リザベン効果の詳細解説と適応症

リザベンの効果と作用機序

リザベンの主要効果
🔬

抗アレルギー作用

肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑制

🧬

抗線維化作用

コラーゲン合成を抑制してケロイドを改善

🛡️

抗炎症作用

サイトカイン産生抑制による炎症緩和

リザベンの基本的作用機序と効果

リザベン(トラニラスト)は、肥満細胞や各種炎症細胞からのヒスタミン、ロイコトリエンをはじめとする多くのケミカルメディエーターの遊離を抑制することにより、I型アレルギー反応を抑制する薬剤です 。この作用機序により、気管支喘息アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患に対して有効性を示します 。

参考)https://www.carenet.com/drugs/category/allergic-agents/4490002M1315

リザベンの特徴的な点は、従来の対症療法薬と異なり、アレルギー性疾患のより原因療法に近づいた薬剤であることです 。肥満細胞の安定化を図ることで、過剰な炎症反応や瘢痕の拡大を抑制し、傷跡周辺のかゆみや不快感の軽減も期待されます 。

参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=4490002C1123

さらに、サイトカイン(TGF-β1)や活性酸素の産生あるいは遊離抑制作用を有し、ケロイド及び肥厚性瘢痕由来線維芽細胞のコラーゲン合成を抑制する作用も確認されています 。この二重の作用機序により、リザベンは抗アレルギー薬としても、瘢痕治療薬としても利用されています。

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00051623.pdf

リザベンのアレルギー性疾患に対する効果

リザベンは気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎に対して確立された効果を持っています 。特にアトピー性皮膚炎における長期投与の有用性については、74.3%の症例でリザベンが有用と判定され、内服を中止させざるを得ないような副作用は認められなかったという報告があります 。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishinihonhifu/52/6/52_6_1191/_article/-char/ja

アレルギー性鼻炎に対しては、抗ヒスタミン剤との併用による導入および単独投与による維持療法の有効性が示されており、投与4週以降で鼻炎症状の改善が認められています 。気管支喘息については、小児から成人まで幅広い年齢層で有効性が確認されており、多施設における分2・分3投与の比較検討も行われています 。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/6c10cedf6458a8bd0612e849472c3744669f4f91

リザベンの抗アレルギー作用は、臨床薬理試験において、健康成人男子におけるPrausnitz-Kustner反応を抑制し、ダニ抗原に過敏な成人気管支喘息患者の白血球からの抗原誘発ヒスタミン遊離やアレルゲン吸入誘発反応を抑制することが認められています 。

リザベンのケロイド・肥厚性瘢痕治療効果

リザベンは現在、国内で保険適応があり処方されている唯一のケロイド・肥厚性瘢痕に対する内服治療薬です 。線維芽細胞の過剰なコラーゲンの増生を促すサイトカインや活性酸素の産生を抑えることで炎症を抑制し、肥厚性瘢痕・ケロイドを改善させる効果があります 。

参考)https://mitakabiyou.com/acnescars/acnescar/keloid/

ケロイドや肥厚性瘢痕患者を対象とした臨床試験では、自覚症状(そう痒、圧痛、自発痛)や他覚所見(潮紅、腫脹、硬結、増大傾向)の程度を5段階で評価した結果、そう痒においては8週後に39%、12週後で56%の患者が「2段階以上改善した」と評価されています 。

参考)https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/rizaben.html

その他の症状では、8週後に5~31%、12週後で30~42%が「2段階以上改善した」という結果が得られており、特に痒みがある状態のケロイドにおいて、リザベンが適切な治療選択肢であると考えられています 。反応性に増える皮膚線維細胞の増殖を抑える効果があるとともに、傷の赤みやかゆみなどを軽減させる効果も確認されています 。

参考)https://med.kissei.co.jp/qa/rizaben_capsules/qa.html

リザベンの副作用と注意すべき膀胱炎様症状

リザベンの重大な副作用として、膀胱炎様症状(頻尿、排尿痛、血尿、残尿感等)が知られており、これらの症状が出現した場合には投与を中止するなど適切な処置が必要です 。膀胱炎様症状が出現する場合には、末梢血中好酸球増多を伴うことが多いため、定期的な血液検査(特に白血球数・末梢血液像の検査)の実施が推奨されています 。
その他の重大な副作用として、肝機能障害、黄疸腎機能障害、白血球減少、血小板減少などが報告されており、これらの症状に対しても十分な観察が必要です 。一般的な副作用としては、消化器症状(食欲不振、腹痛、下痢、胃部不快感等)、精神神経系症状(頭痛、眠気、めまい等)、過敏症(発疹、そう痒、蕁麻疹等)などが報告されています 。
リザベンカプセル100mgの副作用発現割合は8.7%(11/127例)であり、主な副作用は膀胱炎様症状2.4%(3/127例)、胃痛1.6%(2/127例)でした 。高齢者においては生理機能が低下しているため、副作用があらわれた場合は減量するなど慎重な投与が必要とされています 。

参考)https://www.data-index.co.jp/drugdata/pdf/4/400813_4490002M1382_1_09.pdf

リザベン効果における独自の治療戦略と将来展望

リザベンの効果を最大限に活用するための治療戦略として、アレルゲン皮内反応検査は本剤の投与前に実施することが重要です 。これは、リザベンがアレルゲン皮内反応を抑制し、アレルゲンの確認に支障を来すためです。また、効果を実感するまでやや時間がかかる場合があるため、数週間から数カ月単位で継続し、症状の経過を観察することが重要です 。

参考)https://oogaki.or.jp/hifuka/medicines/tranilast/

潰瘍性大腸炎におけるmast cell stabilizer(リザベン)の臨床効果についても検討されており、従来のアレルギー性疾患以外の適応拡大の可能性も示唆されています 。腹膜硬化モデルマウスにおけるリザベンの腹膜硬化抑制効果についても研究が進められており、新たな治療領域での応用が期待されています 。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/d5869308088817c3bd4c824d5f09c6fc75f15238

リザベンを飲み忘れた場合は、気が付いたときにすぐに1回分を服用し、食事の時間を気にする必要はありません 。妊婦(特に約3カ月以内)又は妊娠している可能性のある女性には投与禁忌であり、マウスに大量投与した実験で骨格異常例の増加が認められているため注意が必要です 。効果が認められない場合には、漫然と長期にわたり投与しないよう注意し、定期的な効果判定を行うことが推奨されています 。

参考)https://med.nipro.co.jp/servlet/servlet.FileDownload?file=015100000027fzsAAA