ピロリ除菌薬の効果と適切な使用方法

ピロリ除菌薬の効果と使用方法

ピロリ除菌薬の基本知識
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3剤併用療法

胃酸抑制薬1種類と抗生物質2種類を組み合わせた標準治療

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段階的治療

一次除菌→二次除菌→三次除菌と段階的にアプローチ

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薬剤耐性の課題

クラリスロマイシン耐性菌の増加により成功率に影響

ピロリ除菌薬の基本的な組み合わせ

ピロリ菌除菌治療では、胃酸分泌抑制薬1種類と2種類の抗生物質を組み合わせた3剤併用療法が標準的な治療法となっています。胃酸を抑えることで抗生物質の効果を高め、ピロリ菌が生息しやすい胃内環境を中性に近づけることが重要です。
参考)https://kumamoto.hosp.go.jp/files/000208320.pdf
一次除菌では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)またはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)に、アモキシシリンペニシリン系)とクラリスロマイシン(マクロライド系)を組み合わせます。これらの薬剤を1日2回、7日間継続して服用することで、約70~90%の患者が除菌に成功するとされています。
参考)ピロリ菌除菌の副作用が心配な方へ。症状と期間、対処法を医師が…
治療に使用される主な薬剤には、胃酸抑制薬としてタケキャブ(ボノプラザン)、ランソプラゾール、オメプラゾールなどがあり、特にタケキャブは強力な酸分泌抑制効果により除菌成功率の向上に寄与しています。
参考)ピロリ菌について④  〜治療編(前編)〜

ピロリ除菌の段階的治療アプローチ

ピロリ菌除菌治療は段階的に行われ、一次除菌で失敗した場合は薬剤を変更して二次除菌を実施します。一次除菌の成功率は約75~90%ですが、使用する胃酸抑制薬により差が生じます。
参考)ピロリ菌の検査・除菌(三次除菌のみ)なら堺市北区の末吉内科へ
二次除菌では、クラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更し、プロトンポンプ阻害薬とアモキシシリンとの3剤併用を7日間行います。二次除菌の成功率は約90%以上と報告されており、一次除菌と合わせると全体の95%以上の患者が除菌に成功します。
参考)ピロリ菌の除菌治療|仙台消化器・内視鏡内科はじめのクリニック
保険適用外となりますが、二次除菌も失敗した場合には三次除菌が検討されます。三次除菌では、シタフロキサシンニューキノロン系)を用いた治療が行われ、約70~90%の成功率が期待できます。
参考)ピロリ菌の3次除菌|仙台消化器・内視鏡内科はじめのクリニック

ピロリ除菌薬の副作用と対処法

ピロリ除菌治療では、約10~30%の患者に副作用が現れることがあります。最も一般的な副作用は軟便・下痢で、約10~30%の患者が経験します。これは抗菌薬による腸管刺激作用や腸内細菌バランスの変化が原因とされています。
参考)除菌療法の副作用
その他の副作用として、味覚異常や口内炎(5~15%)、皮疹(2~5%)、腹痛、頭痛、肝機能障害などが報告されています。これらの症状は多くの場合一時的であり、治療終了後2~3日で改善することが多いです。
参考)ピロリ除菌治療の副作用|メディカルガーデン新浦安 消化器内視…
重篤な副作用としてアナフィラキシーが稀に発生する可能性があるため、治療中に異常な症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。副作用軽減のため、整腸剤の併用や十分な水分摂取が推奨されています。
参考)金町・松戸でピロリ菌治療なら医療法人社団ヴィナシス金町内科ク…

ピロリ除菌薬の薬剤耐性問題

ピロリ菌除菌治療において、薬剤耐性は重要な課題となっています。特にクラリスロマイシンに対する耐性率は年々上昇しており、2000年の7.0%から2010年には31.0%まで急激に増加しました。
クラリスロマイシン耐性菌の場合、一次除菌の成功率は40%程度まで低下することが報告されています。これは風邪などの上気道感染症治療でクラリスロマイシンが頻繁に使用されることで、胃内のピロリ菌も耐性を獲得するためと考えられています。
参考)https://www.nobuokakai.ecnet.jp/nakagawa100.pdf
この問題に対する対策として、除菌治療前にピロリ菌の薬剤感受性検査を行い、耐性菌の場合は最初から二次除菌薬剤の使用を検討する医療機関も増えています。また、タケキャブ(ボノプラザン)の使用により、クラリスロマイシン耐性菌に対しても除菌率の改善が見られています。
参考)あなたのピロリ菌にその抗生剤は効きますか?:ピロリ菌のテーラ…

ピロリ除菌薬による胃がん予防効果

ピロリ菌除菌治療は、胃がんの発症リスクを大幅に低減する重要な予防手段として確立されています。複数のメタ解析により、ピロリ菌陽性者への除菌療法により胃がん発症リスクが約3~4割低下することが明らかになっています。
参考)ピロリ菌除菌による胃がん予防効果のエビデンスは?
健康なピロリ感染者を対象とした8件のランダム化比較試験の統合解析では、除菌群の胃がんリスクの相対リスクが0.64(95%信頼区間0.48-0.84)と有意に低下しました。早期胃がん内視鏡切除後の患者では、除菌により新たな胃がん発生が約65%減少したという報告もあります。
特に若年層での除菌治療は予防効果が最大化され、前がん病変が進行する前に治療を行うことの重要性が強調されています。長期的な観察研究では、除菌効果は10年以上持続し、胃がん罹患率・死亡率の有意な減少が確認されています。
参考)ピロリ菌の除菌と胃がんの予防効果|とよしま内視鏡クリニック|…