レボセチリジンの効果
レボセチリジンの作用機序
レボセチリジンは、セチリジンのR-エナンチオマーとして、持続性選択ヒスタミンH1受容体拮抗・アレルギー性疾患治療剤に分類されます 。アレルギー反応において、体内に侵入したアレルゲンに対して免疫システムが過剰反応し、マスト細胞からヒスタミンが放出されますが、レボセチリジンはこのヒスタミンがH1受容体に結合することを阻害し、アレルギー症状の発現を防ぎます 。
参考)レボセチリジン塩酸塩の効果・副作用を医師が解説!【花粉症/ア…
血漿蛋白結合率は約92%と高く、分布容積は25.14Lであり、主にCYP3A4による代謝を受けます 。従来の第一世代抗ヒスタミン薬と比較して、中枢神経系への移行が少ないため、眠気などの副作用が軽減されています 。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068554.pdf
レボセチリジンの適応症と臨床効果
成人における主な適応症は、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚そう痒症であり、小児では生後6ヶ月以上でアレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患に伴うそう痒に適応があります 。
アレルギー性鼻炎に対しては、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状の緩和に効果を示し、特に鼻水やくしゃみに対して優れた効果を発揮します 。蕁麻疹に対しては、皮膚の赤み、腫れ、かゆみを効果的に抑制し、湿疹・皮膚炎などの皮膚疾患に伴う強いかゆみも軽減します 。
参考)知っておくべき!レボセチリジン塩酸塩の効果と副作用|個人輸入…
国内第III相試験では、慢性蕁麻疹患者に対してレボセチリジン5mgを1日1回投与した場合、プラセボと比較して有意な改善が認められ、その効果は24時間持続することが確認されています 。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/fb9278c6da7fb65cf708be3624b3ddc89c917c99
レボセチリジンとセチリジンの薬理学的相違点
レボセチリジンは、セチリジンの光学異性体として開発された薬剤で、セチリジンには「R体」と「S体」が存在しますが、実際に薬理作用を示すのは「R体」であるレボセチリジンです 。
参考)https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/i2zvm/
R体は、S体と比較してヒスタミン受容体に対する親和性が30倍高く、解離速度も緩徐(解離半減時間は115分対7分)であることが示されています 。この特性により、レボセチリジンはセチリジンの半量(5mg対10mg)で同等の臨床効果を発揮し、副作用である眠気の発現頻度も低減されています 。
参考)アレルギー症状・治療お役立ち事典(さまざまな治療とアレルギー…
薬物動態学的検討において、健康成人男性に対してレボセチリジン5mgとセチリジン10mgを投与した比較試験では、血漿中レボセチリジン濃度のCmax及びAUCが同等であることが確認されています 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4937632/
レボセチリジンの特殊な抗炎症作用メカニズム
レボセチリジンは単なるヒスタミン受容体拮抗作用にとどまらず、好酸球の化学走性や炎症性サイトカインの産生抑制など、多面的な抗炎症作用を有していることが近年の研究で明らかになっています 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3048603/
特にアトピー性皮膚炎患者において、レボセチリジンは外用剤によるプロアクティブ療法との併用により、寛解維持に対する有用性が探索されており、炎症の慢性化を防ぐ効果が期待されています 。また、皮膚における痒み抑制効果に関しては、単純なヒスタミン拮抗作用を超えた神経系への作用も報告されており、痒み-掻破サイクルの遮断に寄与すると考えられています 。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/957ac5744fb7bb1125a95a041636a13f99cb1a06
これらの作用機序により、レボセチリジンは従来の抗ヒスタミン薬と比較して、より包括的なアレルギー症状の改善を期待できる薬剤として位置づけられています 。
レボセチリジンの副作用と安全性プロファイル
レボセチリジンの主な副作用として最も頻度が高いのは傾眠(眠気)であり、国内臨床試験では26件報告されています 。その他、頭痛(9件)、口内乾燥(8件)が主要な副作用として挙げられ、これらは用量依存的に発現する傾向があります 。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068660.pdf
消化器系の副作用として、吐き気、食欲不振、下痢などが報告されており、まただるさ、倦怠感といった全身症状も見られることがあります 。これらの軽度な副作用は、多くの場合継続服用により軽減することが知られています。
重大な副作用として、頻度は極めて稀ですが、ショック・アナフィラキシー、痙攣、肝機能障害・黄疸、血小板減少が報告されています 。特に肝機能障害については、AST、ALTの上昇、ビリルビン値の増加として現れるため、定期的なモニタリングが推奨されます。
安全性プロファイルの観点から、レボセチリジンは第二世代抗ヒスタミン薬の中でも比較的副作用が少ない薬剤として評価されており、生後6ヶ月からの小児使用も承認されている点で臨床的価値が高いとされています 。