ピペラシリンの副作用と安全な使用法について

ピペラシリンの副作用と注意点

ピペラシリンの主な副作用
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消化器系副作用

下痢、悪心、嘔吐など、最も頻繁に見られる副作用

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重篤な副作用

アナフィラキシー、偽膜性大腸炎、間質性肺炎など生命に関わる症状

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血液系副作用

好中球減少、血小板減少、溶血性貧血などの血液学的異常

ピペラシリンの一般的な副作用症状

ピペラシリンの副作用発現頻度は43.1%(44/102例)と報告されており、医療従事者が把握しておくべき重要な情報です 。最も多い副作用は下痢15.7%(16/102例)で、その他に肝機能異常6.9%(7/102例)、γ-GTP増加5.9%(6/102例)が確認されています 。

参考)ピペラシリンNa注射用2g「サワイ」の効能・副作用|ケアネッ…

消化器系の副作用では、悪心・嘔吐、下痢、食欲不振、腹痛が代表的な症状として挙げられます 。これらの症状は腸内細菌叢の変化によって引き起こされ、患者のQOL(生活の質)に大きく影響する可能性があります 。

参考)ピペラシリンナトリウム(ペントシリン) href=”https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/piperacillin-sodium/” target=”_blank” rel=”noopener”>https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/piperacillin-sodium/amp;#8211; 呼吸…

過敏症については、発熱、発疹、そう痒などが0.1~1.0%未満の頻度で見られ、より重篤な症状として浮腫、蕁麻疹、リンパ節腫脹が0.1%未満の頻度で報告されています 。血液系では顆粒球減少、好酸球増多が0.1~1.0%未満、血小板減少、貧血が0.1%未満の頻度で発現します 。

参考)https://med.sawai.co.jp/file/pr1_220.pdf

ピペラシリンによる重篤な副作用リスク

ピペラシリンでは、まれながら生命に関わる重篤な副作用が発現する可能性があり、医療従事者は早期発見と適切な対応が求められます。アナフィラキシーショックは、皮疹、蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下を伴い、直ちに投与を中止し救急処置が必要です 。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11576437/

偽膜性大腸炎は抗菌薬関連の重要な副作用で、腹痛、頻回の下痢があらわれた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行う必要があります 。この副作用は、クロストリジウム・ディフィシル感染症によって引き起こされることが多く、抗菌薬使用後1-2週間で症状が現れることが一般的です 。

参考)https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1g07.pdf

間質性肺炎やPIE症候群も重篤な副作用として知られており、発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常、好酸球増多等の症状が見られる場合があります 。これらの症状が認められた際は、投与を中止し副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置が求められます 。

参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/kouseibussitu/JY-00700.pdf

ピペラシリンの血液系副作用と監視項目

ピペラシリンの血液系副作用は、定期的な血液検査によるモニタリングが重要です。汎血球減少症無顆粒球症、血小板減少、溶血性貧血が発現する可能性があり、これらの異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うことが必要です 。
溶血性貧血については、2024年の症例報告で重度の薬剤性免疫性溶血性貧血がピペラシリンによって引き起こされた例が報告されています 。この症例では、発生頻度は0.01%と極めて稀ながら、重篤な症状を呈することが確認されています 。

参考)https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2024.1478545/full

好中球減少症は感染リスクの上昇、血小板減少症は出血傾向の増加、貧血は倦怠感やめまいといった症状を引き起こし、患者の免疫機能や止血機能に重大な影響を与える可能性があります 。医療従事者は白血球数、血小板数、ヘモグロビン値の定期的な測定により、これらの副作用を早期に発見することが重要です 。

ピペラシリンによるビタミンK欠乏と出血傾向

ピペラシリンの使用により、ビタミンK欠乏による出血傾向が発現することがあり、特に高齢者では注意が必要です 。ビタミンK欠乏症状としては低プロトロンビン血症、出血傾向等が知られており、抗凝固薬との併用時には血液凝固抑制作用を増強するリスクがあります 。

参考)https://vet.cygni.co.jp/include_html/drug_pdf/kouseibussitu/JY-00699.pdf

この副作用の機序は、抗菌薬による腸内細菌叢の変化によってビタミンK産生菌が減少し、さらに食事摂取不良が重なることで体内のビタミンK不足が生じることです 。特に経口摂取不良の患者や長期投与を受ける患者では、定期的な凝固検査の実施やビタミンKの予防投与も検討すべきです 。

参考)NMTT基を有するセフェム系抗生物質の使用後に発生した血液凝…

セフェム系抗生物質に含まれるN-methyl tetrazole thiol基(NMTT基)とは異なり、ピペラシリンでは主に腸内細菌叢の変化とビタミンK産生抑制が出血傾向の原因となります 。ワルファリン等の抗凝血薬との併用時には、血中濃度モニタリングを行い、出血傾向等に特別な注意を払う必要があります 。

ピペラシリンの肝機能障害と中枢神経系への影響

ピペラシリンによる肝機能障害は0.1%未満の頻度で発現し、AST、ALT、Al-P、LDHの上昇や黄疸が観察されることがあります 。これらの異常が認められた場合には、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し適切な処置を行うことが重要です 。
腎不全患者への大量投与では、痙攣等の神経症状が現れる可能性があり、中枢神経系への影響も考慮する必要があります 。横紋筋融解症も稀な副作用として報告されており、筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇が見られた場合には投与を中止し、適切な処置を行うことが求められます 。
菌交代症として口内炎やカンジダ症の発現、ビタミンB群欠乏症状(舌炎、口内炎、食欲不振、神経炎等)も報告されています 。その他の症状として頭痛、筋肉痛、しびれ等も認められており、患者の全身状態を総合的に評価することが大切です 。