リウマチ性多発筋痛症 症状 こわばり 診断 治療

リウマチ性多発筋痛症 症状

リウマチ性多発筋痛症 症状の要点
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典型は「近位部の痛み+朝のこわばり」

両側の肩・頚部・臀部〜大腿の痛みと、起床後30分以上続くこわばりが核になります。筋力低下そのものは乏しいのに「上がらない・起きられない」と訴える点が臨床の鍵です。

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炎症反応が診断の土台

CRP/赤沈の上昇を伴い、自己抗体は多くが陰性です。分類基準は助けになりますが、鑑別(感染症、悪性腫瘍、筋炎、EORAなど)を外す思考が必須です。

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巨細胞性動脈炎を見逃さない

頭痛、視力障害、顎跛行があれば別ラインで緊急対応が必要です。PMRは「痛みの病気」に見えても、血管炎合併が転帰を左右します。

リウマチ性多発筋痛症 症状の典型 こわばり 肩

 

リウマチ性多発筋痛症(PMR)の主症状は、頚部〜肩甲帯、腰臀部〜大腿など「体幹に近い部位(近位筋)」の痛みと、起床時に強い朝のこわばりです。これらは左右対称に出やすく、比較的急速に(数日〜数週間で)症状がそろって持続する、という時間経過が特徴です。慶應義塾大学病院の解説では、肩の痛みが最も多く、次いで頚部・臀部、さらに大腿の疼痛やこわばり感がみられるとされています。筋肉には圧痛があっても、病気そのものによる筋力低下や筋萎縮は通常みられない点が重要です(「痛くて動かせない」ことと「筋力が落ちて動かせない」ことの鑑別)。

(慶應義塾大学病院KOMPAS:PMRの症状)

臨床現場でよく遭遇する訴えは、「腕が肩より上に挙げられない」「寝返りがつらい」「起き上がりや着替えがしにくい」といったADL障害です。ここで注意したいのは、関節可動域の制限が“痛み”や“こわばり”に由来するため、筋力テストでは明らかな麻痺が説明しづらいケースが多いことです。リウマチネットの記載でも、強いこわばりと痛みで“身体に力が入りにくい”と自覚されるが、厳密な意味での筋力低下は一般にない、と整理されています。つまり、患者の言う「力が入らない」は、神経・筋疾患の筋力低下とは別物として受け止める必要があります。

(リウマチネット:PMRの症状)

また、症状の日内変動も臨床推論に有用です。朝の起床時が最もつらく、午後にはある程度軽快するというパターンは、変性疾患や単純な筋肉痛とは異なる“炎症性”の匂いをもたらします。PMRは「筋痛症」という名称ですが、病態としては関節周囲(滑液包炎、腱鞘炎、滑膜炎など)の炎症所見が画像で支持されることがあり、肩関節周囲の症状が目立つ点がしばしば強調されます。EULAR/ACR 2012の暫定分類基準で、超音波で三角筋下滑液包炎や二頭筋腱滑膜炎などを点数化する枠組みが組み込まれたのは、この臨床像と整合します。

(EULAR/ACR 2012 PMR分類基準:超音波項目)

リウマチ性多発筋痛症 症状の全身 発熱 体重減少

PMRは筋骨格症状だけで完結せず、全身症状が前景に立つことがあります。リウマチネットでは、38℃台までの発熱、食欲不振、体重減少、全身倦怠感、抑うつ症状などが一定頻度でみられると示されており、「原因不明の炎症反応上昇+全身不調」として紹介されやすい疾患です。医療従事者としては、発熱を“感染症ありき”で考えたくなる局面でも、疼痛分布と朝のこわばりの組み合わせを拾えるかが勝負になります。特に高齢者では、訴えが曖昧で「なんとなく動けない」「食欲が落ちた」から始まるため、生活機能の低下(立ち上がり、歩行、入浴、整容)を具体化して聴取することが診断の入口になります。

(リウマチネット:全身症状の頻度)

一方で、全身症状が強いときほど鑑別を広く取る必要があります。慶應義塾大学病院KOMPASでも、PMRと誤認しうる疾患として、関節リウマチ、RS3PE症候群、脊椎関節炎、筋炎、血管炎などの膠原病・リウマチ性疾患に加え、感染症、多発性骨髄腫やがんなども挙げられています。つまり「痛み+炎症反応」はPMRの十分条件ではなく、除外診断の姿勢が欠かせません。ここで“意外に大事”なのが、症状の局在が近位中心であること、末梢の小関節炎が目立たないこと、そしてステロイド少量での反応性といった複合情報です。

(慶應義塾大学病院KOMPAS:鑑別)

高齢者のPMR疑いでは、悪性腫瘍との関連が話題になりやすいですが、リウマチネットでは「最近では同年代の一般の方々と変わらない」としつつも、年齢を踏まえ診断時にスクリーニングは必要、と現実的に整理しています。臨床的には、体重減少が強い、夜間盗汗、貧血が目立つ、炎症反応が異様に高い、ステロイド反応が鈍い、などがあれば「PMRとしての説明が苦しい」サインになり得ます。これらはガイドライン的な“決め台詞”ではなく、日常診療での安全策としての感度を上げる視点です。

(リウマチネット:悪性腫瘍スクリーニング言及)

リウマチ性多発筋痛症 症状と診断 CRP 赤沈 EULAR ACR

PMR診断の土台は、①50歳以上、②両側肩痛(肩甲帯痛)、③CRPまたは赤沈の上昇、という“入り口条件”を満たす患者を想定し、そこから点数化や鑑別で精度を上げていくことです。慶應義塾大学病院KOMPASにはBird基準(1979)が紹介され、朝のこわばり、赤沈40mm/h以上、発症の速さ、体重減少や抑うつなどの項目が並びます。さらにEULAR/ACR 2012暫定分類基準では、朝のこわばり(45分超)、股関節痛/可動域制限、RF/ACPA陰性、末梢関節痛がないこと、などを点数化し、超音波所見を加える枠組みが提示されています。分類基準は“診断の補助”として有用ですが、本文献自体も「診断目的ではない」ことを明記しており、現場では“あてはまるからPMR”ではなく“あてはまっても他を除外する”という使い方になります。

(慶應義塾大学病院KOMPAS:Bird基準・EULAR/ACR 2012)
(EULAR/ACR 2012 PMR暫定分類基準 原著)

検査としては、CRP/赤沈の上昇が典型ですが、「筋痛=筋炎」と短絡しないことが重要です。慶應義塾大学病院KOMPASは、皮膚筋炎/多発性筋炎のような筋炎と異なり、筋酵素(CK)の上昇は基本的にない、と明確に述べています。したがって、CKが上がっている場合は、PMR単独の説明ではなく、薬剤性(例:スタチン関連筋障害)、筋炎、内分泌、感染など別のレイヤーを検討する必要が出てきます。高齢者の「痛い・動けない」は多層的で、PMRが“ひとつの答え”になりやすい分、検査の整合性(CRP高値+CK正常など)でバランスを取るのが安全です。

(慶應義塾大学病院KOMPAS:CKは上昇しない)

医療者向けに、外来での実務的なチェック項目を表にまとめます(あくまで“疑う・外す”のための道具で、確定診断表ではありません)。

観点 PMRで支持的 他疾患を疑うサイン
痛みの部位 両側の肩、頚部、臀部〜大腿の近位優位(出典) 末梢小関節の持続的腫脹、明確な関節破壊(EORAなど)(鑑別の出典)
こわばり 起床後30分以上、動かさないと強い(出典) こわばりが乏しく、動作で増悪し続ける(変性疾患寄り)
炎症反応 CRP/赤沈上昇が基本(出典) 炎症反応が一貫して正常(別病態の再検討)
筋酵素 CKは通常上昇しない(出典) CK高値(筋炎、薬剤性、内分泌など)

リウマチ性多発筋痛症 症状と治療 プレドニゾロン 再発

PMRの治療で最も特徴的なのは、副腎皮質ステロイドに対する反応性が高いことです。リウマチネットでは、プレドニン12.5〜25mg/日程度の中等量までが推奨され、多くの場合1〜3日以内に効果がみられる、とされています。慶應義塾大学病院KOMPASでも、少量プレドニゾロン開始後に数時間〜数日で痛みやこわばりが大幅に改善し得る、とし、反応が乏しい場合は増量や他疾患の検討が必要と述べています。臨床的にはこの“劇的反応”が診断推論を後押しする一方、反応を急ぎすぎて「とりあえずステロイド」を先に出すと感染症や悪性腫瘍の評価が遅れるリスクがあるため、開始前の最低限の除外(問診・診察・採血・必要な画像)をルーチン化しておくと安全です。

(リウマチネット:ステロイド用量・効果発現)
(慶應義塾大学病院KOMPAS:反応性と再検討)

PMR診療の落とし穴は、初期反応が良いのに“長期管理”でつまずくことです。リウマチネットは、早期の減量は再発を起こしやすく、日本人は欧米人に比べて再発しやすいので減量は慎重に行うのが一般的、と明記しています。慶應義塾大学病院KOMPASでも、再発は25〜50%で起こり、特に減量が早い過程や中止後に起こりやすい、と説明されています。外来で重要なのは「痛みが消えた=治った」ではなく、症状と炎症反応をセットで追い、減量スケジュールを患者教育として共有することです。高齢患者では、再燃時に自己判断で増減薬が起こりやすいため、次回受診までの“悪化時の連絡基準”を具体的に提示するのが現実的です。

(リウマチネット:日本人は再発しやすい・減量慎重)
(慶應義塾大学病院KOMPAS:再発25〜50%)

さらに、医療者が押さえるべきは副作用マネジメントです。リウマチネットは、感染症、糖尿病、高血圧、脂質異常症、骨粗鬆症、緑内障、白内障、筋肉量低下など、ステロイドによる副作用を列挙し、特にステロイド性骨粗鬆症への対策の必要性を述べています。PMR患者は70〜80歳がピークで合併症も多いため、内科的には「治療開始と同時に守りを固める」発想が欠かせません。具体的には、骨粗鬆症評価、感染リスク評価、血糖・血圧のモニタリング、眼科フォローの適応判断などを、施設の標準手順として組み込むと運用しやすくなります。

(リウマチネット:ステロイド副作用)

リウマチ性多発筋痛症 症状の独自視点 IL-6 Th17 Treg

検索上位の一般向け記事では「肩が痛い」「こわばる」「CRPが高い」「ステロイドが効く」で話が止まりがちですが、医療従事者の説明力を上げるには、病態を“患者に伝わる比喩”へ落とす材料があると便利です。PMRでは炎症性サイトカインIL-6が病態に関与することが示唆され、IL-6はPMRや巨細胞性動脈炎で血清中に上昇し、疾患活動性と相関する可能性が述べられています。さらに、Th17細胞が関与する免疫学的背景や、IL-6経路を標的とした治療が検討されてきた経緯も整理されており、「なぜCRPが上がるのか」「なぜ再燃しやすいのか」を説明する糸口になります。こうした“病態の筋道”を一言添えるだけで、患者がステロイド減量を自己判断で急がない理由付けにもなります。

(IL-6とPMR/GCAのレビュー)
(慶應義塾大学病院KOMPAS:IL-6阻害薬言及)

また、臨床の“意外な情報”として役に立つのが、PMRと巨細胞性動脈炎(GCA)が連続体として語られる点です。慶應義塾大学病院KOMPASでは、欧米ではPMRの5〜30%にGCAを合併し、逆にGCAの約半分にPMRを合併するとされ、共通の病因が考えられていると解説されています。つまり、PMR患者のフォローでは、筋骨格症状が落ち着いていても、頭痛・視覚症状・顎跛行の出現を“新規症状”として毎回確認する価値があります。診察室での一言チェック(「こめかみの痛み」「見えにくさ」「噛むと顎がだるい」)が、失明などの重篤転帰を避ける導線になります。

(慶應義塾大学病院KOMPAS:PMRとGCAの合併率)
(リウマチネット:GCA合併時の症状と検査)

加えて、説明の質を上げる実践ポイントとして「症状=患者の動作」に翻訳するのが有効です。例えば、肩の痛みを“肩関節の炎症”として説明するだけでなく、「髪を洗う」「上着を着る」「布団から起き上がる」「車の乗り降り」など、生活動作に紐づけて症状を評価すると、治療反応のモニタリングがブレにくくなります。慶應義塾大学病院KOMPASが紹介するPMR-ASには、朝のこわばり時間や上肢挙上の程度(EUL)が含まれており、結局のところ“活動性は生活機能に現れる”という考え方が背景にあります。数値化が難しい現場でも、「前回できなかった動作ができるようになったか」を継続的に追うことが、再燃の早期発見に直結します。

(慶應義塾大学病院KOMPAS:PMR-ASとEUL)

参考:症状・診断・治療(ステロイド用量、再発、GCA合併の注意点)がまとまっている

リウマチネット:リウマチ性多発筋痛症

参考:Bird基準、EULAR/ACR分類基準、鑑別リスト、PMR-AS、IL-6阻害薬の知見など臨床実装に近い情報

慶應義塾大学病院KOMPAS:リウマチ性多発筋痛症(PMR)

参考:EULAR/ACR 2012暫定分類基準の原著(点数化と超音波項目の根拠)

EULAR/ACR 2012 provisional classification criteria for PMR

参考:PMR/GCAにおけるIL-6の関与(病態理解・説明の補助に有用)

Interleukin-6: a promising target for the treatment of polymyalgia rheumatica and giant cell arteritis

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