プレポダインシリーズとは
プレポダインシリーズの基本構成と分類
プレポダインシリーズは、丸石製薬が製造販売するヨウ素系殺菌消毒剤であり、ヨードホール製剤として分類されています。この製剤は、アメリカのWest Design Chemical社によって開発されたヨードホールの技術を基に、同社との技術提携により日本で国産化された殺菌消毒剤です。
参考)プレポダイン®スクラブ0.75% 540mL
プレポダインシリーズには以下の3つの製剤が用意されています:
参考)プレポダイン®フィールド1% 500mL
- プレポダインソリューション1%:基本的な水溶液製剤
- プレポダインスクラブ0.75%:界面活性剤を添加した洗浄型製剤
- プレポダインフィールド1%:イソプロパノール(64vol%)を添加した速効性製剤
各製剤は薬効分類として外用殺菌消毒剤(薬効分類番号:2612)に分類され、一般名は「ヨウ素」として登録されています。
参考)医療用医薬品 : プレポダイン (プレポダインフィールド1%…
プレポダインシリーズの有効成分とメカニズム
プレポダインの主要な有効成分はヨウ素であり、キャリアとして毒性と皮膚刺激性の低いポロクサマー(非イオン性界面活性剤:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)を使用しています。このポロクサマーは界面活性剤として機能し、ヨウ素との複合体を形成することで安定性を高めています。
参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=2612706Q2039
ヨウ素の殺菌メカニズムは複数の作用機序によるものです:
参考)Y’s Square:病院感染、院内感染対策学術情報 |V …
- アミノ酸、ヌクレオチドのN-H結合に作用してN-I誘導体を作り、重要な水素結合を阻害
- アミノ酸のS-H群を酸化して、タンパク合成の重要な要素である2硫化結合を阻害
- アミノ酸のフェノール群に対してヨウ素誘導体を作り、フェノールの-OH基による結合を阻害
- 不飽和脂肪酸のC=C結合に作用して、脂質を変成させる
ヨードホールを希釈すると複合体から徐々にヨウ素が遊離し、この遊離したヨウ素が実際の殺菌作用を発揮します。
参考)http://www.mac.or.jp/mail/120501/03.shtml
プレポダインシリーズの殺菌効果と適用範囲
プレポダインは広範囲の微生物に対して優れた殺菌効果を示します。具体的な殺菌時間のデータによると、以下の微生物に対して短時間で強力な殺菌効果を発揮します:
参考)医療用医薬品 : プレポダイン (プレポダインスクラブ0.7…
細菌に対する効果
- 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus):30秒以内
- 大腸菌(Escherichia coli):30秒以内
- 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa):30秒以内
- その他多数のグラム陽性菌・陰性菌:30秒以内
その他の微生物に対する効果
- カンジダ・アルビカンス(Candida albicans):60秒以内
- 結核菌:有効
- 真菌:有効
- 一部のウイルス:有効
この幅広い抗菌スペクトルにより、医療現場での感染対策において非常に重要な役割を果たしています。
参考)くすりのしおり : 患者向け情報
プレポダインシリーズの使用方法と適用部位
各製剤の効能・効果は以下の通りです:
プレポダインソリューション1%
- 手術部位(手術野)の皮膚の消毒
- 手術部位(手術野)の粘膜の消毒
- 皮膚・粘膜の創傷部位の消毒
- 熱傷皮膚面の消毒
プレポダインスクラブ0.75%
- 手指・皮膚の消毒
- 手術部位(手術野)の皮膚の消毒
プレポダインフィールド1%
- 手術部位(手術野)の皮膚の消毒
プレポダインスクラブの使用方法は以下の手順で行います:
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=54879
- 手掌指を水で濡らす
- 掌に本剤5mLを取り、少量の水(2~4mL)を加える
- 手掌指に塗り広げ、5分間十分に摩擦する
- 必要に応じてブラシを使用する
プレポダインシリーズの安全性と副作用への配慮
プレポダインシリーズは皮膚に対する低刺激性を特徴としており、使用感や塗布感にも優れています。しかし、使用に際しては以下の副作用に注意が必要です:
参考)医療用医薬品 : プレポダイン (プレポダインソリューション…
主な副作用
重大な副作用
- アナフィラキシー様症状(呼吸困難、血圧低下等)の可能性
これらの副作用は頻度としては0.1%未満とされていますが、医療従事者は使用時に十分な観察を行い、異常が認められた場合には適切な処置を行う必要があります。
プレポダインは毒性と皮膚刺激性が低く設計されているため、日常的な医療現場での使用において比較的安全な消毒薬として位置づけられています。ただし、甲状腺機能に影響を与える可能性があるため、長期間の使用や広範囲への使用については注意が必要です。
特に新生児や乳児への使用については、ヨウ素が甲状腺機能に与える影響を考慮して、使用後は適切に拭き取るなどの配慮が必要とされています。また、ハイポエタノール液などの中和剤で直ちに拭き取ると、ヨウ素とチオ硫酸ナトリウムが反応して殺菌効果が消失するため、十分な反応時間(2-3分間)を確保することが重要です。