パリノー結膜腺症候群 症状 原因 診断 治療

パリノー結膜腺症候群 症状 原因 診断 治療

パリノー結膜腺症候群の全体像
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症状と眼所見

片眼性の肉芽腫性・濾胞性結膜炎と同側リンパ節腫脹を中心に、視機能への影響や随伴症状を整理します。

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原因疾患と感染経路

猫ひっかき病を代表とする感染性疾患や結核・梅毒・サルコイドーシスなど、多彩な原因をマッピングします。

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診断と治療戦略

問診・眼科的評価・血清学的検査・画像診断の組み合わせと、原因別の薬物療法・経過観察のポイントをまとめます。

パリノー結膜腺症候群 症状と眼所見・リンパ節所見

パリノー結膜腺症候群(Parinaud oculoglandular syndrome, oculoglandular syndrome)は、一側性の肉芽腫濾胞性結膜炎に同側の所属リンパ節腫脹を合併する臨床像として定義されます。

典型的には、片眼の結膜充血・ムチン性〜粘膿性眼脂・結膜乳頭や肉芽腫様隆起に加え、耳前・耳後・顎下・頚部などの圧痛を伴うリンパ節腫大が出現し、発熱や不定愁訴を伴うこともあります。

眼所見としては、上眼瞼・下眼瞼結膜に肉芽腫様結節や濾胞性変化がみられ、時に結膜出血や小潰瘍を伴い、結膜囊内の炎症は片側優位であることが多いとされています。

参考)猫ひっかき病について|眼科医ぐちょぽいのオンライン勉強会

所属リンパ節は、耳前・耳後・顎下・頚部などが多く、圧痛を伴い、経過中に化膿し瘻孔形成を来す例もあり、発熱・倦怠感・頭痛などの全身症状を伴う場合には血液検査や画像で全身検索が必要になります。

参考)Parinaud Oculoglandular Syndro…

また、猫ひっかき病を背景とする場合には、視神経網膜炎や限局性網脈絡膜炎など後眼部病変を合併し、亜急性視力低下や視野異常を呈することがあるため、視力・視野検査および眼底検査での評価が重要です。

若年例では頚部リンパ節、成人では腋窩・鼠径など遠位リンパ節を主体とする報告もあり、リンパ節診察は頭頚部に限らず全身を系統的に行うことが推奨されています。

参考)https://neurology-jp.org/Journal/public_pdf/052080576.pdf

パリノー結膜腺症候群 原因疾患(猫ひっかき病・チフス・結核・梅毒・サルコイドーシスなど)

パリノー結膜腺症候群の原因として最も頻度が高いのは、Bartonella henselaeによる猫ひっかき病(cat scratch disease, CSD)であり、結膜・眼瞼への接種病変と同側リンパ節炎を伴う典型的な眼症状の一つとされています。

猫ひっかき病では、猫の爪や口腔内のバルトネラが皮膚・結膜から侵入し、局所に丘疹や肉芽腫を形成した後、数日〜数週間で発熱、圧痛を伴うリンパ節腫大、眼病変としてParinaud眼腺症候群や視神経網膜炎などを来すことが知られています。

その他の原因として、フランシセラ・ツラレンシスによる野兎病(tularemia)、結核、梅毒、サルコイドーシス、ブルセラ症、ヨーネ菌感染、ウイルス性疾患など、多彩な感染性・炎症性・腫瘍性疾患が報告されています。

参考)https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2010/103071/201024006B/201024006B0004.pdf

これらは、結膜・角膜・眼瞼への直接接種や血行性播種により眼表面に肉芽腫性炎症を起こし、同側のリンパ節炎を合併することで、Parinaud型の眼腺症候群を形成すると考えられています。

ICD10対応標準病名リストでも「パリノー結膜腺症候群」は、結膜炎の一亜型として独立した病名コードが付されており、梅毒や結核といった全身感染症と並列して位置づけられています。

参考)https://www.kegg.jp/kegg-bin/get_htext?org_name=jp08410amp;query=amp;htext=jp08410_medis.kegamp;filedir=amp;highlight=amp;option=amp;extend=amp;uploadfile=amp;format=amp;wrap=amp;length=amp;open=amp;close=amp;hier=4

背景疾患として梅毒が疑われる場合には、梅毒血清反応(RPR/TPHAなど)やHIV検査などの性感染症スクリーニングが、結核が疑われる場合には胸部画像・IGRA・喀痰検査などが必要であり、原疾患の全身管理が眼症状改善の鍵となります。

パリノー結膜腺症候群 診断プロセス(問診・眼科所見・血清学的検査・画像)

診断の第一歩は問診であり、特に猫や犬など動物との接触歴・咬傷やひっかき傷の有無、野兎・齧歯類との接触、ダニ・ノミなどベクター暴露歴、海外渡航歴、性感染症リスク、結核接触歴などを系統的に聴取することが重要です。

眼科的診察では、片眼性の肉芽腫性・濾胞性結膜炎、眼瞼縁や結膜囊の肉芽腫様隆起、結膜出血や小潰瘍の有無、角膜上皮障害の有無を観察し、耳前・耳後・頚部・腋窩・鼠径などのリンパ節を触診して圧痛・可動性・皮膚との癒着の有無を確認します。

補助検査として、猫ひっかき病を疑う場合にはBartonella henselae血清抗体価(IFAやELISA)やPCR、野兎病ではフランシセラ抗体、結核や梅毒ではそれぞれの血清学的検査を組み合わせて行います。

リンパ節が高度に腫大し、悪性リンパ腫やその他腫瘍が鑑別に上がる場合には、超音波検査や造影CT、必要に応じてリンパ節生検が検討され、病理組織での肉芽腫性炎症やネコひっかき病に特徴的な星芒状微小膿瘍などの所見が診断の決め手になります。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kansenshogakuzasshi/advpub/0/advpub_e23026/_pdf/-char/ja

眼科的には、視力・視野検査、眼底検査、必要に応じて蛍光眼底造影やOCTを行い、視神経網膜炎や網脈絡膜炎など後眼部病変の有無を評価します。

全身病変を疑う場合には、胸部X線・CT、腹部エコー、MRIなどの画像診断を追加し、特に神経症状を伴う場合には、猫ひっかき病関連脳症を含む中枢神経合併症を念頭に、頭部MRIや髄液検査などを早期に実施することが推奨されています。

パリノー結膜腺症候群 治療方針と予後(バルトネラ・野兎病・肉芽腫性疾患への対応)

猫ひっかき病によるパリノー結膜腺症候群は、多くが自然軽快し予後良好とされますが、眼病変・神経病変を合併した症例では、早期の抗菌薬治療が視機能予後改善に寄与する可能性が報告されています。

Bartonella henselae感染に対しては、アジスロマイシン、ドキシサイクリン、リファンピシンなどが用いられ、免疫不全患者や重症例では複数薬剤併用や長期投与が検討されることがあり、全身状態や腎・肝機能を踏まえた用量調整が必要です。

野兎病に起因するOculoglandular syndromeでは、ストレプトマイシンやゲンタマイシンなどアミノグリコシド系、もしくはドキシサイクリン・フルオロキノロン系などが推奨されており、高熱・頭痛・咽頭痛・全身リンパ節腫脹といった全身症状への対応が重要となります。

結核性や梅毒性、サルコイドーシスに関連する場合には、それぞれ標準的な抗結核療法・ペニシリン系治療・全身ステロイドや免疫抑制薬などが基本となり、眼科治療は原疾患治療と連動させながら局所のステロイド点眼や散瞳薬など対症療法を行います。

眼科局所治療としては、肉芽腫性結膜炎に対してステロイド点眼や抗生物質点眼が用いられることがありますが、感染性肉芽腫の場合には局所ステロイドの単独使用が病勢を遷延させるリスクもあるため、原疾患の同定と全身治療の開始が優先されます。

予後は概ね良好で、結膜肉芽腫は数週間〜数カ月で消退し、リンパ節腫大も数カ月かけて縮小しますが、視神経網膜炎や網脈絡膜炎を合併した症例では視力障害や視野欠損が残存することがあり、早期診断・早期治療と定期的な視機能フォローが重要です。

パリノー結膜腺症候群 現場での見落としポイントと診療フロー構築(独自視点)

現場でしばしば問題となるのは、片眼性の結膜炎と耳前リンパ節腫脹を「単なるウイルス性結膜炎」として扱い、猫など動物の曝露歴や全身症状の評価を省略してしまうことです。

Parinaud結膜腺症候群は稀な病態とされるものの、猫ひっかき病や野兎病などの一表現型として考えると、実臨床では「見逃されている頻度」の方が高い可能性があり、問診テンプレートに「猫との接触」「動物にひっかかれ・咬まれた」「アウトドア・狩猟歴」などを固定項目として組み込むことが有用です。

また、眼科と内科・感染症科・小児科・神経内科の連携が遅れると、視神経網膜炎や脳症など重篤な合併症の診断が遅れ、結果として視機能予後や神経学的予後が悪化するリスクがあります。

そこで、片眼の肉芽腫性結膜炎+同側リンパ節腫脹+発熱の三徴を認めた場合には、「Parinaud眼腺症候群疑い」として電子カルテ上でタグ付けし、自動的に感染症科・神経内科へのコンサルト候補が提示されるような診療フローを構築することが、希少疾患の見落とし防止につながります。

独自の視点として、患者や家族が撮影したスマートフォン写真・動画を積極的に診療に取り込むことが挙げられます。猫の飼育環境や、受傷直後の皮膚病変、リンパ節腫脹の経時的変化などは、外来受診時には既に軽快していることも多く、写真記録が診断の重要な補助情報となりえます。

さらに、地域の獣医師との情報共有により、猫ひっかき病や野兎病など動物由来感染症の地域流行状況を把握しておけば、特定シーズンや地域におけるパリノー結膜腺症候群の事前確率を推定しやすくなり、疑い症例への検査・治療の閾値設定に活用可能です。

パリノー結膜腺症候群の定義・臨床像・原因疾患・治療の概説(英語。眼科医研修医向けの背景知識整理に有用)

Parinaud Oculoglandular Syndro…

猫ひっかき病とParinaud眼腺症候群・視神経網膜炎との関係を解説した日本語の眼科向けオンライン勉強会資料(原因疾患と眼合併症の節の補足に有用)

猫ひっかき病について|眼科医ぐちょぽいのオンライン勉強会

猫ひっかき病におけるParinaud眼腺症候群・視神経網膜炎などの眼合併症を扱った日本語論文(症例検討や治療方針の参考)

猫ひっかき病とParinaud眼腺症候群の症例報告|感染症学雑誌