リラナフタート作用機序:真菌細胞膜エルゴステロール生合成阻害

リラナフタート作用機序

真菌細胞膜の合成阻害がヒトに無害な理由を知らないと治療説明で患者に不安を与えます。

この記事の3ポイント要約
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スクアレンエポキシダーゼ阻害作用

真菌細胞のスクアレン・エポキシ化反応を阻害し、エルゴステロール生合成を妨げることで抗真菌効果を発揮します

1日1回投与の利便性

チオカルバメート系初の1日1回塗布製剤として、皮膚に長時間滞留し持続的な抗真菌作用を示します

選択毒性による安全性

真菌のエルゴステロール合成を阻害する一方、ヒトのコレステロール合成には影響せず選択的に作用します

リラナフタートのスクアレンエポキシダーゼ阻害機序

 

リラナフタートは、真菌細胞におけるエルゴステロール生合成経路の初期段階を標的とする抗真菌薬です。具体的には、スクアレンからオキシドスクアレン(2,3-エポキシスクアレン)への変換を触媒する酵素、スクアレンエポキシダーゼを阻害します。kegg+2

この阻害により、真菌細胞膜の主要構成成分であるエルゴステロールの合成が妨げられます。エルゴステロールは真菌細胞膜の流動性と透過性を維持するために不可欠な成分であり、その合成が阻害されると細胞膜の構造と機能が破綻します。torii+1

スクアレンエポキシダーゼは、スクアレンシンターゼによって2分子のファルネシル二リン酸から合成されたスクアレンを基質とします。リラナフタートがこの酵素を阻害することで、下流のラノステロール合成、さらにはエルゴステロール合成全体が停止します。

参考)ラノステロール – Wikipedia

結果として真菌は増殖できなくなります。

リラナフタートの選択毒性メカニズムと安全性根拠

リラナフタートが真菌にのみ作用し、ヒト細胞に影響を与えない理由は、細胞膜ステロール成分の違いにあります。真菌はエルゴステロールを細胞膜の構成成分として使用する一方、ヒトを含む動物はコレステロールを使用します。

参考)リラナフタート – Wikipedia

リラナフタートはスクアレンエポキシダーゼを阻害しますが、この酵素は真菌とヒトの両方に存在します。しかし、リラナフタートの構造はチオカルバメート系に分類され、真菌のスクアレンエポキシダーゼに対して高い選択性を示します。sugamo-sengoku-hifu+2

この選択毒性により、リラナフタートは外用抗真菌薬として臨床使用されています。実際の臨床試験では、全例で副作用が認められなかったという報告もあり、安全性プロファイルは良好です。kenko-tips+1

患者説明時には、この作用メカニズムの違いを明確に伝えることが重要ですね。

リラナフタート1日1回投与の薬理学的根拠

リラナフタートは、チオカルバメート系抗真菌薬として初めて1日1回塗布で効果を発揮する製剤として開発されました。従来の同系統薬(トルナフタートやトルシクレートなど)は1日数回の塗布が必要でしたが、リラナフタートは薬物動態学的特性により長時間作用を実現しています。wikipedia+1

具体的には、リラナフタートは皮膚に長時間滞留する性質を持ちます。この皮膚親和性により、1回の塗布でも治療濃度が持続し、継続的なスクアレンエポキシダーゼ阻害が可能となります。

参考)【薬剤師が解説】ゼフナートはどんな効果がある?似た効果のある…

臨床的には、入浴後または就寝前の1日1回塗布が推奨されています。この投与スケジュールは患者のアドヒアランス向上に寄与し、特に長期治療が必要な足白癬において重要です。ebinahifu+1

📌 参考情報:リラナフタート製剤の詳細

PMDA医療用医薬品情報

1日1回で済むのが基本です。

リラナフタート足白癬治療における菌陰性化期間

リラナフタートを用いた足白癬治療では、皮膚症状の改善と菌陰性化に時間的な解離が見られることが臨床研究で明らかになっています。福岡大学病院での臨床試験では、4週後の皮膚症状改善率が72%であったのに対し、菌陰性化率は59.2%でした。

参考)https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282679276056832

菌陰性化までに要する期間は、白癬の型によって異なります。趾間型、小水疱型、角質増殖型それぞれで平均6.5週、4.4週、3.9週を要しました。この差は、各病型における角層の厚さや薬剤浸透性の違いによるものと考えられます。

一般的な足白癬治療では2〜3ヶ月の継続治療が必要とされます。爪白癬の場合はさらに長期間を要し、6ヶ月〜1年以上の治療期間が必要です。これは爪の成長速度(根元から先端まで6ヶ月〜1年)に依存するためです。aoyoko-sc+1

患者には症状改善後も菌の完全な除去まで治療継続が必要であることを説明する必要があります。

リラナフタートと他の抗真菌薬の作用機序比較

リラナフタートはチオカルバメート系に分類され、スクアレンエポキシダーゼを阻害しますが、他の抗真菌薬は異なる標的を持ちます。アゾール系抗真菌薬(フルコナゾール、ラノコナゾール、ルリコナゾールなど)は、エルゴステロール生合成経路の下流に位置するラノステロール14α-脱メチル化酵素を阻害します。e-rec123+2

アリルアミン系のテルビナフィン(ラミシール)も、リラナフタートと同様にスクアレンエポキシダーゼを阻害します。しかし、化学構造が異なるため、薬物動態や皮膚親和性には差があります。fizz-di+1

各薬剤の最小発育阻止濃度(MIC)を比較すると、アスタット、ルリコン、ゼフナート(リラナフタート)、ラミシールはいずれも小さく安定した効果が期待できます。

参考)『アスタット』・『ルリコン』・『ゼフナート』・『ラミシール』…

つまり抗真菌効果は同等です。

リラナフタートの特徴は、チオカルバメート系初の1日1回製剤であることと、適応症が白癬のみに限定されている点です。アゾール系はカンジダ症や癜風にも適応がありますが、リラナフタートは白癬治療に特化しています。

リラナフタートの化学構造と「ナフタート」命名の特異性

リラナフタート(liranaftate)という名称には「naftate」が含まれていますが、同じチオカルバメート系のトルナフタート(tolnaftate)とは構造上の重要な違いがあります。トルナフタートはナフタレン環を有するのに対し、リラナフタートはナフタレン環を持ちません。

リラナフタートの分子式はC₁₈H₂₀N₂O₂S、分子量は328.43です。構造的には、ベンゼン環にシクロヘキサン環が縮環したテトラヒドロナフタレン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)を部分構造として有します。kegg+1

この構造的特徴は、リラナフタートの薬物動態と作用に影響を与えます。チオカルバメート骨格が抗真菌活性の中心であり、テトラヒドロナフタレン部分が皮膚親和性に寄与していると考えられます。

参考)https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/L0301

📌 参考情報:リラナフタートの化学情報

KEGG DRUG リラナフタート

ナフタレン環はないが「ナフタート」と名付けられた理由については文献上明確な記載はありません。

リラナフタート処方時の実践的指導ポイント

リラナフタートを処方する際、医療従事者が患者に伝えるべき重要事項がいくつかあります。まず、1日1回の塗布タイミングですが、入浴後または就寝前が推奨されます。入浴後は皮膚が清潔で角層が水分を含んで柔らかくなっているため、薬剤の浸透が良好です。

参考)【ゼフナートクリーム・外用液(リラナフタート)】って?効果効…

塗布範囲については、症状が出ている部位だけでなく、その周辺にも広めに塗布することが重要です。足白癬の場合、趾間だけでなく足底全体、特に土踏まずの部分まで塗布することで再発予防につながります。

外用液タイプを使用する場合、キャップを外した後、使用のたびに容器の先端部分を指で押して空気を抜く必要があります。

これは薬液を適切に出すための操作です。

治療期間の目安として、症状改善が見られても最低2〜3ヶ月は継続することを説明します。皮膚症状の改善後も真菌が残存している可能性があるため、自己判断での中断は再発リスクを高めます。ebinahifu+1

副作用は少ないとされていますが、塗布部位に刺激感や発赤が生じた場合は使用を中止し、医師に相談するよう指導してください。


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