ルキソリチニブの副作用と対策

ルキソリチニブの副作用と対策

ルキソリチニブの副作用と対策
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骨髄抑制(重大な副作用)

血小板減少症(33.3%)、貧血(29.9%)、好中球減少症(10.7%)など血球系細胞の減少

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感染症リスクの増大

細菌・真菌・ウイルス感染症、帯状疱疹、結核再活性化など免疫抑制による重篤な感染

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その他の重要な副作用

出血、間質性肺疾患、肝機能障害、心不全など生命に関わる症状の監視が必要

ルキソリチニブの骨髄抑制による血液異常

ルキソリチニブの最も重大な副作用として骨髄抑制があります 。血小板減少症は33.3%、貧血は29.9%、好中球減少症は10.7%、汎血球減少症は0.9%の患者に発現します 。これらの血液異常は、ルキソリチニブがJAK1及びJAK2を阻害することで、造血及び免疫機能に重要なサイトカインのシグナル伝達を阻害するためです 。

参考)ジャカビ錠10mgの効果・効能・副作用

特に血小板減少症は投与開始から8週以内に最低値に達し、その後は安定する傾向があります 。血小板数が50,000/μL未満になった場合は、出血リスクが高まるため用量調整や休薬が必要となります 。定期的な血液検査による監視と、必要に応じた輸血療法の検討が重要です 。

参考)https://www.pmda.go.jp/RMP/www/300242/006a2ecf-2ed8-4cea-aa2f-89780b9e468e/300242_4291034F1029_010RMP.pdf

貧血に対しては、エリスロポエチン製剤の併用により54%の患者で改善が認められています 。赤血球輸血が必要な場合もありますが、輸血量の減少や輸血非依存達成により患者のQOL向上が期待できます 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/9/108_1672/_pdf

ルキソリチニブ治療における感染症リスクと対策

ルキソリチニブの免疫抑制作用により、細菌、真菌、ウイルス又は原虫による重篤な感染症が16.7%の患者に発現し、死亡に至った症例も報告されています 。特に注意すべき感染症として、帯状疱疹(1.7%)、尿路感染(2.6%)、結核(0.1%)の発現や悪化があります 。
アジア人における感染症の発現割合は50.0%と高く、Grade3以上の重篤な感染症は15.8%に認められます 。日本人では63.3%と更に高い発現率を示しており、特に帯状疱疹の発現率が11.7%と高いことが特徴的です 。
B型肝炎ウイルスの再活性化や播種性結核症の発症も報告されており 、投与開始前の感染症スクリーニングが重要です。結核の既感染者では結核を活動化させるおそれがあるため、特に慎重な観察が必要です 。治療中は患者の状態を十分に観察し、感染症の早期発見と適切な治療介入を行う必要があります 。

参考)https://www.japic.or.jp/mail_s/pdf/24-09-1-79.pdf

ルキソリチニブによる出血リスクと間質性肺疾患

ルキソリチニブ治療中には出血が重大な副作用として報告されており、定期的な血液検査による監視が必要です 。血小板減少による出血リスクの増大に加え、薬剤そのものによる出血傾向も認められます 。特に血小板数が50,000/μL未満の場合は出血リスクが著明に増加するため、用量調整や休薬を検討する必要があります 。
間質性肺疾患は頻度不明ながら重大な副作用として分類されています 。呼吸困難、咳、発熱などの症状が現れた場合は、胸部X線検査やCT検査による評価が必要です 。間質性肺炎は進行が急激で生命に関わる場合があるため、早期診断と適切な治療が重要です 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6000604/

また、進行性多巣性白質脳症(PML)も重大な副作用として報告されており、JCウイルス感染による中枢神経系の日和見感染症として注意が必要です 。神経症状の変化や意識レベルの低下が認められた場合は、速やかにMRI検査等による評価を行い、専門医への相談を検討する必要があります 。

ルキソリチニブの肝機能障害と心血管系副作用

ルキソリチニブ治療中には肝機能障害が重大な副作用として報告されており、AST上昇(3.2%)、ALT上昇(4.9%)などを伴う肝機能障害があらわれ、死亡に至った症例もあります 。投与中は定期的な肝機能検査の実施が必要であり、異常値が認められた場合は用量調整や休薬を検討します 。
心不全も0.4%の患者に発現する重大な副作用です 。JAK阻害薬クラス全体で心血管系事象のリスクが指摘されており、特に心血管系疾患のリスク因子を有する患者では注意深い観察が必要です 。定期的な心電図検査や心エコー検査による心機能評価を行い、心不全症状の早期発見に努める必要があります 。
その他の副作用として、体重増加、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症などの代謝異常も報告されています 。これらの副作用は生活習慣病のリスクを高める可能性があるため、定期的な検査と生活指導が重要です 。また、皮膚症状として発疹や寝汗、筋骨格系症状として筋痙縮や関節痛なども認められており、患者の症状把握と適切な対症療法が必要です 。

ルキソリチニブの薬物相互作用と特殊な管理上の注意点

ルキソリチニブは主にCYP3A4により代謝されるため、強力なCYP3A4阻害剤との併用時は薬物相互作用に注意が必要です 。ケトコナゾールイトラコナゾール、リトナビル、クラリスロマイシンなどの強力なCYP3A4阻害剤と併用する場合は、ルキソリチニブの血中濃度が上昇し副作用のリスクが増大するため、用量調整が必要となります 。

参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=71546

真菌感染症の治療に用いられるアゾール系抗真菌薬では、CYP3A4の強い阻害作用により薬物相互作用による有害事象を回避するため、ルキソリチニブの減量を考慮する必要があります 。併用禁忌薬剤はありませんが、相互作用の可能性がある薬剤との併用時は慎重な監視が必要です 。
小児における使用では、幼若ラットを用いた毒性試験において骨成長の抑制と骨折が認められており、成長期の患者では特に注意が必要です 。また、妊娠中や授乳中の使用については安全性が確立されていないため、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与を検討します 。高齢者では一般に生理機能が低下しているため、副作用の発現に特に注意し、定期的な検査による状態把握が重要です 。

参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2014/P201400093/300242000_22600AMX00759_B100_1.pdf