プロポフォールの使い方と投与量、注意点

プロポフォールの使い方

プロポフォールの基本情報
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薬効分類

全身麻酔・鎮静用剤

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作用発現

投与後30〜40秒で効果発現

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作用機序

GABA受容体を介した中枢神経抑制

プロポフォールの使い方:全身麻酔導入時の投与方法

プロポフォールは、全身麻酔の導入や維持、集中治療における鎮静に広く使用される静脈麻酔薬です。その特徴的な乳白色の外観から「ミルク麻酔」とも呼ばれ、速やかな作用発現と覚醒の早さが特徴です。

全身麻酔導入時のプロポフォールの標準的な投与方法は以下の通りです:

  1. 投与量:1.0〜2.5 mg/kg を静脈内投与
  2. 投与速度:10〜40 mg/10秒の速度で緩徐に投与
  3. 効果発現:通常30〜40秒で意識消失

注意点として、高齢者や全身状態不良の患者では、投与量を減量する必要があります。また、投与中は呼吸抑制や血圧低下に注意が必要です。

プロポフォール投与時の注意点に関する詳細な情報はこちらをご覧ください:
日本臨床麻酔学会誌 – プロポフォール麻酔の基本

プロポフォールの使い方:持続投与での鎮静維持

全身麻酔の維持や集中治療室での鎮静には、プロポフォールの持続投与が行われます。一般的な投与方法は以下の通りです:

  1. 初期投与速度:4〜10 mg/kg/時
  2. 維持投与速度:4〜6 mg/kg/時(個々の患者の反応に応じて調整)
  3. 目標鎮静レベル:BIS(Bispectral Index)値40〜60を目安

持続投与中は、以下の点に注意が必要です:

  • 定期的な鎮静レベルの評価
  • 呼吸・循環動態のモニタリング
  • 長期投与によるプロポフォール注入症候群のリスク

プロポフォールの薬物動態学的特性により、投与時間が長くなるほど覚醒に時間がかかる傾向があります。この現象は「context-sensitive half-time」と呼ばれ、臨床上重要な概念です。

プロポフォールの薬物動態に関する詳細な情報はこちらをご覧ください:
KEGG MEDICUS – プロポフォールの薬物動態

プロポフォールの使い方:ディプリフューザーTCI機能の活用

近年、プロポフォールの投与管理にはTarget Controlled Infusion(TCI)システムが広く用いられています。日本で承認されているディプリフューザーTCIシステムは、プロポフォールの効果部位濃度を予測し、自動的に投与速度を調整します。

ディプリフューザーTCIの使用方法:

  1. 患者情報(年齢、身長、体重)を入力
  2. 目標効果部位濃度を設定(通常2〜6 μg/mL)
  3. システムが自動的に投与速度を調整

TCIシステムの利点:

  • 個々の患者に適した投与量の調整が容易
  • 効果部位濃度の予測による安定した麻酔深度の維持
  • 麻酔科医の負担軽減

ただし、TCIシステムはあくまで予測モデルに基づいているため、実際の臨床効果とは乖離する可能性があります。そのため、BISモニターなどを併用し、患者の反応を注意深く観察することが重要です。

ディプリフューザーTCIシステムの詳細については以下のリンクをご参照ください:
KEGG MEDICUS – ディプリバン(プロポフォール)のTCIシステム

プロポフォールの使い方:集中治療での注意点

集中治療室でのプロポフォール使用には、特有の注意点があります:

  1. 長期投与のリスク:

    • プロポフォール注入症候群(PRIS)の可能性
    • 症状:代謝性アシドーシス、横紋筋融解症、高カリウム血症など
    • 4 mg/kg/時以上の高用量投与や48時間以上の長期投与で発症リスク上昇
  2. 感染リスク:

    • プロポフォールは細菌増殖の培地となりやすい
    • 無菌操作の徹底と12時間ごとの輸液セット交換が必要
  3. カロリー負荷:

    • プロポフォール1 mLあたり1.1 kcalのカロリーを含有
    • 長期投与時は栄養管理に注意が必要
  4. 薬物相互作用:

    • ベンゾジアゼピン系薬物やオピオイドとの併用で相乗効果
    • 相互作用を考慮した投与量調整が必要

集中治療でのプロポフォール使用に関する詳細なガイドラインはこちらをご覧ください:
日本集中治療医学会 – 日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン

プロポフォールの使い方:副作用と相互作用の管理

プロポフォールの主な副作用と対策:

  1. 呼吸抑制:

    • 発生頻度:高頻度(特に急速投与時)
    • 対策:適切な気道確保と人工呼吸の準備
  2. 血圧低下:

    • 発生頻度:高頻度(特に高齢者や心機能低下患者)
    • 対策:輸液負荷、昇圧剤の準備
  3. 注射時疼痛:

    • 発生頻度:約60%
    • 対策:リドカイン併用、大きな静脈への投与
  4. アレルギー反応:

    • 発生頻度:稀(0.1〜0.2%)
    • 対策:既往歴の確認、緊急時の対応準備
  5. プロポフォール注入症候群(PRIS):

    • 発生頻度:稀(0.1%未満)
    • 対策:長期高用量投与の回避、早期発見と対応

プロポフォールと相互作用する主な薬剤:

  • ベンゾジアゼピン系薬物:鎮静作用増強
  • オピオイド:呼吸抑制増強
  • 抗不整脈薬(特にβ遮断薬):徐脈リスク上昇

これらの薬剤との併用時は、プロポフォールの投与量を減量する必要があります。

意外な情報として、プロポフォールには抗酸化作用や抗炎症作用があることが報告されています。これらの作用が臨床的にどのような意義を持つかは、現在も研究が進められています。

プロポフォールの副作用と相互作用に関する詳細情報はこちらをご覧ください:
JAPIC – プロポフォール注射剤の添付文書情報

プロポフォールは、その特性を理解し適切に使用することで、安全かつ効果的な麻酔管理や鎮静を実現できる薬剤です。しかし、その使用には十分な知識と経験が必要であり、常に最新の情報と推奨事項に基づいた管理が求められます。麻酔科医や集中治療医を中心とした多職種チームでの慎重な患者管理が、プロポフォール使用の成功の鍵となります。