プレグニールの効果と作用機序
プレグニールの基本的な薬理作用
プレグニール(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、hCG)は、女性の生殖機能において極めて重要な役割を果たす糖蛋白質ホルモンです 。このホルモンは本来、妊娠初期に胎盤で産生されるもので、黄体の維持と妊娠継続に必要なプロゲステロンの分泌を促進します 。
プレグニールは、下垂体前葉から分泌される黄体化ホルモン(LH)と類似した作用を示します 。LHサージの代替として機能し、卵胞の最終成熟、排卵、および黄体化を引き起こす重要な役割を担っています 。
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000246221.pdf
プレグニールの排卵誘発メカニズム
プレグニールの排卵誘発作用は、LH受容体への結合により開始されます 。血中に投与されたプレグニールは、成熟卵胞のLH受容体に結合し、細胞内cAMP濃度を上昇させることで、以下の連鎖反応を引き起こします :
・卵胞内の第一減数分裂の完了促進
・卵胞壁の破綻による排卵の誘発
・顆粒層細胞の黄体細胞への分化促進
このメカニズムにより、プレグニール投与後約35-40時間で確実な排卵が期待できます 。
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プレグニールの体外受精における役割
生殖補助医療(ART)においては、プレグニールは「トリガー」として使用されます 。複数の卵胞が十分に発育した段階で、採卵の約35時間前にプレグニールを投与することで、卵胞内の卵子を最終的に成熟させ、採卵に最適なタイミングを作り出します 。
近年では、自己注射可能な製剤(オビドレル®など)も開発され、患者の利便性が向上しています 。これにより、通院回数の削減と患者の負担軽減が実現されています。
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プレグニールと男性不妊治療
プレグニールは男性不妊治療においても重要な役割を果たします 。男性に対しては、睾丸の間質細胞(ライディッヒ細胞)を刺激し、テストステロンの産生を促進する作用があります 。
この作用により、精子形成能の改善や性腺機能低下症の治療に応用されています。特に、視床下部-下垂体機能障害による男性不妊症例では、FSH製剤との併用により良好な治療成績が報告されています 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000891505.pdf
プレグニールの黄体補充療法における効果
プレグニールは黄体補充療法においても重要な位置を占めています 。特に生殖補助医療後の黄体機能不全に対して、プロゲステロン製剤と併用することで妊娠率の向上と流産率の低下が期待できます 。
黄体補充療法では、胚移植後の着床環境を最適化し、初期妊娠の維持に必要なホルモン環境を提供します。このため、体外受精や顕微授精における重要な治療選択肢として位置づけられています 。