ポリエン系抗真菌薬ゴロ覚え方作用機序
ナイスタチンは2018年に販売中止済みです。
ポリエン系抗真菌薬の基本的なゴロと薬剤名
ポリエン系抗真菌薬を覚えるゴロとして、「ホテルでナイスタッチ、膜すてろ」が医療従事者の間で広く使われています。このゴロは各薬剤名と作用機序を同時に覚えられる優れものです。
参考)[薬理ゴロ]抗真菌薬|薬を学ぶ 〜薬剤師国家試験から薬局実務…
「ホテル」はアムホテリシンBを示しています。
商品名はファンギゾンです。
「ナイスタッチ」はナイスタチンを表します。ただしナイスタチンは2018年に販売中止となっており、現在は使用できません。wikipedia+1
「膜すてろ」は作用機序を示しており、真菌細胞膜のエルゴステロールに結合して膜障害を起こすことを意味します。つまり一つのゴロで薬剤名と作用点を一緒に記憶できるのです。
別のゴロとして「アムロの部下ナイスな幕切れ」もあります。「アムロの部」でアムホテリシンB、「下」で低カリウム血症という副作用、「ナイス」でナイスタチン、「幕切れ」で細胞膜障害を覚えられます。こちらは副作用まで含まれているのがポイントですね。
さらに「ナイストリアム」というゴロもあり、ナイスタチン・トリコマイシン・アムホテリシンBの3つをまとめて覚える方法です。トリコマイシンもポリエン系に分類されますが、臨床での使用頻度は低めです。
ポリエン系の作用機序と抗菌スペクトラム
ポリエン系抗真菌薬は真菌の細胞膜に存在するエルゴステロールに結合し、膜透過性を変化させることで殺菌効果を発揮します。人間の細胞膜にはコレステロールがありますが、真菌にはエルゴステロールがあるため、この違いを利用しているわけです。chemicalbook+1
エルゴステロールと結合すると細胞膜に穴が開き、カリウムイオンなどの細胞内物質が漏出します。これにより真菌細胞は代謝を維持できなくなり死滅します。
つまり細胞膜を物理的に破壊する機序です。
参考)ポリエン薬
抗真菌スペクトルは広く、カンジダ属、クリプトコッカス属、アスペルギルス属など多くの真菌に有効です。カンジダに対する最小発育阻止濃度は0.04〜1.56μg/mLと非常に低い値です。kokushi+1
ただし細菌、リケッチア、ウイルスにはほとんど効果がありません。
あくまで真菌専門の薬剤ということですね。
参考)https://www.suzukicl.com/fungizone.pdf
エルゴステロールは人間のコレステロールと構造が似ているため、選択毒性が完全ではなく副作用も出やすいのが弱点です。
参考)http://kokushi.space/?p=701
アムホテリシンBの臨床使用と副作用対策
アムホテリシンBは深在性真菌症の治療で長らく中心的役割を果たしてきた薬剤です。カンジダ血症、クリプトコッカス髄膜炎、アスペルギルス症など重篤な全身性真菌感染症に使用されます。
参考)抗真菌薬 – 13. 感染性疾患 – MSDマニュアル プロ…
従来製剤の最大の問題は腎毒性で、腎不全のリスクが高いことです。その他に急性輸注反応、低カリウム血症、低マグネシウム血症、貧血なども報告されています。従来製剤(d-AMPH-B)では発熱が43.6%の患者に発現したというデータもあります。jstage.jst+1
腎毒性を軽減するため、リポソーム製剤(アムビゾーム)が開発されました。脂質製剤では輸注反応や腎不全の頻度が従来製剤より低くなっています。リポソーム製剤での発熱発現率は16.9%と、従来製剤の約3分の1に減少しました。ygken+2
投与中は腎機能とカリウム値のモニタリングが必須です。血中クレアチニン増加やBUN増加が5%以上の頻度で認められるため、定期的な採血チェックが重要になります。japic.or+1
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)や中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)といった重大な副作用も報告されているため、発疹などの皮膚症状には注意が必要です。
ナイスタチン販売中止の経緯と代替薬
ナイスタチンは1950年にHazenとBrownにより発見されたポリエンマクロライド系抗生物質で、1972年に日本で発売されました。消化管からほとんど吸収されないため、消化管カンジダ症に特化して使用されていました。ygken+1
がん化学療法施行中の患者など真菌感染症リスクの高い患者への予防投与が主な用途でした。しかしフルコナゾールの方が効果が高いことが臨床試験で示され、使用量が減少していきました。
参考)https://www.ygken.com/2017/08/50.html
2017年に明治製菓ファルマが販売中止を発表し、2018年に日本市場から姿を消しました。はっきりとした理由は公表されていませんが、使用量減少が一因と考えられています。wikipedia+1
代替薬としては、アムホテリシンBのリポソーム製剤や、経口アゾール系薬のフルコナゾールが選択肢となります。消化管吸収されないという特性を活かした局所治療が必要な場合は、アムホテリシンBの経口製剤(ファンギゾンシロップ)が使用可能です。suzukicl+1
全身投与可能なナイスタチンのリポソーム製剤が将来開発される可能性も指摘されています。
ポリエン系と他の抗真菌薬の使い分け判断
現在の臨床では、アムホテリシンBは強力ですが毒性も強いため、新規のトリアゾール系やキャンディン系薬剤が第1選択薬となるケースが増えています。
つまりポリエン系は切り札的な位置づけです。
アムホテリシンBが選ばれるのは、他の抗真菌薬が無効または不耐容の場合、広域スペクトラムが必要な重症例、ムーコルなどの接合菌感染症などです。接合菌にはアゾール系の多くが効かないため、ポリエン系が重要な選択肢になります。jsmm+1
フルシトシンとアムホテリシンBの併用療法は、クリプトコッカス髄膜炎や播種性カンジダ症で推奨されます。単剤よりも相乗効果が期待でき、フルシトシンの耐性発現も抑制できます。
造血幹細胞移植患者や好中球減少が予測される血液悪性腫瘍患者では、深在性真菌症の予防としてアゾール系(特にフルコナゾール)が使用されることが多いです。消化管カンジダ症の予防目的であれば、かつてはナイスタチンが使われていましたが、現在はフルコナゾールが主流です。doctor-vision+1
軽症から中等症のカンジダ血症にはキャンディン系(ミカファンギン、カスポファンギンなど)が第1選択となり、腎毒性のリスクが低い点が評価されています。
<参考リンク>
ポリエン系抗真菌薬の詳細な薬理作用と臨床データについては以下が参考になります。
抗真菌薬全般の使い分けと適正使用については以下のガイドが有用です。