オージオメーター聴力検査の実施
オージオメーター純音聴力検査の基本プロトコル
オージオメーターを用いた純音聴力検査は、聴覚機能評価の最も基本的かつ重要な検査手法です 。標準純音聴力検査では、気導聴力検査と骨導聴力検査の2つの異なる測定方法を組み合わせて実施します 。
参考)https://kikoe-navi.jp/hearing-test-at-ent
気導聴力検査では、ヘッドホンやイヤフォンを装着し、外耳道から鼓膜、中耳を経由して内耳に至る通常の音伝達経路を評価します 。検査周波数は125Hzから8000Hzまでの範囲で実施し、1000Hzから開始して2000Hz→4000Hz→8000Hzの順で高音域を測定した後、再び1000Hzに戻り、500Hz→250Hz→125Hzの順で低音域を測定します 。
参考)https://www.kango-roo.com/learning/2029/
骨導聴力検査では、骨伝導振動子を乳突部または前額部正中部に装着し、骨を通じて直接内耳に音を伝達する経路を評価します 。この検査により外耳や中耳の影響を排除し、内耳や聴神経の機能を直接的に評価できます 。検査周波数は250Hzから4000Hzまでの範囲で実施されます 。
オージオメーター検査における診断精度の向上策
聴力検査の診断精度を向上させるためには、適切な検査環境の整備と標準化された手順の遵守が不可欠です 。検査前の準備として、過大な騒音の回避、装飾具の除去、防音室での実施が推奨されます 。
参考)https://hiroringi.or.jp/wp/wp-content/uploads/2023/06/2a1d4e1aa4a01325220a8b8979b29fd5.pdf
検査手順では上昇法を使用し、明らかに聞こえない音圧から徐々に音圧を上げていく方法が標準とされています 。応答ボタンを押した音圧を閾値とし、少なくとも3回以上の検査を行い、同じ閾値での反応が過半数を得られた場合に最終決定の閾値とします 。
正常者の聴力レベルは±15dBとされており、25dB未満を健聴、25dB以上40dB未満を軽度難聴、40dB以上70dB未満を中等度難聴として分類されます 。検査結果はオージオグラムに記録され、気導聴力は右耳を○、左耳を×で、骨導聴力は右耳を右開きカッコ([)、左耳を左開きカッコ(])で表示します 。
参考)https://jp.sharp/mlp/column/016/
オージオメーター機器のメンテナンスと校正管理
オージオメーターは精密電子機器であり、検査の信頼性を保つために定期的な校正が不可欠です 。日本工業規格(JIS)により規格が規定されており、頻繁に使用すると精度に狂いが生じるため、JIS規格に合っているかどうかの定期的な専門業者による校正が必要とされています 。
校正項目には、周波数の精度、気導受話器出力の出力音圧の精度、聴力レベル目盛間隔の誤差、気導受話器出力の倍音、純音の断続器、妨害音の検査が含まれます 。特に学校保健安全法に基づく検査では、1000Hz・30dBおよび4000Hz・25dBの選別検査音の精度確認が重要です 。
参考)https://www.matsuyoshi.co.jp/assets/pdf/att/att_00129122.pdf
学校保健安全法により「オージオメータは定期的に校正を受けること」とされており、1年に1回以上の校正が推奨されています 。校正方法はJIS規格に基づいた周波数(純音)と気導受話器の検査音の聴力レベルで実施され、国家標準にトレーサブルな標準器(マイクロホン)を使用します 。
参考)https://www.jqa.jp/service_list/measure/service/other/ojiometa.html
オージオメーター機器選択と性能評価基準
臨床用オージオメーターの選択では、JISタイプ分類による性能区分の理解が重要です 。AA-H1のようなハイエンドモデルでは、標準純音聴力検査から耳鳴検査まで多彩な検査機能を搭載し、タッチパネル操作やLANインタフェースによる電子カルテ対応を実現しています 。
参考)https://www.rion.co.jp/product/medical/audiometer/list.html
健診機関向けには、フルコードレス機能や自動検査機能を搭載したモデルが適しており、1システムで最大5人の同時検査が可能で、1人あたり約1~2分での検査時間短縮を実現します 。これらの機器では57-S、67-S語表および補聴器適合検査の指針(2010)検査用音源が内蔵されています 。
機器の安全性確保のため、音圧レベルが80dB以上になると画面に警告が表示される機能や、高周波数(16,000Hzまで)の測定オプション、幼児聴力検査システムの設置など、様々な検査・研究ニーズに対応できる拡張性も評価基準となります 。
オージオメーター検査による難聴鑑別診断の独自アプローチ
オージオメーター検査結果の解釈では、単純な聴力レベルの評価を超えた病態の鑑別診断が重要な価値を持ちます。気導骨導差(ABG:Air-Bone Gap)の分析により、伝音性難聴、感音性難聴、混合性難聴の鑑別が可能になります 。
参考)http://jibikkuma.jp/audiometry.html
特に4000Hzの聴力低下は騒音性難聴の早期指標として重要であり、日常的にイヤホンで耳をふさぐ機会が増えた現代社会において、コロナ禍で急増したオンライン授業の影響も考慮した検査解釈が求められています 。1000Hzの聴力障害は日常会話に必要な低音域の障害を示し、中程度の周波数域の聴力障害の可能性を示唆します 。
参考)https://www.kknews.co.jp/post_health/20211018_7d
近年の研究では、タブレット型オージオメータOtokioskを用いた簡易聴力検査の信頼性が検討されており、従来の機器との比較による新たな診断手法の開発が進んでいます 。また、測定音に純音と震音を用いた「聞こえチェッカー」による検査法も開発され、従来の純音聴力検査との閾値比較による診断精度向上が図られています 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology/67/5/67_413/_article/-char/ja/