オースギとツムラ違い:漢方薬メーカー比較ガイド

オースギとツムラの違い

オースギとツムラの主要な違い
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生薬配合量

同じ処方名でも生薬の配合量が異なり、臨床効果に影響する

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製剤特徴

市場シェアと製剤形態、満量処方への取り組みが大きく異なる

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添加物成分

使用される添加物の種類と量に違いがあり、患者の体質に影響

オースギとツムラの生薬配合量違い

オースギとツムラの最も重要な違いは、同じ処方名の漢方薬でも生薬の配合量が異なることです。例えば柴胡加竜骨牡蠣湯において、ツムラには大黄が含まれていませんが、オースギには大黄が配合されています。この違いは患者の症状や体質に応じた使い分けを可能にします。

葛根湯においても、ツムラの葛根配合量は4gですが、他のメーカーでは8gという倍量を配合している場合があります。オースギの葛根湯も4gの配合量となっており、ツムラと同様の配合バランスを採用しています。

🔍 具体的な配合量比較例

  • 柴胡加竜骨牡蠣湯:ツムラ(大黄なし)vs オースギ(大黄あり)
  • 葛根湯:ツムラ4g vs 他社8g(オースギは4g)
  • 抑肝散:ツムラ3.25g vs オースギ3.7g(1日エキス量)

この配合量の違いは、漢方医学における「証」に応じた治療戦略に大きく影響します。大黄の有無は便秘傾向のある患者とない患者で使い分けの基準となり、葛根の配合量は首肩こりの程度によって選択の指標となります。

オースギとツムラの製剤特徴比較

ツムラは医療用漢方製剤市場において80%以上の圧倒的なシェアを持つ業界最大手です。株式上場している唯一の漢方専業メーカーとして、標準化された製剤づくりに注力しています。ツムラの特徴として、大部分の漢方薬が1包2.5gに統一されており、処方や調剤における利便性が高く設計されています。

一方、オースギ(大杉製薬)は「オースギ」ブランドで展開し、グループ企業に生薬メーカーの高砂薬業を持つことで、原料となる生薬選びからこだわった製剤づくりを行っています。オースギの大きな特徴は、約60種類ある一般用漢方薬のほとんどが満量処方として製造されていることです。

📊 製剤形態の比較

  • ツムラ:顆粒剤(2.5g統一包装)
  • オースギ:顆粒剤(TG製剤)
  • ツムラ:色分けパッケージ(下一桁番号別)
  • オースギ:統一的なパッケージデザイン

満量処方とは、医療用漢方薬と同じ濃度で製造された一般用漢方薬のことで、オースギは医療用と一般用で製造方法を統一し、パッケージのみを変更するアプローチを採用しています。これにより、医療用から一般用への切り替え時にも同等の効果が期待できます。

オースギとツムラの添加物成分違い

添加物の違いは、患者の体質や食物アレルギーに直接影響する重要な要素です。ツムラの抑肝散エキス顆粒では、日局ステアリン酸マグネシウムと日局乳糖水和物が添加物として使用されています。一方、オースギ抑肝散料エキスTGでは、乳糖水和物、トウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウムが使用されています。

この添加物の違いは、乳糖不耐症の患者にとって重要な選択基準となります。特に東洋薬行のように基本的にトウモロコシデンプンのみを使用するメーカーと比較すると、ツムラとオースギの両社は乳糖を含有しているため、乳糖不耐症の患者には注意が必要です。

🧪 添加物比較表

メーカー 主要添加物 乳糖含有
ツムラ ステアリン酸Mg、乳糖水和物 あり
オースギ 乳糖水和物、トウモロコシデンプン、ステアリン酸Mg あり
東洋薬行 トウモロコシデンプンのみ なし

添加物の種類は製剤の安定性や服用感にも影響します。ツムラの製剤は統一された添加物により品質の安定性を確保している一方、オースギはトウモロコシデンプンの併用により異なる製剤特性を持っています。

オースギとツムラの価格コスト比較

価格面での比較において、ツムラは大量生産による規模の経済効果により、一般的に他のメーカーより競争力のある価格設定を実現しています。医療機関での採用率が高い理由の一つとして、安定した供給体制とコストパフォーマンスの良さが挙げられます。

オースギは満量処方への取り組みや原料へのこだわりにより、製造コストが高くなる傾向があります。しかし、満量処方による効果の確実性を考慮すると、単価あたりの治療効果という観点では価値があると考えられます。一般用漢方薬において、オースギの満量処方は医療用と同等の効果が期待できるため、長期的な治療コストの削減につながる可能性があります。

💰 コスト構造の特徴

  • ツムラ:規模の経済による低価格実現
  • オースギ:満量処方による高付加価値
  • ツムラ:安定供給による医療機関での採用率向上
  • オースギ:原料選択へのこだわりによる差別化

また、調剤薬局における在庫管理の観点から、ツムラの高いシェアは仕入れコストの最適化に貢献しています。一方、オースギのような専門性の高いメーカーの製剤は、特定の症例に対する治療選択肢の拡大という価値を提供します。

オースギとツムラの処方選択基準

臨床現場での処方選択において、医師は患者の症状、体質、既往歴を総合的に判断してメーカーを選択します。ツムラとオースギの使い分けは、特に生薬配合の違いを活用した個別化医療の実践として重要な意味を持ちます。

例えば、便秘傾向のある患者に対して柴胡加竜骨牡蠣湯を処方する場合、大黄が配合されているオースギを選択することで、より適切な治療効果が期待できます。逆に、下痢傾向や胃腸の弱い患者には、大黄の含まれていないツムラの製剤が適している可能性があります。

🎯 処方選択の実践的指針

  • 便秘傾向:オースギ(大黄配合製剤)を優先検討
  • 胃腸虚弱:ツムラ(大黄なし製剤)を優先検討
  • 首肩こり重症例:高濃度葛根配合メーカーを検討
  • 乳糖不耐症:東洋薬行など乳糖フリー製剤を選択

また、漢方薬局では複数メーカーの在庫により、患者の体質や症状の変化に応じてきめ細かい調整が可能となります。これは標準化された治療から個別化医療への発展として、現代の漢方医学の重要な特徴といえます。

処方医にとって重要なのは、同じ処方名であっても製剤内容が異なることを理解し、患者の状態に最も適したメーカーの製剤を選択することです。この知識は、漢方治療の効果を最大化し、副作用のリスクを最小化するために不可欠な要素となっています。

日本漢方生薬製剤協会の製剤情報

漢方製剤の詳細な成分情報と各メーカーの比較データが掲載されています。

ツムラ株式会社公式サイト

医療用漢方製剤の詳細情報と最新の研究データが参照できます。