスロラタジン)がルパタジンと同程度のH1受容体拮抗を示した一方、PAF拮抗への代謝物の寄与は小さい(代謝物のPAF拮抗作用はルパタジンより弱く、寄与はほとんどないと考えられる)という評価が示されています。
この点は意外と臨床説明に使えます。
- H1遮断:親化合物+代謝物の寄与も含めて理解しやすい。
- PAF拮抗:主に親化合物(ルパタジン)側の特徴として整理すると混乱が減る。
ルパタジン 作用機序から考える併用・安全性(独自視点)
検索上位の解説は「H1+PAF」の説明で止まりがちですが、医療従事者向け記事では“作用機序の裏側にある安全性設計”まで触れると独自性が出ます。
PMDA資料では、hERG電流阻害(QT延長リスクの論点)について、ルパタジンは1 μM以上で濃度依存的にhERGテール電流を阻害し、テール電流IC50が8.1 μMで、健康被験者での曝露(Cmax)に対して十分高い倍率である旨が示されています。
つまり「理屈としては心電図リスク評価をしているが、臨床用量の曝露では過度に心配しすぎない設計」という説明が可能で、患者説明の不安コントロールにもつながります(ただし相互作用や患者背景の評価は別途必要です)。
さらに、同資料では有色ラットで眼(メラニン)に放射能が高濃度に分布し長期残留したが、眼毒性は認められず、メラニン結合が必ずしも眼毒性を予測しないという文献も踏まえて問題提起ではないと整理されています。
この“あまり知られていないが臨床的に重要な読み方”は、DI業務や監査での質問(「分布が残留=危険?」)に対して、薬物動態の背景と毒性評価の枠組みで説明する材料になります。
必要に応じて、作用機序の一次情報に近い論文(英文)として、DUAL作用の位置づけや抗炎症作用(肥満細胞脱顆粒抑制、好酸球/好中球走化性など)の総説も参照できます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4479428/
関連論文(作用機序の総説): Rupatadine: efficacy and safety of a non-sedating antihistamine with additional PAF antagonist effects (2014)
作用機序(日本の公的資料に近い一次情報): PMDA 審査報告関連資料(非臨床試験の概括評価)
作用機序と臨床・副作用頻度など実務情報: 医薬品インタビューフォーム(ルパタジン)

【第2類医薬品】エピナスチン20 RX 40錠