ポリファーマシーは何種類から?多剤併用の基準と適切な対策

ポリファーマシーの種類と基準

ポリファーマシー対策のポイント
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種類による定義

一般的には5〜6種類以上で有害事象リスクが高まる

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高齢者への影響

転倒・認知機能低下などの副作用が顕著に現れる

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適切な対策

段階的な減薬と継続的なモニタリングが重要

ポリファーマシーの具体的な種類と判断基準

ポリファーマシーは「Poly(多くの)」と「Pharmacy(調剤)」を組み合わせた造語で、単に薬剤数が多いことではなく、薬剤の多剤併用により有害事象が発生している、またはそのリスクが高い状態を指します 。

参考)たくさんのお薬を飲んでいませんか?『ポリファーマシー』

厚生労働省の調査によると、日本では一般的に5~6種類以上の薬剤を併用している場合にポリファーマシーと定義されることが多く、75歳以上の高齢者では約24%が7種類以上の薬を処方されていることが明らかになっています 。

参考)ポリファーマシーとは?原因や問題点を確認!予防・対策をわかり…

しかし重要な点として、ポリファーマシーの判断は薬剤数だけでなく、患者の病態や生活環境によって変化するため、2~3種類でも有害な問題が発生していればポリファーマシーと判断されます 。

参考)ポリファーマシー ポリファーマシーとは何でしょうか

ポリファーマシーによる高齢者の健康リスク

高齢者におけるポリファーマシーの最も深刻な問題は、転倒リスクの著しい増加です。研究データによると、5種類以上の薬を服用している高齢者の40%以上にふらつきや転倒が発生し、ベンゾジアゼピン系薬を含む5剤以上の併用では補正相対リスクが1.40(95%CI 1.04-1.87)まで上昇することが報告されています 。

参考)ポリファーマシーと転倒

また、認知機能への影響も深刻で、三環系抗うつ薬やH2受容体拮抗薬(胃薬)などが認知機能低下を引き起こす可能性が高いとされています 。高齢者は肝機能や腎機能が低下しているため、薬物の代謝・排泄に時間がかかり、体内に薬物が蓄積することで副作用が発現しやすくなります 。

参考)https://www.minnanokaigo.com/news/kaigo-text/pharmacist/no62/

転倒による骨折は要介護状態への移行や認知症発症のリスクファクターとなるため、ポリファーマシー対策は高齢者の生活の質を維持する上で極めて重要です 。

ポリファーマシーの薬物相互作用による問題

多剤併用において特に注意すべきは薬物相互作用です。薬物相互作用には大きく分けて2つの種類があります 。

参考)http://www.nagasaki.med.or.jp/oomura/forum1.pdf

薬物動態学的相互作用(PK)では、ある薬剤が他の薬物の吸収、分布、代謝、排泄に影響を与え、血中濃度を変化させることで効果の増強や減弱が起こります 。

参考)ポリファーマシー 複数の薬を服用することに問題はありますか

薬物力学的相互作用(PD)では、同じ薬理作用を持つ薬剤の併用により作用が増強されたり、反対の作用を持つ薬剤により効果が減弱されたりします。例えば、トリアゾラムとエチゾラムの併用では中枢抑制作用が増強し、眠気やふらつきが顕著に現れます 。
複数の医療機関を受診する高齢者では、類似薬の重複処方や相反する薬効を持つ薬剤の組み合わせが問題となることが多く、お薬手帳の活用による一元管理が重要です 。

参考)https://nakamura-med.or.jp/pages/120?detail=1amp;b_id=462amp;r_id=31

ポリファーマシー対策における減薬の実践方法

効果的なポリファーマシー対策では、段階的な減薬アプローチが基本となります。減薬は「一回に一種類ずつ」進めることが原則で、複数の薬剤を同時に中止すると、体調変化の原因特定が困難になるためです 。

参考)ポリファーマシー解消の実践方法 href=”https://fujicl.or.jp/polypharmacy-resolution-methods/” target=”_blank” rel=”noopener”>https://fujicl.or.jp/polypharmacy-resolution-methods/amp;#8211; 患者の安全を…

減薬の優先順位は以下のように設定されます。まず、ビタミン剤や消化薬などの中止しても影響が少ない薬剤から開始し、次に睡眠薬や抗不安薬などの依存性リスクがある薬剤を慎重に検討します。一方、抗血小板薬や血糖降下薬などの生命に関わる薬剤は最も慎重な判断が必要です 。
特に長期間服用していた薬剤については「漸減(ぜんげん)」という方法で、徐々に用量を減らしながら離脱症状を防ぎます。減薬後は数週間から数ヶ月間の継続的なモニタリングが必要で、患者の体調変化を注意深く観察することが安全な減薬実現の鍵となります 。

ポリファーマシー早期発見と医療費削減への取り組み

ポリファーマシーの早期発見には、かかりつけ薬局の活用が極めて効果的です。複数の医療機関からの処方薬を一括管理できるシステムにより、薬剤師が「最近、体調はいかがですか?」といった積極的な声かけを通じて副作用の早期発見につながります 。

参考)https://www.tsuji-fc.com/medical/20250306kakaritukei/20250321polypharmacy/index.html

また、ポリファーマシー対策は個人の健康面だけでなく、国民医療費削減の観点からも重要な課題です。令和元年度の調剤医療費は7.7兆円に達し、10年前と比較して1.3倍以上に増加しています 。処方箋1枚あたりの調剤医療費も14.4%増加しており、多剤処方による医療費圧迫が深刻な社会問題となっています 。

参考)【薬剤師必見】ポリファーマシーとは?原因や対策、注意点などを…

適切なポリファーマシー対策により、残薬の削減や不適切処方の中止だけでなく、薬物有害事象による医療費や介護費の抑制効果も期待されています 。医療機関では薬剤師主体のポリファーマシー対策チームを設置し、減薬に関わる医療報酬の算定と合わせて体系的な取り組みが進められています 。

参考)https://www.jshp.or.jp/activity/guideline/20240415-1-1.pdf