ラゲブリオの効果と重症化予防効果
ラゲブリオの重症化予防に関する臨床試験データ
ラゲブリオ(モルヌピラビル)の重症化予防効果は、複数の大規模臨床試験で実証されています 。最も重要な第3相臨床試験(MOVe-OUT試験)では、重症化リスクを有するワクチン未接種の患者1,433名を対象として実施されました 。
この試験において、ラゲブリオ投与群では入院した患者が6.8%、死亡した患者が0.1%であったのに対し、プラセボ投与群では入院が9.6%、死亡が1.3%でした 。つまり、ラゲブリオの投与により入院または死亡のリスクが約30%減少したことが確認されています 。
さらに、入院が必要となった患者においても、ラゲブリオ投与群では平均して3日程度退院までの日数が短縮し、回復期間の短縮効果も認められました 。これらのデータは、ラゲブリオが単に重症化を予防するだけでなく、感染症の経過そのものを改善する効果があることを示しています。
参考)COVID19治療薬
ラゲブリオの作用機序と抗ウイルス効果
ラゲブリオは「RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬」として分類される抗ウイルス薬です 。新型コロナウイルスは細胞に侵入後、自身のRNAを複製して増殖しますが、ラゲブリオはRNAの複製に使用される物質と類似した構造を持っています 。
参考)https://reiwa-animal-hospital.com/2025/01/29/molnupiravir/
ウイルスがラゲブリオを誤って取り込むと、遺伝子複製の過程で多数の突然変異が発生し、正常なウイルスの産生が阻害されます 。このメカニズムにより、ウイルスの増殖そのものが抑制され、感染性ウイルスの消失が促進されます。
臨床試験では、ラゲブリオ投与により感染性SARS-CoV-2がプラセボ群と比較してより迅速に消失し、投与3日目、5日目、10日目において感染性ウイルスが検出されなかったことが報告されています 。この特性により、他者への感染リスクの軽減効果も期待されています。
参考)Merck href=”https://www.msd.co.jp/news/chq-20220411/” target=”_blank” rel=”noopener”>https://www.msd.co.jp/news/chq-20220411/amp; Co., Inc., Kenilworth,…
ラゲブリオのワクチン接種者における効果の違い
興味深いことに、ラゲブリオの効果はワクチン接種状況によって異なることが明らかになっています 。ワクチン未接種者を対象としたMOVe-OUT試験では顕著な重症化予防効果が認められましたが、ワクチン接種者を主体とした英国のPANORAMIC試験では異なる結果が得られました 。
参考)新型コロナ薬「有用性なし」の衝撃 1600億円以上を売り上げ…
PANORAMIC試験では、参加者の99%が1回以上、94%が3回以上のワクチン接種を受けていましたが、28日目までの入院または死亡のリスクについては両群で有意差が認められませんでした 。しかし、症状のある期間については、ラゲブリオ投与群で4.2日の短縮効果が確認されています 。
参考)英国における多施設共同臨床試験[PANORAMIC試験](海…
これらの結果は、ワクチン接種により既に一定の免疫が獲得されている患者においては、ラゲブリオの重症化予防効果は限定的である一方、症状改善や回復期間短縮における有用性は維持されていることを示しています 。
ラゲブリオの安全性と副作用プロファイル
ラゲブリオは比較的良好な安全性プロファイルを示しており、重篤な副作用の頻度は低いとされています 。最も頻度の高い副作用は消化器系症状で、下痢(約3%)、悪心・吐き気(2-3%)が報告されています 。
参考)新型コロナウイルス感染症治療薬「ラゲブリオ」の特徴と効果、副…
その他の副作用として、浮動性めまい(ふらつき感)、頭痛が1-5%の頻度で認められます 。頻度は不明ですが、重大な副作用としてアナフィラキシー反応の可能性があり、皮膚の発赤、息苦しさ、激しい嘔吐、意識レベルの低下などの症状が現れた場合は直ちに投与を中止し、医療機関を受診する必要があります 。
重要な注意点として、ラゲブリオは妊婦および妊娠の可能性のある女性には禁忌です 。動物実験において胎児の奇形や発育遅延が報告されており、妊娠を希望する患者では5日間の投与終了後も4日間は避妊を継続することが必要とされています 。
参考)https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2025/05/ppi_lagevrio_or.pdf
ラゲブリオの適切な使用法と投与タイミングの重要性
ラゲブリオの効果を最大限に発揮するためには、適切な投与タイミングと用法遵守が極めて重要です 。推奨用量は18歳以上の患者に対して、1回800mg(カプセル製剤では4カプセル、錠剤では2錠)を1日2回、5日間の経口投与です 。
参考)新型コロナウイルス感染症 経口治療薬「ラゲブリオ®」錠剤を本…
投与タイミングについては、新型コロナウイルス感染症の症状発現から5日以内の開始が強く推奨されています 。発症から5日以内にラゲブリオを投与した患者の方が、5日目以降に投与した患者と比較してより顕著な抗ウイルス効果を示すことが確認されているためです 。
参考)https://www.ghc.tokyo/wp-content/uploads/2023/09/66526362bbe8de1c01cf23b619af80e1.pdf
服用方法としては、食事の有無に関わらず服用可能で、カプセルや錠剤は噛み砕かずにそのまま服用する必要があります 。症状が改善しても自己判断で中止せず、必ず5日間の投与を完了することが重要です 。飲み忘れた場合は、予定時刻から10時間以内であれば気づいた時点で服用し、その後は通常の服用スケジュールを継続します 。