ロトリガ効果と副作用の比較:エパデールとの違いや下痢対策

ロトリガの効果

ロトリガの効果と特徴
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強力な中性脂肪低下作用

肝臓でのTG合成抑制と分解促進のダブル作用で数値を改善

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EPAとDHAの配合

エパデールと異なりDHAを含むことで広範な脂質代謝へアプローチ

⚠️

服薬指導のポイント

空腹時では吸収が悪いため、必ず食直後に服用する必要がある

ロトリガの作用機序と中性脂肪低下効果

 

ロトリガ(一般名:オメガ-3脂肪酸エチル粒状カプセル)は、非常に純度の高いEPA(イコサペント酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)を有効成分とする脂質異常症治療薬です。この薬剤の最大の特徴は、単に血液中の中性脂肪(トリグリセライド:TG)を下げるだけでなく、脂質の「質」を改善する多面的な作用機序にあります。

まず、主要なメカニズムとして肝臓における中性脂肪の合成抑制が挙げられます。ロトリガに含まれるオメガ3脂肪酸は、肝臓内での転写因子であるSREBP-1cの活性を抑制することで、脂肪酸の新規合成を減少させます。これにより、中性脂肪の原料となる脂肪酸そのものが減り、結果として肝臓から血液中へ分泌されるVLDL(超低比重リポタンパク質)の量が減少します。VLDLは中性脂肪を多く含むリポタンパク質であり、これが減ることで直接的に血清TG値が低下します。

次に、血中での中性脂肪の分解促進という作用も重要です。血液中に存在するリポタンパク質リパーゼ(LPL)という酵素の活性を高めることで、すでに血液中を流れている中性脂肪(VLDLやカイロミクロン)の分解を加速させます。この「合成の抑制」と「分解の促進」というダブルのアプローチが、ロトリガの強力な効果の源泉となっています。

臨床試験のデータにおいては、ロトリガ2g(通常用量)の投与により、投与前と比較して中性脂肪値が約25%〜45%低下することが確認されています。

ロトリガ粒状カプセル2g インタビューフォーム

参考)ロトリガ粒状カプセル2g|【公式】武田薬品 医療関係者向け情…

また、効果の発現時期については、服用開始から比較的早期に認められます。多くの症例で投与開始4週間後には有意な中性脂肪の低下が観察され、12週間後には効果が安定します。しかし、個々の患者の食生活や遺伝的背景によって効果の現れ方には差があるため、定期的な血液検査によるモニタリングが不可欠です。

  • 肝臓での作用:遊離脂肪酸の合成を抑制し、VLDLの分泌を減らす
  • 血中での作用:LPL活性を亢進させ、レムナント(燃えカス)の代謝を促進する
  • 細胞レル:細胞膜の構成成分として取り込まれ、膜の流動性を高める

特筆すべきは、これらの作用が単なる数値の改善にとどまらず、動脈硬化のリスク因子である「レムナントリポタンパク」の減少にも寄与する点です。レムナントは血管壁に侵入しやすく、プラーク形成の直接的な原因となるため、これを減少させることは心血管イベントのリスク管理において極めて重要な意味を持ちます。

ロトリガとエパデールの違いと使い分け

脂質異常症治療において、ロトリガと同様に頻用される薬剤に「エパデール(イコサペント酸エチル)」があります。両者は共にオメガ3脂肪酸製剤ですが、その成分構成と製剤特性には明確な違いがあり、患者のライフスタイルや病態に応じた使い分けが求められます。

最大の違いは有効成分の構成です。エパデールは高純度のEPAのみを成分としていますが、ロトリガはEPAに加えてDHA(ドコサヘキサエン酸)を含有しています。その比率は概ねEPA:DHA=1.2:1程度の割合で配合されています。

ロトリガとエパデールEMの違い【7つのポイント】

参考)ロトリガとエパデールEMの違い【7つのポイント】

このDHAが含まれていることの意義は大きく、DHAはEPAと比較してより強力な中性脂肪低下作用を持つとされるほか、抗不整脈作用や心拍数の低下作用、さらには降圧作用においても独自のメリットを持つ可能性が示唆されています。一方で、EPAは抗動脈硬化作用(プラークの安定化など)のエビデンスがJELIS試験などで豊富に確立されており、純粋な血管保護を主目的とする場合はエパデールが選ばれることもあります。

項目 ロトリガ エパデール(S/EM)
成分 EPA + DHA EPAのみ
用法 1日1回(食直後) 1日2〜3回(EMは1回)
形状 粒状カプセル(4mm) 軟カプセル(サイズ大)
適応 高脂血症 高脂血症 / 閉塞性動脈硬化症

次に服薬コンプライアンス(飲みやすさ)の観点です。ロトリガは1日1回の服用で済むため、飲み忘れが多い患者や、夕食だけしっかり食べるという生活スタイルの患者に適しています。一方、従来のエパデールは1日2〜3回の服用が必要でしたが、近年発売された「エパデールEM」は1日1回製剤となり、この点での差は縮まりつつあります。

しかし、製剤の形状には大きな違いがあります。ロトリガは直径約4mmの小さな粒状カプセルがスティック包装されており、一度にサラサラと飲むことができます。対してエパデールは比較的大きなカプセルであるため、嚥下機能が低下している高齢者などではロトリガの方が飲みやすいと感じるケースが多く見られます。

薬価(コスト)の面では、両者ともにジェネリック(後発医薬品)が登場しており、経済的な負担は軽減されています。ただし、ロトリガのジェネリック(オメガ-3脂肪酸エチル粒状カプセル)を選択する場合、先発品と同様の「スティック包装」かどうかがメーカーによって異なる場合があるため、薬局での確認が必要です。

臨床的な使い分けの基準として、以下のようなフローが考えられます。

  1. 閉塞性動脈硬化症に伴う冷感・痺れがある場合: 適応を持つエパデールを推奨
  2. 中性脂肪値が著しく高く、強力な低下作用を期待する場合: DHAを含むロトリガを考慮
  3. 服薬回数を減らしたい、大きなカプセルが苦手な場合: ロトリガ、またはエパデールEMを選択
  4. DHAに対する特異的なアレルギーや忍容性の懸念がある場合: エパデールを選択

ロトリガの副作用で多い下痢の対策と発現時期

ロトリガは安全性の高い薬剤ですが、消化器系の副作用、特に下痢・軟便の発現頻度が比較的高いことが知られています。インタビューフォームや臨床試験の結果によると、副作用全体の中で下痢が占める割合は最も高く、約2〜5%程度の患者に発生すると報告されています。

医薬品インタビューフォーム オメガ-3脂肪酸エチル

参考)https://www.jintan.co.jp/medical_info/image/pdf/p004_interview_form.pdf

なぜロトリガで下痢が起こるのでしょうか。その主な原因は、有効成分であるオメガ3脂肪酸(油)が小腸で吸収されきれずに大腸へ流入することにあります。吸収されなかった脂肪分は、消化管の蠕動運動を亢進させたり、腸管内の水分バランスを変化させたりすることで、水様便や軟便を引き起こします。これは、脂っこい焼肉を食べた後にお腹が緩くなるのと似たメカニズムです。

副作用の発現時期については、服用開始から数日〜2週間以内の初期に集中する傾向があります。身体が大量のオメガ3脂肪酸の摂取に慣れていない時期に起こりやすく、多くの場合は継続して服用することで徐々に身体が適応し、症状が消失します。しかし、生活に支障が出るほどの下痢が続く場合は、休薬や減量を検討する必要があります。

下痢を防ぐための具体的な対策として、以下のポイントが挙げられます。

  • 必ず「食直後」に服用する:

    空腹時に服用すると、胆汁酸の分泌が不十分なため脂肪酸がミセル化(乳化)されず、吸収率が極端に低下します。吸収されなかった油はそのまま下痢の原因となります。食事の直後に服用することで吸収効率を高め、腸管に残る油を減らすことができます。

  • 分割投与を検討する:

    通常は1日1回2gを夕食後に服用しますが、下痢がひどい場合は、医師の指示のもと「朝・夕食後に1gずつ」に分けて服用することで、一度の脂肪負荷を減らし症状を緩和できることがあります。

  • 脂肪分を含む食事と共に摂取する:

    極端に脂肪分の少ない食事(例えば、そばやゼリーのみ)の後に服用すると、胆汁の分泌が促されず吸収が悪くなります。ある程度の油分を含む食事の後に飲むことが推奨されます。

また、稀ではありますが、肝機能障害も重大な副作用として記載されています。AST(GOT)やALT(GPT)の上昇が見られることがあるため、投与開始後は定期的な血液検査で肝機能の数値をチェックすることが重要です。特に、元々肝機能に不安がある患者や、脂肪肝(NAFLD/MASLD)を合併している患者では、薬剤性の影響か原疾患の悪化かの鑑別が必要となります。

もし患者から「最近お腹が緩い」という訴えがあった場合、単なる体調不良と見過ごさず、ロトリガの服用タイミング(本当に食直後に飲んでいるか?)を確認することが、薬剤師や医師にとって重要な介入ポイントとなります。

ロトリガの吸収率を高める食事のタイミング

ロトリガの効果を最大限に引き出し、かつ副作用を抑えるためには、「食事のタイミング」が何よりも重要です。添付文書にも「空腹時に投与すると吸収が悪くなるので食直後に服用させること」と明記されていますが、この「吸収が悪くなる」の程度は、医療従事者が想像する以上に劇的です。

体内薬物動態の試験データによると、空腹時にロトリガを服用した場合の血漿中EPA・DHA濃度(CmaxおよびAUC)は、食後投与と比較して著しく低くなることが示されています。具体的には、空腹時の吸収率は食後投与時の数分の一から十分の一程度まで低下するとの報告もあります。つまり、空腹時に飲んでしまうと、薬の成分の大部分が吸収されずに便として排泄されてしまい、薬効がほとんど期待できない「無駄飲み」になってしまうのです。

ロトリガ®の中性脂肪を減らす効果とは?正しい飲み方や副作用

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この現象の鍵を握るのは胆汁酸です。オメガ3脂肪酸エチルは水に溶けない脂溶性の物質であるため、小腸で吸収されるためには胆汁酸によって乳化(ミセル化)される必要があります。胆汁酸は食事、特に脂肪分を含む食事の刺激によって胆嚢から十二指腸へ分泌されます。したがって、食事が胃から小腸へ送られるタイミングに合わせて薬がそこに存在することが不可欠なのです。

「食直後」とは、具体的には「箸を置いてから30分以内」を指しますが、ロトリガに関しては「食べ終わったらすぐに」飲むよう指導するのがベストです。食後2〜3時間経過してから思い出したように飲んでも、胆汁の分泌ピークを過ぎてしまっている可能性が高いためです。

さらに、食事の「内容」も吸収率に影響を与えます。

以下のような食事パターンでは注意が必要です。

  • 朝食抜き、あるいはコーヒーのみ: この状態で服用しても吸収されません。
  • 極端な低脂質食(ローファットダイエット): 胆汁分泌が弱く、吸収率が低下するリスクがあります。
  • 消化の良い炭化物のみ(素うどんなど): 脂質の消化吸収プロセスが十分に起動しない可能性があります。

臨床現場では、「ロトリガを飲んでいるのに中性脂肪が下がらない」という相談を受けることがよくあります。このような場合、薬の増量(2gから4gへ)を検討する前に、まずは「しっかりと食事を摂った直後に飲んでいるか?」を確認するだけで、数値が劇的に改善するケースが多々あります。患者のライフスタイルを聞き取り、「夕食は軽めにする」という方であれば、最もボリュームのある昼食後に変更するなどの柔軟な対応が治療効果を左右します。

ロトリガのEPA・DHA比率がもたらす質の高い脂質改善

ロトリガが単なる中性脂肪低下薬以上の価値を持つ理由の一つに、EPAとDHAが約1:1で配合されているという独自性が挙げられます。既存のエパデール(純粋なEPA製剤)が動脈硬化抑制のエビデンスを確立している中で、なぜあえてDHAを配合する必要があったのか。その答えは、EPAとDHAの生理活性の違いによる「脂質改善の質」にあります。

これまで、EPAとDHAはひとくくりに「オメガ3脂肪酸」として語られがちでしたが、近年の研究により、両者の役割分担が明確になってきました。

  • EPA(エイコサペンタエン酸):

    主に「抗炎症作用」「プラークの安定化」に優れています。血管内皮細胞に取り込まれやすく、炎症性サイトカインの産生を抑制することで、動脈硬化プラークが破裂して血栓ができるのを防ぐ力が強いとされています。

  • DHA(ドコサヘキサエン酸):

    主に「中性脂肪低下作用」「膜流動性の向上」、そして「LDL粒子の大型化」に優れています。特に注目すべきは、LDLコレステロールの粒子サイズへの影響です。

脂質異常症、特に高中性脂肪血症の患者では、通常のLDLよりも粒子が小さく、血管壁に入り込みやすい「sd-LDL(small dense LDL:超悪玉コレステロール)」が増加していることが多く見られます。EPAと比較して、DHAはこのsd-LDLを減らし、より粒子が大きく無害な大型LDLへとシフトさせる作用が強いことが示唆されています。

Novel Antidiabetic Agents and Their Effects on Lipid Profile

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10299555/

つまり、ロトリガを服用することは、単にTGの数値を下げるだけでなく、sd-LDLという「隠れたリスク」を減らすことにつながる可能性があります。これは、スタチン(LDL低下薬)を使用してもなお心血管イベントのリスクが残る「残存リスク(Residual Risk)」の管理において、非常に重要な意味を持ちます。

また、DHAは脳や網膜の細胞膜に多く存在し、細胞膜を柔らかくする(流動性を高める)作用があります。赤血球の膜が柔らかくなれば、微細な毛細血管の中を変形してスムーズに通り抜けることができ、全身の微小循環の改善が期待できます。

ロトリガを選択するということは、EPAによる血管の抗炎症作用と、DHAによる強力なTG低下およびリポタンパク質の質的改善という、ハイブリッドな恩恵を享受することを意味します。特に、TG値が非常に高い患者や、血糖コントロールが悪くsd-LDLが増えやすい糖尿病合併患者においては、このEPA・DHAの複合的なアプローチが、長期的な血管の健康維持に大きく寄与すると考えられます。


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