オッディ括約筋とは 看護
オッディ括約筋とは 看護での位置と十二指腸乳頭
オッディ括約筋(オッディ筋)は、胆汁が流れる総胆管と、膵液が流れる主膵管が十二指腸へ開口する「乳頭(ファーター乳頭)」の周囲にある括約筋です。
この“出口の筋肉”が開閉することで、胆汁・膵液が食物のタイミングに合わせて十二指腸へ出ていきます。
また通常は開口部が収縮しているため、十二指腸内の細菌などが胆管・膵管へ逆流するのを防ぐという感染防御の意味も持ちます。
看護の現場では「胆嚢・胆管・膵臓はつながっている」という解剖の理解が、症状の見立てや説明の質に直結します。例えば、右上腹部痛や背部痛がある患者で、胆道系酵素上昇や黄疸があれば“出口(乳頭部)で詰まっていないか”を連想できるとアセスメントが早くなります。
参考)黄疸・胆石
また、胆道と膵管が合流する出口に括約筋があるため、ここで流れが悪くなると胆道だけでなく膵炎側の問題にも波及しやすい点が重要です。
オッディ括約筋とは 看護での胆汁と膵液と逆流
オッディ括約筋は、胆汁と膵液の「流出調整」と「逆流予防」を同時に担います。
胆汁の出口である十二指腸乳頭部を開閉して、胆汁の十二指腸への放出を調節し、同時に十二指腸内容が胆管内へ入り込むのを防ぐ働きがあると説明されています。
この“逆流を防ぐ”という視点は、胆管炎の説明にも使いやすく、患者教育(なぜ発熱や悪寒が起こるのか)にもつながります。
臨床でイメージしやすく言い換えるなら、胆汁・膵液の「蛇口」兼「逆止弁」です。蛇口が開かなければ胆汁うっ滞や膵液うっ滞の方向へ、逆止弁が効かなければ腸内細菌の逆流という方向へ、問題が派生します。
参考)https://www.suizou.org/citizen/qa/qa01-1.htm
そのため、胆嚢炎や胆管炎、膵炎の看護では、痛みの部位・放散、発熱、黄疸、尿色、便色、検査データのセットで“出口のトラブル”を疑う習慣が有用です。
オッディ括約筋とは 看護でのコレシストキニン
食物が十二指腸に入ると、消化管ホルモンであるコレシストキニン(CCK)が関与し、胆嚢収縮とOddi括約筋の弛緩によって胆汁排出が促進されます。
看護師向けの解説でも、十二指腸下行部に食物が入る→CCK分泌→胆嚢収縮+Oddi括約筋弛緩→胆汁排出、という流れで整理されています。
CCKは膵酵素分泌も促進するため、「脂質やタンパク質が来たら、胆汁と膵液を出す」方向に体が動くと押さえると理解が安定します。
ここで意外と抜けやすいのが、“症状の出やすいタイミング”です。食後(とくに脂っこい食事)に右季肋部痛が出る患者では、胆嚢収縮と出口の弛緩がうまく協調しない状況が背景にある可能性を説明しやすくなります。
絶飲食(NPO)や輸液、鎮痛の優先度が高い場面でも、患者や家族は「なぜ食べられないのか」を気にします。胆汁・膵液の流れの生理を簡潔に示すことで、治療への納得感が上がります。
参考:CCK(胆嚢収縮・Oddi括約筋弛緩、膵酵素分泌)を看護用語として短く整理
オッディ括約筋とは 看護でのオッディ括約筋機能不全
オッディ括約筋機能不全は、胆汁・膵液の流出障害により胆管炎や膵炎を来しうる病態として整理され、乳頭狭窄や乳頭括約筋型ジスキネジーに分類されると報告されています。
診断では、内視鏡的十二指腸乳頭括約筋内圧測定(manometry)や胆道シンチグラフィーが有用とされる、という記載があります。
さらにRome IV分類に触れ、胆管括約筋機能不全などのサブタイプがあることも臨床整理に役立ちます。
看護として重要なのは、“原因が結石だけではない”という視点です。画像で胆石がはっきりしないのに、反復する上腹部痛や肝胆道系酵素の変動、胆道拡張、胆汁排泄遅延があるケースでは、機能性の問題が鑑別に入ります。
参考)無石性胆道痛 – 02. 肝胆道疾患 – MSDマニュアル …
その場合、観察は「痛みの性質(疝痛か持続痛か)」「発熱・悪寒」「黄疸」「検査値(AST/ALT、ALP、γ-GTP、ビリルビン、アミラーゼ/リパーゼ)」「画像や検査の予定」の時系列化が特に大切です。
参考)原因不明の腹痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用していた乳がん患…
時系列でまとめられると、医師の鑑別(胆道系か、膵炎寄りか、感染が主か)や、内視鏡治療の適応判断が進みやすくなります。
参考:無石性胆道痛や機能性胆道Oddi括約筋疾患をRome IVの枠組みで概説(医療者向け)
無石性胆道痛 – 02. 肝胆道疾患 – MSDマニュアル …
オッディ括約筋とは 看護でのオピオイド(独自視点)
“意外な落とし穴”として、オピオイド鎮痛薬がオッディ括約筋機能に影響し、胆道系イベントの背景になりうる点は臨床で見落とされがちです。
J-STAGE掲載の症例報告では、オキシコドン内服継続中の患者で、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)や胆道シンチグラフィー所見からオッディ括約筋機能不全が強く疑われ、内視鏡的十二指腸乳頭切開術で症状改善が得られたとされています。
同報告は「稀ではあるが、オピオイド使用中の胆管炎の原因としてオピオイド誘発性オッディ括約筋機能不全も念頭に置く必要がある」と述べています。
看護実践に落とすなら、原因不明の右季肋部痛・上腹部痛、胆管炎疑い、膵炎疑いの場面で「薬歴(オピオイドの種類、増量時期、頓用回数)」をきちんと拾うことが重要です。
特に、がん性疼痛だけでなく非がん性疼痛でもオピオイドが長期化するケースがあるため、入院時問診で“疼痛コントロールの経過”を短いメモで残すだけでも、後の評価に効きます。
また、腹痛+発熱+肝胆道系酵素上昇のセットが出たとき、結石だけに絞らず「機能性+薬剤性」も含めて医師へ情報提供できると、診断・治療の遅れを減らせます。
論文(オピオイド誘発性オッジ括約筋機能不全の症例報告:臨床経過、診断、治療の要点)