レミマゾラム内視鏡鎮静の特徴と使用法安全性

レミマゾラム内視鏡鎮静の適応と薬理

米国では7mgが標準投与量なのに、日本人には3mgで十分な効果が得られます。

この記事の3ポイント要約
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国内初の内視鏡鎮静適応を取得

レミマゾラムは2025年6月に消化器内視鏡診療時の鎮静で承認され、ベンゾジアゼピン系薬として国内初の保険適用を取得しました

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超短時間作用で覚醒が早い

検査終了後5~9分程度で歩行可能なレベルまで覚醒し、従来薬の30分から大幅に短縮されます

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循環動態への影響が少ない

プロポフォールと比較して呼吸抑制や低血圧のリスクが低く、高齢者や循環動態不安定な患者にも使用しやすい特性があります

レミマゾラムの内視鏡鎮静における承認経緯

 

2025年6月、レミマゾラムベシル酸塩(商品名:アネレム)が消化器内視鏡診療時の鎮静として追加承認を取得しました。これはベンゾジアゼピン系薬剤として国内初の内視鏡鎮静適応となり、従来適応外使用されていたミダゾラムプロポフォールに代わる新たな選択肢として注目されています。

この承認は北里大学病院が主導した医師主導治験の成果によるものです。鎮静薬は価格が安価で適応外使用でも保険適用となる現状があり、企業主導での開発が進みにくい背景がありました。しかし医療現場でレミマゾラムの有用性を広げるため、正面突破で保険承認を目指す決断が下されたのです。

用量探索試験の結果、日本人患者には米国で承認されている7mgの半量以下である3mgで十分な効果が得られることが判明しました。これは人種差による薬物動態の違いを示す重要な知見です。その後の臨床試験では、上部消化管内視鏡で92%、下部消化管内視鏡で95%という高い鎮静成功率を達成しています。

つまり日本人向けの投与量です。

レミマゾラムの薬理作用と代謝特性

レミマゾラムはGABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位を介して、抑制性神経伝達物質であるGABAの結合を促進することで鎮静効果を発揮します。ベンゾジアゼピン系薬剤としてはミダゾラムと同様の作用機序を持ちますが、代謝特性に大きな違いがあります。

最も特徴的なのは、レミマゾラムの半減期が39~53分と極めて短い点です。ミダゾラムの半減期が1.8~6.4時間であることと比較すると、その差は明白です。さらにレミマゾラムは主にエステラーゼによって代謝されるため、肝機能や腎機能の影響を受けにくいという利点があります。

この代謝特性により、持続投与時間が延長しても覚醒までの時間がほぼ一定(約8分)に保たれます。ミダゾラムでは投与時間が長くなるにつれて覚醒時間も延長する傾向がありますが、レミマゾラムではそのような蓄積効果がほとんど見られません。そのため長時間の内視鏡処置でも予測可能な覚醒時間を確保できるのです。

これが最大の強みです。

レミマゾラムの内視鏡における投与方法

消化器内視鏡診療時の鎮静における標準的な投与方法は、成人に対してレミマゾラム3mgを15秒以上かけて静脈内投与することから開始します。効果が不十分な場合は、少なくとも2分以上の間隔を空けて1mgずつ追加投与を行います。検査開始前の総投与量が8mgを超えても十分な鎮静効果が得られない場合は、投与の中止を検討する必要があります。

患者背景によって投与量の調整が必要になる場面があります。75歳以上の高齢者や体重45kg未満の低体重患者では、初回・追加投与ともに半量での投与が推奨されます。またASA分類Ⅲ以上の全身状態が不良な患者や脳器質疾患を有する患者では、減速・減量を考慮すべきです。

調製方法については、50mg製剤の場合は生理食塩液10mLで溶解し、20mg製剤の場合は生理食塩液8.5mLで溶解します。溶解後は24時間以内に使用する必要があり、pH4以上では溶解度が低下するためアルカリ性注射液での溶解は避けるべきです。溶解液には通常生理食塩液を使用し、確実に溶けたことを確認してから投与します。

アネレム適正使用ガイド(ムンディファーマPRO)

上記リンクでは、レミマゾラムの調製方法や投与手順、モニタリング方法について詳細な情報が掲載されており、実臨床での使用時の参考になります。

調製は慎重に行います。

レミマゾラムの安全性プロファイルと副作用対策

レミマゾラムの安全性に関する最も重要な知見は、プロポフォールと比較して呼吸抑制や循環抑制のリスクが低いという点です。メタ解析の結果では、レミマゾラム群はプロポフォール群と比較して呼吸抑制が有意に少ないことが示されています。高齢者を対象とした気管支鏡検査の研究でも、レミマゾラム群では低血圧と呼吸抑制の発生率が有意に低い結果が得られました。

とはいえ、副作用が全くないわけではありません。報告されている主な副作用には、低血圧、徐脈、呼吸抑制、覚醒遅延、アナフィラキシーなどがあります。そのため使用時には継続的なモニタリングと適切な管理体制が必須です。

レミマゾラムの大きな利点として、ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬であるフルマゼニルによって効果を拮抗できる点が挙げられます。過鎮静や呼吸抑制が生じた場合、フルマゼニルを投与することで速やかに覚醒させることができます。フルマゼニルの半減期は約50分であり、レミマゾラムの半減期(39~53分)とほぼ同程度です。

この特性により、ミダゾラムで問題となる「再鎮静」のリスクが低減されます。ミダゾラムの半減期はフルマゼニルより長いため、拮抗後30分以上経過してから再び鎮静効果が現れる可能性がありますが、レミマゾラムではそのリスクが相対的に低いのです。

拮抗薬があるのは心強いです。

レミマゾラムと従来薬の臨床比較データ

ミダゾラムとの直接比較試験では、レミマゾラムの優位性が複数の指標で示されています。呼吸器内視鏡診療における研究では、鎮静成功率がレミマゾラム群で80.6%、ミダゾラム群で32.9%という結果が報告されました。さらに検査開始までの時間と完全覚醒までの時間はいずれもレミマゾラム群で有意に短いことが確認されています。

プロポフォールとの比較では、レミマゾラムは呼吸抑制、注射時痛、低血圧、低酸素血症などの合併症を有意に減少させる利点がある一方、プロポフォールは鎮静成功率の向上と鎮静時間の延長において優れているという結果が得られています。つまり両薬剤にはそれぞれ長所と短所があり、患者背景や検査内容に応じた使い分けが重要になります。

実臨床における覚醒時間のデータでは、内視鏡終了から退室判断までの時間中央値が約2分、最終投与から退室判断までが約8分と報告されています。胃カメラ後は5~10分程度で覚醒し、約30分で完全覚醒、1時間後には通常の活動が可能な状態になります。従来薬では検査終了から30分程度のリカバリー時間が必要でしたが、これが半分以下に短縮されるのです。

この時間短縮により、リカバリールームの回転率が改善し、より多くの患者に鎮静下内視鏡検査を提供できる環境が整います。北里大学病院では、レミマゾラム導入後に鎮静ありの内視鏡検査が急速に増加したと報告されています。外来での1人あたりの所要時間が1時間から30分に短縮されるイメージです。

内視鏡鎮静に新たな選択肢、レミマゾラムが覚醒時間を半減(ケアネット)

上記記事では北里大学病院の池原久朝氏による医師主導治験の詳細と、レミマゾラムが内視鏡診療に与える臨床的意義について解説されており、エビデンスに基づいた情報が得られます。

半減です。

レミマゾラム使用における独自の臨床的考察

レミマゾラムの登場は、内視鏡診療における「医薬品副作用被害救済制度」の適用という観点でも重要な意味を持ちます。2025年6月の承認により、レミマゾラムを適応内で使用した場合の副作用は救済制度の補償対象となります。一方、従来適応外使用されていたミダゾラムやプロポフォールでは、この補償が受けられない可能性があります。

患者保護と医療機関のリスク管理の両面から、適応を取得した鎮静薬の使用は意義深いといえます。特に有害事象が発生した際、適応内使用と適応外使用では法的・経済的な責任の所在が大きく異なる可能性があるためです。医療従事者は、この制度上の違いを理解した上で薬剤選択を行う必要があります。

もう一つの注目点は、現在進行中の「検査後の車の運転」に関する追加臨床試験です。レミマゾラムの覚醒時間の短さを考慮すると、検査当日の自動車運転が可能になる可能性があります。これが実現すれば、特に公共交通機関が不便な地方の医療機関や患者にとって大きなメリットとなるでしょう。

炎症性腸疾患(IBD)のような定期的な内視鏡検査が必要な疾患においては、レミマゾラムの快適性と短時間性が継続受診率の向上につながる可能性があります。苦痛の少ない検査体験は、患者の心理的負担を軽減し、長期的な予後改善に寄与することが期待されます。実際、苦痛や不安が検診受診率の低さにつながっている現状を考えると、レミマゾラムは胃がん・大腸がんの早期発見率向上にも貢献する可能性があります。

ただし注意すべき点もあります。レミマゾラムは「切れがよい」特性がある一方、追加投与を比較的こまめに要する傾向があります。呼吸器内視鏡の研究では15分ごとに最大5回の追加投与が行われたケースもあり、検査時間が長い処置では投与管理に注意が必要です。医療従事者は、この薬理学的特性を理解し、適切なタイミングでの追加投与を判断する必要があります。

救済制度の対象です。


レミマゾラムQ&A