ロピナビル・リトナビル配合剤とは|HIV感染症治療における投与方法と注意点

ロピナビル・リトナビル配合剤とは

吸入ステロイドとの併用で重篤な副作用が出る可能性があります。

この記事の3ポイント
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作用機序と配合の意義

ロピナビルがHIVプロテアーゼを阻害し、リトナビルがロピナビルの血中濃度を上昇させるブースターとして機能

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薬物相互作用に要注意

CYP3A4を強力に阻害するため、併用禁忌薬が多数存在し、血中濃度モニタリングが必要な薬剤も多い

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投与時の実践的配慮

食後投与が必須で、消化器症状が高頻度に発現するため、患者への事前説明と対症療法の準備が重要

ロピナビル・リトナビル配合剤の基本情報と作用機序

ロピナビル・リトナビル配合剤(商品名:カレトラ)は、HIV感染症の治療に用いられる抗ウイルス化学療法剤です。この薬剤は2つの有効成分から構成されています。kegg+1

ロピナビルがHIVプロテアーゼの活性を阻害し、HIVプロテアーゼによるgag-polポリ蛋白質の開裂を抑制することで、感染性を持つ成熟したHIVの産生を抑制します。リトナビルは、肝臓における薬物代謝酵素チトクロムP450のCYP3A4阻害作用があり、ロピナビルの代謝を阻害し血中濃度を上昇させる(ブースターとして機能させる)目的で併用されています。pins.japic.or+1

配合剤として1錠あたりロピナビル200mg、リトナビル50mgが含有されています。標準的な成人用量は1回400mg・100mg(2錠)を1日2回、食後に経口投与します。食後投与が必須なのは、食事により薬剤の吸収が著しく向上するためです。a-connect.abbvie+3

HIVプロテアーゼに対する選択的親和性を有し、ヒトのアスパルティックプロテアーゼに対してはほとんど阻害作用を示さない点が特徴です。

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ロピナビル・リトナビル配合剤の投与方法と用量調整

成人には通常、ロピナビル・リトナビルとして1回400mg・100mg(配合錠2錠または配合内用液5mL)を1日2回食後に経口投与します。あるいは1回800mg・200mg(4錠)を1日1回経口投与する方法も承認されています。clinicalsup+1

小児への投与では、体重に応じた用量調整が必要です。体重7kg以上15kg未満では1kgあたり12mg・3mg、15kg以上40kg以下では1kgあたり10mg・2.5mgを1日2回食後に経口投与します。最大投与量は400mg・100mg(5mL)1日2回投与です。pins.japic.or+1

食事との関係が極めて重要です。中等度の脂肪含量の食事後に投与した場合、ロピナビルのAUCが48%、Cmaxが23%上昇しました。高脂肪食の摂取後ではAUCは97%、Cmaxは43%上昇したため、吸収を高めるために必ず食後に服用することが求められます。

腎機能異常での用量調節は特に必要ありませんが、肝機能障害のある患者では定期的に肝機能検査値や薬物血中濃度測定等を行い、慎重に投与する必要があります。kegg+1

他の抗HIV薬との併用時には用量調整を検討する場合があります。特にネビラピンやエファビレンツなどのCYP3A誘導薬と併用する場合、ロピナビルの血中濃度が低下する可能性があるため注意が必要です。

ロピナビル・リトナビル配合剤の副作用と安全性

消化器症状が最も高頻度に発現する副作用です。海外第Ⅲ相試験(試験863)では、ロピナビル・リトナビル群(326例)で下痢180例(55.2%)、悪心80例(24.5%)、咽頭炎58例(17.8%)、無力症50例(15.3%)などが報告されています。kegg+1

重篤な副作用として以下が報告されています。

日本国内でも高齢COVID-19症例へのロピナビル・リトナビル使用で既知の房室ブロックの悪化により中断した報告があります。徐脈の報告(完全房室ブロック)は、内服開始数時間後から2日に出現しています。

血友病の患者では出血事象の増加が報告されているため、注意深い観察が求められます。

HIV感染症に対する初回治療としてロピナビル・リトナビルの単剤治療を103例に実施したMONARK studyでは、12%の症例で軽度の副作用が認められ、内訳は下痢(6%)、AST・ALTの上昇(12%)などであり重篤な副作用は報告されませんでした。これは比較的安全に使用できることを示唆しています。

ロピナビル・リトナビル配合剤の薬物相互作用

本剤は肝チトクロームP450(CYP)のアイソザイムであるCYP3Aとの親和性が極めて強いため、薬物相互作用が重要な注意点となります。主にCYP3Aで代謝される薬剤と併用すると、併用薬剤の代謝を競合的に阻害し、血中濃度を上昇させることがあります。

併用禁忌薬(併用してはいけない薬剤)が多数存在します。

主な併用禁忌薬には以下があります。

併用注意薬(併用に注意が必要な薬剤)も広範囲にわたります。

DOACはほぼ血中濃度が上昇します。スタチン(特にシンバスタチン)も種類によっては上昇するため注意が必要で、シンバスタチンとの併用はなるべく避けることとされています。ミダゾラムの濃度も上昇するため、鎮静目的で使用する際も用量に注意する必要があります。kegg+1

フルチカゾンプロピオン酸エステルなどの吸入ステロイドとの併用では、血中濃度が上昇しクッシング症候群、副腎皮質機能抑制等が報告されています。リトナビルを内服しているHIV感染者において、吸入で使用したフルチカゾンの血中濃度が上昇しクッシング症候群を呈した報告があるため、吸入薬であっても相互作用を考慮する必要があります。kegg+1

リファンピシンとの併用は、本剤の血中濃度が低下し治療効果を減弱させるおそれがあるため、併用はなるべく避けることとされています。

リバプール大学はHIV治療薬の相互作用に関するウェブサイトを作成しており(http://www.covid19-druginteractions.org/)、最新の情報を参照することが推奨されます。

ロピナビル・リトナビル配合剤の臨床効果と耐性

抗レトロウイルス療法未経験の成人HIV感染症患者653例を対象とした海外第Ⅲ相試験(試験863)では、ロピナビル・リトナビル群において第48週の血中HIV RNA量が400 copies/mL未満であった患者の比率は75%でした。血中HIV RNA量が50 copies/mL未満であった患者の比率は67%でした。CD4リンパ球数は、開始時に比べ207 cells/mm³増加しました。

プロテアーゼ阻害剤は耐性変異が蓄積しても効果が保たれることが多く(genetic barrierが高い)、耐性HIV症例の治療では有用です。

HIVプロテアーゼにアミノ酸置換(L10F/I/R/V、K20M/N/R、L24I、L33F、M36I、I47V、G48V、I54L/T/V、V82A/C/F/S/T、I84V)が3以上存在すると本剤のウイルス学的反応に影響を及ぼすことがわかっています。

複数の本剤臨床試験における解析では、PI耐性変異数が0から2の場合、48週時のウイルス学的反応(HIV RNA <400copies/mL)が認められた割合は74~95%でした。変異数が3から5の場合は50~73%、6以上では0~25%に低下しました。

短期間の使用で耐性が出現する可能性は低いとされています。単剤の臨床研究においても、耐性変異の出現が指摘されるのは治療開始20週以上経過した症例であり、出現した症例もロピナビル・リトナビルは有効性を維持していました。

医薬品医療機器総合機構(PMDA)のカレトラ配合錠の添付文書

こちらのリンクでは、ロピナビル・リトナビル配合剤の最新の添付文書情報、用法用量、警告・禁忌事項などの詳細情報が確認できます。

ロピナビル/リトナビル合剤のCOVID-19への使用に関する詳細情報

こちらの参考リンクでは、ロピナビル・リトナビル配合剤の副作用、相互作用、使用上の注意点についてHIV感染症治療の経験に基づいた実践的な情報が記載されています。