ペプロマイシン添付文書の重要事項
ペプロマイシンとブレオマイシンは別の投与歴でも累積量を合算して計算する
ペプロマイシン添付文書の基本情報と適応
ペプロマイシン硫酸塩(商品名:ペプレオ注射用)は、抗腫瘍性抗生物質に分類される抗がん剤であり、DNA合成阻害作用とDNA鎖切断作用により抗腫瘍効果を発揮します。添付文書には、その用法用量から重篤な副作用まで、医療従事者が投与判断を行う上で必要な情報が詳細に記載されています。
この薬剤の適応症は明確に定められています。皮膚癌、頭頸部悪性腫瘍(上顎癌、舌癌・その他の口腔癌、咽頭癌、喉頭癌)、肺癌(肺扁平上皮癌)、前立腺癌、悪性リンパ腫が対象となります。国内臨床試験での有効率は、皮膚癌61.4%、頭頸部悪性腫瘍51.2%、悪性リンパ腫62.0%と比較的高い数値を示しています。
作用機序はブレオマイシンと同等です。
ペプロマイシンは、HeLaS3細胞の増殖阻害やラット腹水肝癌AH66細胞のDNA合成阻害、単離DNA鎖の切断作用が認められており、in vivoではマウスエーリッヒ癌や化学発癌ラット胃癌などに対して抗腫瘍効果を発揮します。この薬理作用の強さはブレオマイシンと同等であることが確認されています。
臨床上の大きな特徴は、血液毒性が少ないことです。骨髄抑制が軽度であるため、他の抗がん剤と併用しやすく、多剤併用化学療法のレジメンに組み込まれることが多い薬剤となっています。
添付文書を確認する際の参考として、日本化薬株式会社が提供するインタビューフォームや適正使用ガイドが役立ちます。
日本化薬株式会社の適正使用ガイドには、間質性肺炎の早期発見方法や投与量管理の詳細が記載されています
ペプロマイシンの用法用量と投与経路
添付文書に記載されている用法用量は、投与経路によって細かく規定されています。静脈内注射の場合、ペプロマイシン硫酸塩として5~10mg(力価)を生理食塩液またはブドウ糖液等の適当な静脈用注射液約5~20mLに溶解し、緩徐に静注します。週2~3回投与が標準的な投与スケジュールとなります。
筋肉内注射では、ペプロマイシン硫酸塩として5~10mg(力価)を注射用水または生理食塩液約1~2mLに溶解して投与します。動脈内注射の場合は、ペプロマイシン硫酸塩として5~15mg(力価)を生理食塩液等の適当な動脈用注射液約5~20mLに溶解し、緩徐に注射します。
投与間隔は週2回が原則です。
症状に応じて1日1回(連日)ないし1週間1回に適宜増減することができますが、患者の状態や併用する他剤との兼ね合いを慎重に判断する必要があります。総投与量については、腫瘍の消失を目標として設定されますが、間質性肺炎などの重篤な肺副作用の発現を避けるため、慎重な管理が求められます。
投与速度も重要なポイントとなります。急速投与はショックや血圧低下のリスクを高めるため、添付文書では「緩徐に」投与することが明記されています。特に初回投与時には、アナフィラキシーショックの可能性も考慮し、十分な観察体制のもとで投与を行う必要があります。
溶解後の安定性についても注意が必要です。調製後はできるだけ速やかに使用し、長時間の放置は避けるべきです。特に光に対する安定性が低いため、遮光保存が推奨される場合があります。
投与経路の選択は、患者の状態や治療目的によって判断します。全身投与が必要な場合は静脈内注射、局所効果を期待する場合は動脈内注射が選択されることがあります。
ペプロマイシンとブレオマイシンの累積投与量管理
添付文書において特に注意すべき点は、ペプロマイシンとブレオマイシンの累積投与量を合算して管理する必要があることです。「ペプロマイシンを投与された患者に対するブレオマイシンの投与量は、原則として投与されたペプロマイシン量とブレオマイシン量の和でもって総投与量とすること」と明記されています。
この規定は逆も同様です。ブレオマイシンを投与された患者に対してペプロマイシンを投与する場合も、両薬剤の投与量を合算して総投与量として管理しなければなりません。両薬剤は作用機序や副作用プロファイルが類似しているため、累積毒性、特に肺毒性が加算されるリスクがあるためです。
実際の臨床現場では、電子カルテのアラート機能などを活用して管理する施設も増えています。過去にどちらかの薬剤の投与歴がある患者では、その投与量を確認し、残りの許容投与量を計算してから投与計画を立てる必要があります。
間質性肺炎の発現率は投与量と相関します。
再評価時の結果では、ブレオマイシンにおいて総投与量150mg(力価)以下で6.5%、総投与量151~300mg(力価)で10.2%、総投与量301mg(力価)以上で18.8%と、総投与量の増加に伴って肺症状の発現率が上昇することが確認されています。ペプロマイシンでも同様の傾向が予想されるため、累積投与量の厳格な管理が患者の安全を守る上で極めて重要です。
胚細胞腫瘍に対するBEP療法など、確立された標準的な治療法においては、総投与量が300mgを超える場合があります。このような場合でも、添付文書では360mg(力価)を超えないことが求められています。
複数の医療機関で治療を受けている患者の場合、他院での投与歴の確認も欠かせません。お薬手帳や診療情報提供書を通じて、過去の投与量を正確に把握し、累積投与量を計算する必要があります。
ペプロマイシンの重篤な副作用と肺毒性管理
添付文書の「警告」欄には、間質性肺炎・肺線維症等の重篤な肺症状を起こすことがあり、ときに致命的な経過をたどることがあると明記されています。この肺毒性は、ペプロマイシンの最も重要な副作用であり、投与前から投与中、投与終了後まで継続的な監視が必要です。
肺毒性の発現には複数のリスク因子が存在します。60歳以上の高齢者や肺に基礎疾患を有する患者では、総投与量150mg(力価)以下でも発現頻度が高いことが知られています。年齢別の発現率を見ると、50歳未満4%、50歳代7%、60歳代10%、70歳以上19%と、年齢が上がるほど発現率が上昇します。
高齢者では低用量でも肺障害のリスクが高まります。
投与前の評価が極めて重要です。重篤な肺機能障害、胸部レントゲン写真上びまん性の線維化病変及び著明な肺気腫を有する患者には投与禁忌となっています。また、投与にあたっては、発熱、咳、労作性呼吸困難等の臨床症状の観察を十分に行い、胸部レントゲン検査異常及び捻髪音(ラ音)の有無を検討する必要があります。
可能な施設においては肺胞気・動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)の測定が推奨されます。投与中は2週間に1回程度の胸部X線撮影を行い、異常陰影(多くは肋膜直下の下肺野に始まる)が出現した場合は投与を中止します。肺機能検査では、肺活量(VC)が投与前値の30~40%以上の低下、または1秒量(FEV1.0)が投与前値の30~40%以上の低下をみたときは投与を中止します。
一酸化炭素拡散能(DLco)については投与前値の15%以上の低下をみたときは同様の処置を行います。早期発見により重症化を防ぐことができるケースもあるため、これらの検査を定期的に実施することが患者の安全管理において不可欠です。
投与終了後も約2ヵ月間は患者を医師の監督下におき、肺症状の出現に注意を払う必要があります。遅発性の肺障害も報告されているため、長期的なフォローアップ体制の構築が重要です。
ペプロマイシンの禁忌事項と透析患者への注意
添付文書の禁忌欄には、投与してはならない患者の条件が明確に記載されています。まず、本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者は絶対禁忌です。また、重篤な肺機能障害、胸部レントゲン写真上びまん性の線維化病変及び著明な肺気腫を有する患者も投与禁忌となっています。
特に注目すべきは透析患者への禁忌です。
透析を必要とする患者(腹膜透析を含む)では、腎臓における本剤の排泄が減少するため、投与が禁忌とされています。ペプロマイシンは主に腎排泄型の薬剤であり、腎機能が高度に低下している患者では血中濃度が異常に上昇し、重篤な肺症状を起こすリスクが著しく高まります。
腎機能障害のある患者では慎重投与が必要ですが、透析患者では禁忌という明確な線引きがなされています。クレアチニンクリアランス(CCr)の値を参考に、腎機能の程度を評価し、投与の可否を判断する必要があります。軽度から中等度の腎機能障害患者においても、投与量の調整や投与間隔の延長を検討すべきです。
他の禁忌事項として、本剤の投与により重篤な肺症状を呈した既往のある患者も挙げられます。一度重篤な肺障害を経験した患者では、再投与により同様またはそれ以上の重篤な反応を示す可能性が高いため、代替治療を検討する必要があります。
骨髄機能抑制のある患者には慎重投与となっています。ペプロマイシンは血液毒性が比較的軽度とされますが、すでに骨髄機能が低下している患者では、さらなる悪化を招く可能性があります。投与前の血液検査で白血球数、血小板数、ヘモグロビン値を確認し、投与の可否を判断します。
心疾患のある患者も注意が必要です。重篤な心疾患を有する患者は投与禁忌ではありませんが、慎重投与の対象となります。投与時の血圧変動やショック症状に対する備えとして、循環器系のモニタリング体制を整えておくことが望ましいです。
ペプロマイシンの販売状況と代替薬の検討
医療現場において把握しておくべき重要な情報として、ペプレオ注射用の販売中止があります。一部の医療機関の情報によると、2025年3月をもって販売中止となる予定とされています。この情報は医療従事者にとって治療計画を立てる上で極めて重要です。
販売中止後の代替薬として検討されるのがブレオマイシンです。ブレオ注射用(ブレオマイシン塩酸塩)は、ペプロマイシンと同様の作用機序を持つ抗腫瘍性抗生物質であり、適応症も類似しています。両薬剤の累積投与量を合算する必要があることからも分かるように、薬理学的特性は非常に近いものです。
切り替えの際の注意点があります。
ブレオマイシンの用法用量はペプロマイシンとは若干異なります。静脈内注射の場合、ブレオマイシン塩酸塩として15mg~30mg(力価)を生理食塩液または、ブドウ糖液等の適当な静脈用注射液約5~20mLに溶解し、緩徐に静注します。1回投与量がペプロマイシンより多い設定となっているため、投与スケジュールの調整が必要です。
すでにペプロマイシンの投与を受けている患者をブレオマイシンに切り替える場合、これまでのペプロマイシン投与量を累積投与量として記録し、ブレオマイシンの残り許容投与量を計算する必要があります。例えば、ペプロマイシンを既に100mg投与している患者であれば、ブレオマイシンの投与は残り200mg(総投与量300mgを目標とする場合)までとなります。
患者への説明も重要です。薬剤が変更になることで、投与量や投与スケジュールが変わる可能性があること、副作用プロファイルは類似していること、肺機能のモニタリングは継続して必要であることなどを丁寧に説明し、理解を得ることが求められます。
在庫管理の観点からも、販売中止情報は早期に把握しておくべきです。現在ペプロマイシンを使用している施設では、在庫状況を確認し、計画的にブレオマイシンへの切り替えを進める必要があります。突然の在庫切れにより治療が中断されることのないよう、薬剤部門と連携した対応が不可欠です。
ブレオマイシン(ブレオ注射用)の添付文書情報は、KEGG MEDICUSで確認できます

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