プロラクチン分泌抑制薬と効果副作用治療適応症

プロラクチン分泌抑制薬の作用機序と適応

カベルゴリンなら週1回投与で済むと思っていませんか?実は長期使用で心臓弁膜症リスクが2倍以上になります。

📋 この記事の3ポイント要約
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主要3薬剤の特徴

カベルゴリン(週1回)、ブロモクリプチン(1日2~3回)、テルグリド(1日3回)の投与頻度と効果の違いを理解し、患者背景に応じた選択が必要です

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長期使用の重大リスク

心臓弁膜症は投与開始後3~6ヵ月以内および6~12ヵ月毎の心エコー検査が必須で、麦角製剤は非麦角製剤より線維症報告が多く慎重なモニタリングが求められます

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薬剤性高プロラクチン血症への対応

原因薬剤の中止が原則で平均53.7日で正常月経周期に回復しますが、中止困難な場合はドパミン作動薬との併用で対処します

プロラクチン分泌抑制薬の作用メカニズム

プロラクチン分泌抑制薬は、脳下垂体前葉のドパミンD2受容体に作用する薬剤です。プロラクチンは通常、視床下部から分泌されるドパミンによって分泌抑制が調節されています。この薬剤群はドパミン受容体作動薬として働き、プロラクチンの過剰分泌を特異的に抑制します。

プロラクチンは授乳期に乳汁分泌を促進する重要なホルモンですが、非妊娠時や授乳期以外に過剰分泌されると様々な病態を引き起こします。女性では月経異常、無月経、乳汁漏出、不妊などが生じ、男性では性欲低下や勃起不全といった症状が現れることがあります。

つまり治療の基本です。

薬理学的にはドパミンが水道の蛇口を締めるようにプロラクチン分泌を抑制している状態を、これらの薬剤が模倣しているわけです。視床下部のドパミン分泌が何らかの理由で低下すると、下垂体からのプロラクチン分泌が亢進し高プロラクチン血症となります。プロラクチン分泌抑制薬は外因性にドパミン受容体を刺激することで、この異常な分泌亢進を正常化させる役割を担っています。

プロラクチン分泌抑制薬の主な適応疾患

高プロラクチン血症に関連する疾患群が主要な適応対象となります。具体的には乳汁漏出症、高プロラクチン血性排卵障害、高プロラクチン血性下垂体腺腫(プロラクチノーマ)、産褥性乳汁分泌抑制、さらにパーキンソン病にも使用されます。

高プロラクチン血症の原因として最も頻度が高いのは薬剤性です。抗精神病薬(コントミン、セレネースなど)、抗うつ薬(トフラニール、パキシルなど)、胃腸薬・制吐剤(ドグマチール、プリンペランなど)、降圧剤、経口避妊薬などが原因薬剤として知られています。続発性無月経の研究では高プロラクチン血症が31.7%と最多で、薬剤性が14.3%を占めていることが判明しています。

原因薬剤の中止が原則です。

薬剤性高プロラクチン血症では、原因薬剤の中止により平均45日で乳汁分泌が停止し、平均53.7日で正常な月経周期に回復したという報告があります。ただし精神疾患や消化器疾患の治療を優先する必要がある場合は原因薬剤を中止できないこともあり、そのような場合にはプロラクチン分泌抑制薬を併用して対処します。

プロラクチン産生下垂体腺腫(プロラクチノーマ)は内分泌的に活動性のある下垂体腫瘍の中で最も頻度が高く、薬物療法の第一選択としてドパミン作動薬が用いられます。多くの症例で腫瘍縮小効果も得られ、外科的処置を回避できる可能性があります。

プロラクチン分泌抑制薬の種類と特徴比較

日本国内で使用可能な主要なプロラクチン分泌抑制薬は、カベルゴリン(商品名:カバサール)、ブロモクリプチン(商品名:パーロデル)、テルグリド(商品名:テルロン)の3剤です。それぞれドパミンD2受容体作動薬に分類されますが、薬物動態や副作用プロファイルに違いがあります。

カベルゴリンは作用時間が長く、半減期が約63~68時間と非常に長いのが特徴です。このため週1回の投与で効果が持続し、患者のアドヒアランス向上に寄与します。高プロラクチン血症関連疾患に対しては1週1回(同一曜日)就寝前に経口投与し、0.25mgから開始して少なくとも2週間以上の間隔で0.25mgずつ増量します。維持量は標準的に0.25~0.75mg、上限は1.0mgです。

週1回で済むのが利点ですね。

ブロモクリプチンは歴史的に最初に開発されたプロラクチン分泌抑制薬で、作用時間はカベルゴリンより短く1日2~3回の服用が必要です。初回量は1.25~2.5mgから開始し、プロラクチン値の正常化を目標に漸増します。消化器症状(悪心、嘔吐)の副作用がカベルゴリンより強く出やすいという欠点がありますが、妊娠中の安全性データはカベルゴリンよりも蓄積されています。

テルグリドはイソリゼルグ酸誘導体で、下垂体前葉のドパミン受容体に対して強力な作動作用を示します。1日量1.5mgを3回に分けて食後投与するのが標準的です。中枢のドパミン神経系での作用は比較的弱いため、ブロモクリプチンで問題となる中枢性副作用が少ないとされています。

海外の臨床研究では、カベルゴリンがブロモクリプチンに比較してプロラクチン値の正常化率、持続的無月経の改善、腫瘍縮小効果のいずれにおいても有意に優れており、副作用も少ないことが示されています。このためカベルゴリンはブロモクリプチンより作用時間が長く、ホルモン低下や腫瘍縮小効果がより確実で副作用が少ないことから、近年では一選択として用いられることが多くなっています。

高プロラクチン血症の治療におけるカベルゴリンとブロモクリプチンの効果比較に関する詳細情報はこちら

プロラクチン分泌抑制薬の投与方法と用量調整

プロラクチン分泌抑制薬は少量から開始し、消化器症状や血圧の観察を十分に行いながら慎重に維持量まで増量するのが原則です。急激な増量は副作用リスクを高めるため、段階的な用量調整が重要になります。

カベルゴリンの場合、高プロラクチン血症関連疾患では週1回0.25mgから開始します。臨床症状を観察しながら少なくとも2週間以上の間隔で1回量を0.25mgずつ増量し、維持量を定めます。パーキンソン病に対しては1日量0.25mgから始め、2週目には0.5mgとし、以後1週間毎に0.5mgずつ増量して維持量を定めますが、最高用量は1日3mgです。

2週間以上の間隔が必要です。

産褥性乳汁分泌抑制の場合は特殊で、胎児娩出後に1回のみ1.0mgを食後に経口投与します。ただし胎児娩出後4時間以内の投与は避け、呼吸・脈拍・血圧等が安定した後に投与すること、また胎児娩出後2日以内に投与することが望ましいとされています。投与後特に投与当日は観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置が必要です。

生殖補助医療に伴う卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症抑制では、1日1回0.5mgを最終的な卵胞成熟の誘発日または採卵日から7~8日間、就寝前に経口投与します。多嚢胞性卵巣症候群の有無、血清抗ミュラー管ホルモン濃度、血清エストラジオール濃度、卵胞数等に基づき、OHSSの発症リスクが高いと判断される患者に対してのみ投与します。

ブロモクリプチンは1.25~2.5mgから開始し、悪心などの消化器症状に注意しながら数日から1週間かけて漸増します。高プロラクチン血症では通常1日5~7.5mgを2~3回に分けて食後投与します。

治療効果の判定にはプロラクチン値の測定が不可欠です。投与開始後は定期的に血中プロラクチン濃度を測定し、正常化を確認します。カベルゴリンの場合、おおよそ3年間治療した後にプロラクチン値が正常化し、腫瘍サイズが著明に縮小した場合は、減量あるいは中止に向かってよいと考えられています。長期間(最低2年以上、多くは3~5年)服用することにより薬を中止してもプロラクチンが上昇しなくなる(治る)ことがあります。

プロラクチン分泌抑制薬の副作用とモニタリング体制

プロラクチン分泌抑制薬には特有の副作用があり、長期投与の場合は定期的なモニタリングが必須です。特に心臓弁膜症、線維症、突発的睡眠、精神症状、消化器症状などが重要な副作用として知られています。

心臓弁膜症は麦角製剤であるカベルゴリン、ブロモクリプチン、テルグリドで報告されている重大な副作用です。長期投与において心臓弁尖肥厚、心臓弁可動制限及びこれらに伴う狭窄等の心臓弁膜の病変が出現することがあります。非麦角製剤と比較して麦角製剤投与中の心臓弁膜症、線維症の報告が多いことが明らかになっています。

心エコー検査が必須です。

このため投与開始前には聴診等の身体所見の観察、心エコー検査により潜在する心臓弁膜症の有無を確認する必要があります。投与中は投与開始後3~6ヵ月以内に、それ以降は少なくとも6~12ヵ月毎に心エコー検査を実施します。また聴診等の身体所見、胸部X線、CT等による十分な観察を定期的に行います。心雑音の発現または増悪等が認められた場合には速やかに精査し、心臓弁膜の病変が確認された場合には投与を中止します。なお投与中止により改善がみられたとの報告例もあります。

胸膜炎、胸水、胸膜線維症、肺線維症、心膜炎、心嚢液貯留、後腹膜線維症などの線維症関連副作用も重要です。本剤の長期投与またはドパミン受容体刺激作用を有する麦角製剤の治療歴のある患者に投与した場合に出現することがあります。胸痛、浮腫、呼吸器症状、背部痛、下肢浮腫、腎機能障害等が認められた場合には速やかに胸部X線検査等を実施し、異常が認められた場合には投与を中止します。

消化器症状は頻度の高い副作用です。悪心・嘔気、嘔吐、便秘、胃部不快感、食欲不振などが出現します。カベルゴリンではブロモクリプチンに比べて消化器症状の頻度が低いとされていますが、それでも一定の頻度で発現します。症状が強い場合は制吐剤の併用や投与量の調整を検討します。

精神神経系の副作用として、幻覚(5.5%)、妄想(1.8%)、失神、せん妄、錯乱などが報告されています。ドパミン受容体作動性のため統合失調症の症状である幻覚、妄想などを悪化させる可能性があり、精神病またはその既往歴のある患者では特に注意が必要です。

突発的睡眠も注意すべきです。

前兆のない突発的睡眠、傾眠、起立性低血圧がみられることがあるため、自動車の運転、機械の操作、高所作業等危険を伴う作業には従事させないよう患者に十分な注意喚起を行います。レボドパまたはドパミン受容体作動薬の投与により、病的賭博、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食等の衝動制御障害が報告されており、このような症状が発現した場合には減量または投与を中止するなど適切な処置を行います。患者及び家族等にこのような衝動制御障害の症状について説明することが重要です。

パーキンソン病治療において本剤の減量・中止が必要な場合は漸減が原則です。急激な減量または中止により悪性症候群(高熱、意識障害、高度の筋硬直、不随意運動、血清CK上昇等)があらわれることがあります。また薬剤離脱症候群(無感情、不安、うつ、疲労感、発汗、疼痛等の症状を特徴とする)があらわれることもあります。

妊娠中や授乳中の使用については慎重な判断が求められます。妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましいとされています。ただし高プロラクチン血性排卵障害の治療で妊娠した場合は、妊娠判明時点で直ちに投与を中止します。下垂体腺腫のある患者では投与中止により妊娠中に下垂体腺腫の拡大が起こることがあるため、中止後も観察を十分に行い、腺腫の拡大を示す症状(頭痛、視野狭窄等)に注意します。授乳を望む母親には本剤を投与しないこととされています。

本剤は乳汁分泌を抑制するためです。

カベルゴリンの長期使用における心臓弁膜症リスクに関する詳細な安全性情報

肝機能障害のある患者では注意が必要です。高度の肝機能障害またはその既往のある患者では、外国で重度の肝不全患者において本剤の血中AUCが上昇することが明らかにされています。本剤は主として肝臓で代謝されるため、肝機能が低下している患者では高い血中濃度が持続するおそれがあります。高齢者でも肝機能が低下していることが多いため、用量に留意して患者の状態を観察しながら慎重に投与します。

下垂体腫瘍がトルコ鞍外に進展している患者では特殊な注意が必要です。腺腫の縮小により髄液鼻漏を来すことがあり、髄膜炎に至る可能性があります。また視野障害のみられる患者において、投与により腺腫の縮小がみられ一旦視野障害が改善した後、トルコ鞍の空洞化により視交叉部が鞍内に陥入することによって再び視野障害があらわれたとの報告があります。異常が認められた場合には減量または中止するなど適切な処置を行います。