ローコールと販売中止と出荷停止と限定出荷

ローコールと販売中止

ローコール販売中止で最初に押さえる要点
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販売中止は「供給不足」と別概念

販売中止は薬価削除手続きに向けた恒久的な終了を意味し、出荷停止・限定出荷(供給不足時の運用)とは時間軸も対応も異なります。

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代替は「同成分」か「同効薬」かを分ける

フルバスタチンへの同成分切替と、他スタチン等の同効薬切替では、力価・相互作用・目標LDL-C達成戦略が変わります。

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患者説明は「中止理由」と「再開見込み」を切り分ける

出荷停止の案内と販売中止の案内は別文書で出ることがあり、現場では“何がいつまで”を時系列で示すと誤解が減ります。

ローコール販売中止のお知らせの要点

ローコール®錠はサンファーマ株式会社より「諸般の事情により販売を中止」する旨が医療関係者向けに案内されています。

同文書では、製造販売中止に伴う「経過措置期間の満了は2027年3月末となる見込み」と明記されています。

また、対象はローコール®錠10mg/20mg/30mgで、単位薬価や包装規格、統一商品コード・GS1コードまで提示されており、院内採用・物流マスタの整合性確認に直接使えます。

この手の「販売中止」通知で実務上重要なのは、(1)患者の処方継続性、(2)在庫の棚卸と返品可否の確認、(3)処方入力(採用品目)の切替期限、の3点です。

参考)https://jp.sunpharma.com/null/dad29c39c980020d84d8b192990241dbff01415a.pdf

特に経過措置が示されている場合でも、卸・薬局・病院の在庫偏在で「現場の実質供給終了」が早まることがあり、薬剤部門は“患者単位での残処方量”を起点に切替計画を立てるのが安全です。

ローコール出荷停止と限定出荷の違い

ローコール®錠20mgについては、別途「出荷停止」の案内(第二報)が出ており、原薬製造の遅れが発端で、限定出荷を継続して供給再開を目指したものの「製造の目処が立たないため供給を停止」と説明されています。

この文書では出荷量の状況が「C.出荷停止」、製造販売業者の対応状況が「⑤ 供給停止」と整理され、用語は日薬連発第137号(2023年3月1日)に基づくと明記されています。

つまり、販売中止(恒久終了の手続き)と、出荷停止/供給停止(供給不足・製造都合による一時停止)は、同じ“手に入らない”でも原因・期間・打ち手が異なるため、医療者側は必ず文書タイトルと発出日で区別して扱う必要があります。

なお、用語定義の資料では、限定出荷は「全ての受注に対応できないが出荷は継続」、出荷停止は「市場に出荷していない状況」、販売中止は「薬価基準収載品目削除願を提出し薬価削除に向け対応」など、判断軸が整理されています。

参考)http://www.fpmaj.gr.jp/seminar/_documents/2023/handout-0307-2.pdf

現場で患者説明をする際は、「品質問題で危険だから止める」ではなく「製造・供給の都合で手配できないため、同等の治療を別の薬で継続する」という言い方に寄せると、不要な不安を抑えられます。

参考)https://jp.sunpharma.com/null/a4b7a6532d594fe73331acf373fadec8530cf773.pdf

ローコール代替製品とフルバスタチンの切替

販売中止のお知らせでは、代替製品としてフルバスタチン錠10mg/20mg/30mg「NIG」が提示され、製造販売元が「日医工岐阜工場株式会社」とされています。

一方で同文書には「代替製品は、現在、他社品の影響により限定出荷」と注意書きがあり、同成分への切替であっても“すぐ全患者が一斉に切替できる”とは限らない点が重要です。

この状況では、(1)最優先患者(高リスク二次予防など)から段階的に切替、(2)処方日数を短縮して供給変動に追従、(3)同成分が難しい場合は同効薬(他スタチン等)を含む代替案を用意、の運用が現実的です。

切替設計で見落とされがちなのが「薬剤の強さ(力価)」です。

参考)https://gifu-min.jp/midori/document/576/sisitu4.pdf

院内の薬剤部門・薬局は、スタチン力価比較表などを参照しつつ、患者のLDL-C管理目標と副作用歴、併用薬(相互作用)をセットで確認して、漫然と“同じmg”にしないルールを共有しておくと事故が減ります。

ローコール販売中止と脂質異常症ガイドライン

脂質異常症の治療は「薬の確保」が目的ではなく、動脈硬化性疾患予防のためにLDL-Cなどの管理目標を達成し続けることが目的です。

脂質異常症診療ガイド2023年版では、糖尿病を含むリスク状態によりLDL-C管理目標が変わり、例えば糖尿病合併の二次予防で70mg/dL未満など、より厳格な目標設定が示されています。

そのためローコール販売中止対応では、「同成分への置換」だけでなく、患者カテゴリー(一次予防/二次予防、糖尿病や合併症)に応じて“目標達成の再設計”が必要になります。

供給不安がある時期は、医師側が「一旦弱めで様子見」になりやすい一方、ハイリスク患者では短期間でもLDL-C再上昇がイベントリスクに影響し得るため、フォロー間隔(採血・受診)を短縮するなどの運用も検討対象です。

参考)寄せられた疑問に答える、脂質異常症診療ガイド2023発刊/日…

患者説明では「薬が変わる=治療が後退」ではなく「同じ目標に向けて、入手可能な薬で最適化する」と位置づけると、アドヒアランス低下を防ぎやすくなります。

ローコール販売中止での独自視点:患者コミュニケーションと処方設計

検索上位の記事は「いつまで」「理由」「代替」のQ&A型が多い一方、医療現場で差が出るのは“説明の順番”と“言葉の選び方”です。

具体的には、最初に「販売中止/出荷停止は安全性問題を意味しない場合がある」→次に「治療は継続できる」→最後に「代替薬と検査計画」を提示すると、患者の不安が下がり、自己中断(勝手にやめる)を防ぎやすい流れになります。

また、代替が限定出荷の可能性がある以上、処方設計として(1)14日処方へ一時的に短縮、(2)同効薬への切替候補をカルテに事前登録、(3)薬局からの疑義照会テンプレ(用量換算の根拠、次回検査予定)を準備、のように“運用で吸収する設計”が実は最も効きます。

さらに意外に効くのが、院内の掲示や説明文で「販売中止」「供給停止」「限定出荷」という言葉を混在させないことです。

用語が混ざると、患者だけでなく他科医師・看護師・受付も誤解し、結果として「まだあるはず」「もう危ない薬」など誤った噂が広がり、問い合わせ対応コストが跳ね上がります。

“文書の正式名称(例:販売中止のお知らせ、出荷停止のお詫びとお知らせ)に合わせて院内表現を統一する”という、地味ですが再現性の高い対策を推奨します。

限定出荷/供給停止の用語定義(院内説明文の統一に便利)

http://www.fpmaj.gr.jp/seminar/_documents/2023/handout-0307-2.pdf

ローコール販売中止の一次情報(経過措置や代替製品の明記)

https://jp.sunpharma.com/null/dad29c39c980020d84d8b192990241dbff01415a.pdf

ローコール20mg出荷停止の一次情報(原薬遅延→製造目処立たず→供給停止の経緯)

https://jp.sunpharma.com/null/a4b7a6532d594fe73331acf373fadec8530cf773.pdf

脂質異常症診療ガイド2023の改訂点(管理目標の考え方の背景把握に有用)

寄せられた疑問に答える、脂質異常症診療ガイド2023発刊/日…