ライトチェーン沈着症の診断と腎生検と免疫染色

ライトチェーン沈着症と診断と治療

ライトチェーン沈着症(LCDD)臨床の要点
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まず疑うきっかけ

蛋白尿・ネフローゼ、腎機能低下、結節性病変(糖尿病に似る)などが入口。単クローン性免疫グロブリン関連腎症(MGRS)として捉えると検索漏れが減る。

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確定は腎生検

Congo red陰性を確認しつつ、免疫染色(κ/λ)で単クローン性沈着を証明する。GBM/TBMに沿った沈着パターンは重要なヒント。

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治療の方向性

原則は“産生源(形質細胞クローン)を叩く”。多発性骨髄腫に準じた治療が基本で、早期診断が腎予後に直結する。

ライトチェーン沈着症の病態とMIDDと非アミロイド

ライトチェーン沈着症(light chain deposition disease: LCDD)は、免疫グロブリン軽鎖が臓器に沈着するが、アミロイド線維(βシート主体の線維構造)を形成しない「非アミロイド」の沈着症として理解すると整理しやすいです。

腎領域では、単クローン性免疫グロブリン沈着症の大枠(MIDD: monoclonal immunoglobulin deposition disease)の一型として位置づけられ、LCDDは重鎖が沈着せず軽鎖(κまたはλ)に偏って沈着するタイプです。

臨床では、蛋白尿(ときにネフローゼ)と腎機能低下が主戦場になりますが、病理の結節性病変が糖尿病性腎症の結節性変化に似るため、「糖尿病がない/軽いのに結節性病変」「血尿が目立たないのに腎機能が落ちる」などの違和感が重要な入口になります。

また、MGRS(腎に意義のある単クローン性ガンマグロブリン血症)という概念で考えると、血液疾患としては“治療基準を満たさない小さなクローン”でも腎障害は進行し得る、という臨床的な危機感をチームで共有しやすくなります。

ライトチェーン沈着症の腎生検と免疫染色と蛍光抗体法

LCDDの確定は「腎生検で軽鎖沈着を証明すること」で、免疫染色(または蛍光抗体法)によりκまたはλの一方に偏った沈着を確認します。

総説レベルでも、Congo red陰性であることを確認しつつ、軽鎖の偏り(κ/λ)を必須項目として評価しないとMIDDが見逃され得る点が強調されています。

光顕では結節性病変(結節性硬化)を呈し得て、実臨床では「糖尿病性腎症らしいが説明しきれない」ケースで腎生検が診断を一気に前進させます。

さらに、糸球体基底膜(GBM)だけでなく尿細管基底膜(TBM)にも沈着し得る点は、尿細管間質障害や酸塩基異常(尿細管性アシドーシス)など、腎機能低下のプロファイルを考える際の“見落としやすい補助線”になります。

ライトチェーン沈着症の電顕所見とGBMとTBM

電子顕微鏡(電顕)では、アミロイド線維のような線維構造ではなく、GBM内側やTBM外側に沿った細かな高電子密度沈着物が示唆所見になります。

移植腎病理の解説でも、TBM外側・GBM内側に沿ったdense deposits、そして蛍光抗体法でGBM/TBMにλが線状に陽性といった組み合わせでLCDDと診断した記載があり、沈着の“場所”と“線状パターン”が診断の再現性を上げる要素だと分かります。

一方、実地では電顕が提出できない/十分な標本が得られないこともあり得ますが、その場合でも免疫染色での軽鎖沈着の証明が診断の軸になります。

電顕を「必須の追加情報」とみなすより、「鑑別に悩む症例で決定打を出しやすい情報」と位置づけると、依頼タイミング(初回から出すか、後追いで追加するか)の判断がしやすくなります。

ライトチェーン沈着症の鑑別とアミロイド腎症とネフローゼ

鑑別の中心はALアミロイドーシスで、両者は“軽鎖が原因”という点で近く、腎ではネフローゼ症候群の重要鑑別として並びます。

病理では、アミロイドーシスはCongo red(またはDFS)陽性で偏光下アップルグリーン、電顕で線維構造というセットが基本で、LCDDはCongo red陰性で非線維性沈着という対比が核になります。

総説では、結節性病変でCongo red陰性の場合にMIDDの可能性が高い点、また膜性腎症様の形態(MIDD with membranous features)が“通常の膜性腎症”と誤診され得る点が述べられており、鑑別は病理提出後の解釈だけでなく「最初から軽鎖をルーチンで染める」運用設計が実務的に重要です。

なお、ALアミロイドーシスでは血清FLC(free light chain)測定が診断・評価に有用で、腎機能障害がある場合はκ/λ比の解釈に腎機能の影響(renal reference rangeなど)を織り込む必要がある、という“検査値の落とし穴”がガイドラインで明確に言語化されています。

ライトチェーン沈着症の独自視点:診断遅延を減らす院内フロー

検索上位の解説は「病理所見・鑑別・治療」に集約されがちですが、実務では“検査が出ているのに気づかない”工程のほうが診断遅延の主因になりやすいです。

例えば、腎生検の依頼段階で「結節性病変+糖尿病らしくない」「蛋白尿の割に尿沈渣が乏しい」「腎機能低下が速い」などの条件を満たしたら、病理オーダーに“軽鎖(κ/λ)評価を必須化”するルールを作るだけで、MIDD/LCDDの取りこぼしを減らせます。

また、血液内科への紹介トリガーを「M蛋白の有無」だけにせず、FLC異常や腎病理で単クローン性沈着が示唆された時点で“クローン指向治療の検討が必要”という共通言語(MGRSの枠組み)でつなぐと、紹介の心理的ハードルが下がります。

小さな運用改善ですが、病理で軽鎖の偏りを見逃さないことが、結果として腎予後に直結する治療開始時期を前倒しします。

腎アミロイドーシスの血清FLCや病理(Congo red/DFS、電顕、鑑別)で迷ったときの考え方。

腎アミロイドーシスガイドライン2020(診断の進め方、FLC解釈、病理所見)