ポリエチレングリコール製剤一覧と医薬品添加物の特性

ポリエチレングリコール製剤一覧と医薬品添加物としての役割

ポリエチレングリコール製剤の基本情報
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化学構造

一般式 HO-(CH2-CH2-O)n-H で表される高分子化合物

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分子量範囲

約200から20,000以上まで多様な製品が存在

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医薬品での呼称

医薬品用途では「マクロゴール」として区別される

ポリエチレングリコール(PEG)は、エチレングリコールが重合した構造を持つ高分子化合物です。一般式は HO-(CH2-CH2-O)n-H で表され、分子量によって液状、ペースト状、固体状と様々な性状を示します。日本では1960年に初めて製品化され、現在では医薬品添加物として幅広く使用されています。

医薬品分野では「マクロゴール」という名称で区別されることが多く、その特徴として毒性が低いことが挙げられます。PEGは水・メタノール・ベンゼン・ジクロロメタンに可溶である一方、ジエチルエーテル・ヘキサンには不溶という性質を持っています。

また、PEGとポリエチレンオキシド(PEO)は基本的に同じ構造を持ちますが、分子量によって区別されます。一般的に分子量2万程度までのものをPEG、数万以上のものをPEOと呼びます。両者は物理的性質(融点・粘度など)が異なり用途も異なりますが、化学的性質はほぼ同じです。

ポリエチレングリコール製剤の分子量別特性と用途

ポリエチレングリコール製剤は分子量によって性質が大きく異なるため、用途も多岐にわたります。分子量別の特性と主な用途を以下に示します。

低分子量PEG(200~600)

  • 性状:液体
  • 特性:保湿性に富む
  • 医薬品用途:注射剤の溶解補助剤、軟膏基剤
  • 化粧品用途:保湿剤(歯磨き、洗顔フォーム、ヘアケア製品、ウエットティッシュなど)
  • その他:液体洗剤のつまり防止剤(PEG-200、PEG-300)

中分子量PEG(1000~2000)

  • 性状:ペースト状~固体
  • 特性:水溶性、潤滑性
  • 医薬品用途:坐剤基剤、軟膏基剤
  • 繊維関連:染色性改良剤
  • その他:ボールペン用インクの粘度調整剤(字切れ防止)

高分子量PEG(4000~6000以上)

  • 性状:固体(フレーク状)
  • 特性:バインダー効果が大きく、水溶性
  • 医薬品用途:錠剤結合剤、コーティング剤
  • 化粧品用途:固形おしろいや洗剤用酵素のバインダー
  • その他:粉末洗剤のケーキング防止剤、固形石けんのひび割れ防止剤、防塵剤、帯電防止剤

PEG-4000は融点約55℃のフレーク状で、水やエタノールに溶解します。この分子量帯のPEGは医薬品の錠剤製造において結合剤として重要な役割を果たしています。

ポリエチレングリコール製剤のバイオ医薬品への応用とPEG化技術

バイオ医薬品分野では、タンパク質やペプチドなどの生体高分子にPEG構造を付加する「PEG化(ペグ化/pegylation)」技術が広く活用されています。PEG化には以下のような利点があります。

  1. 血中滞留時間の延長:PEG化によりタンパク質の分子サイズが増大し、腎クリアランスが低下するため、血中半減期が延長します。
  2. 免疫原性の低減:タンパク質表面をPEGで覆うことで、免疫系による認識を回避し、抗体産生を抑制できます。
  3. 安定性の向上:タンパク質の凝集や変性を抑制し、熱安定性や pH 安定性が向上します。
  4. 溶解性の改善:疎水性の高いタンパク質やペプチドの水溶性が向上します。

PEG化技術には様々な修飾方法があり、目的に応じて最適な官能基修飾PEGが選択されます。例えば、mPEG-MAL(マレイミド基)はチオール基との選択的反応に、mPEG-SCM(スクシンイミジルカルボキシメチルエステル)やmPEG-SG(スクシンイミジルグルタレートエステル)はアミノ基との反応に用いられます。

また、mPEG-SH(チオール基)は、分子量1kから40kまで様々なサイズが市販されており、金ナノ粒子などの表面修飾に利用されています。

PEG化医薬品の例としては、インターフェロン、G-CSF、アデノシンデアミナーゼ、L-アスパラギナーゼなどがあり、臨床で広く使用されています。

ポリエチレングリコール製剤の医薬品添加物としての機能と選択基準

医薬品添加物としてのポリエチレングリコール製剤は、様々な機能を持ち、剤形や目的に応じて選択されます。主な機能と選択基準は以下の通りです。

基剤としての機能

  • 軟膏基剤:PEG-300~600と高分子量PEGを組み合わせることで、親水性軟膏基剤を調製できます。
  • 坐剤基剤:PEG-1000と高分子量PEGを組み合わせることで、融点を調整した坐剤基剤を調製できます。
  • クリーム基剤:低~中分子量PEGがクリーム用基剤として使用されます。

溶解補助剤としての機能

  • 難水溶性薬物の可溶化:PEG-400などの液状PEGは、難水溶性薬物の溶解補助剤として使用されます。
  • 共溶媒:水とエタノールなどの混合溶媒系において、PEGは共溶媒として機能します。

結合剤・コーティング剤としての機能

  • 錠剤結合剤:PEG-4000~6000は、直接打錠法や湿式造粒法における結合剤として使用されます。
  • フィルムコーティング:PEG-6000などは、フィルムコーティング剤の可塑剤として使用されます。

選択基準

  1. 目的とする機能(基剤、溶解補助、結合剤など)
  2. 剤形(液剤、軟膏、錠剤など)
  3. 配合薬物との相互作用
  4. 必要な物性(融点、粘度、溶解性など)
  5. 安全性プロファイル

医薬品添加物としてのPEGは、日本薬局方(JP)、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)などに収載されており、品質規格が厳密に定められています。

ポリエチレングリコール製剤の抗PEG抗体問題と最新の代替材料研究

近年、PEG化医薬品の臨床使用において、抗PEG抗体の産生が問題となっています。抗PEG抗体はPEGを特異的に認識して結合する抗体で、PEG化製剤による治療を受けたことがなくても、PEGを含む日用品(化粧品、洗剤など)の使用によって獲得される可能性があります。

抗PEG抗体の存在は、以下のような問題を引き起こす可能性があります。

  1. 血中クリアランスの促進(薬物の血中滞留時間の短縮)
  2. 薬物有効性の低下
  3. 過敏症反応
  4. 場合によっては生命を脅かすような副作用

これらの問題に対応するため、PEGに代わる新たな材料の研究が進められています。主なPEG代替材料には以下のようなものがあります。

合成高分子系代替材料

  • ポリオキサゾリン(POZ/POX):調整可能な特性、生体適合性、より良い腎クリアランス、生分解性を持つが、合成難易度が高く高コスト
  • ポリN-ビニルピロリドン(PVP):UV・超音波照射下でPEGより分解しにくく、化粧品・医薬品・食品で広く使用されているが、高分子量体の生体適合性に課題
  • ポリグリセロール(PG):血液粘度を上昇させず、血液循環時間が改善され、繰り返し暴露してもABC(accelerated blood clearance)現象を誘発しないが、非生分解性
  • ポリアクリルアミド:タンパク質防汚性と生体適合性を持つが、非生分解性でモノマーに神経毒性あり

天然高分子系代替材料

  • ヘパリン、グリコサミノグリカン、ポリシアル酸、ヒアルロン酸などの多糖類
  • エラスチン様タンパク質、血清アルブミン、CD47などのタンパク質
  • ポリアミノ酸:血液循環性に優れ、生分解性があり、臨床試験中の候補物質もある

双性イオン系代替材料

  • カルボキシベタイン、スルホベタイン、ホスホベタインベースのポリマー:カスタマイズ性、低コスト、安定性、防汚性に優れるが、一部のポリマー合成が難しい

これらの代替材料は、PEGと同等の遮蔽効果を持ちながら、免疫反応を誘発しにくい特性を持つことが期待されています。特にポリオキサゾリンやポリアミノ酸系材料は、バイオ医薬品への応用研究が進んでいます。

ポリエチレングリコール製剤の化粧品・トイレタリー分野での応用展開

ポリエチレングリコール製剤は医薬品分野だけでなく、化粧品・トイレタリー分野でも幅広く活用されています。分子量別の主な用途は以下の通りです。

低分子量PEGの用途

  • 保湿剤:PEG-300、PEG-400、PEG-600などは保湿性に富むため、歯磨き、洗顔フォーム、ヘアケア製品、ウエットティッシュなどの保湿剤として使用されます。
  • クリーム用基剤:低分子量PEGはクリーム製品の基剤として使用されます。
  • 可溶化剤:香料や油溶性成分の可溶化に利用されます。

中分子量PEGの用途

  • クリーム用基剤:中分子量PEGもクリーム製品の基剤として使用されます。
  • 乳化安定剤:O/W型エマルションの安定化に寄与します。

高分子量PEGの用途

  • バインダー:PEG-4000SやPEG-6000Sなど分子量の大きいPEGは、固形おしろいや洗剤用酵素のバインダーとして使用されます。
  • 防塵剤:PEG-6000Sは、パウダー化粧品や粉末洗剤などの粉末製品の防塵剤として使用されます。
  • 帯電防止剤:PEG-2000、PEG-4000S、PEG-6000Sは、ポリエステル繊維の帯電防止剤として使用されます。

また、PEGを基材とした様々な界面活性剤も化粧品・トイレタリー分野で重要な役割を果たしています。PEG両末端の水酸基を利用して各種の界面活性剤が合成され、特に高級脂肪酸とのエステル化物は、乳化剤や分散剤および洗浄剤などとして広く使用されています。

化粧品表示名称としては、「PEG-4」「PEG-6」「PEG-8」などの形式で表記され、数字は平均エチレンオキシド付加モル数を示します。日本の化粧品成分表示では外原規2006に準拠した表記が用いられています。

PEGは化粧品・トイレタリー製品において、保湿性、水溶性、生体適合性などの特性を活かした多機能な原料として、今後も広く使用されていくと考えられます。

ただし、近年は抗PEG抗体の問題や環境への配慮から、一部の化粧品メーカーではPEGフリー製品も増えてきています。PEGに代わる材料として、ポリグリセリン誘導体やポリグルコシド系界面活性剤などの使用も増加傾向にあります。

PEGの詳細な用途と特性については三洋化成の製品情報が参考になります

医療従事者としては、PEGを含む製剤の特性を理解し、患者の既往歴(特にアレルギー歴)を考慮した上で、適切な製剤選択を行うことが重要です。また、PEG代替材料の開発動向にも注目し、最新の知見を臨床応用に活かしていくことが求められます。