オビヌツズマブ添付文書の用法と安全管理
初回投与時にinfusion reactionが59.0%の患者で発現します。
オビヌツズマブ添付文書の基本情報と適応
オビヌツズマブ(商品名:ガザイバ点滴静注1000mg)は、CD20陽性のB細胞性リンパ腫に対して使用される糖鎖改変型タイプII抗CD20モノクローナル抗体です。添付文書に記載された適応疾患は「CD20陽性の濾胞性リンパ腫」および「CD20陽性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」となっています。
2018年8月に濾胞性リンパ腫の適応で承認され、2022年12月には慢性リンパ性白血病の初回治療に対する適応拡大が承認されました。薬価は1バイアル(1000mg/40mL)あたり458,799円です。既存のリツキシマブと同様にCD20陽性のB細胞を標的としますが、糖鎖改変により抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性および抗体依存性細胞貧食(ADCP)活性がリツキシマブよりも1.3~2.5倍強化されています。
フローサイトメトリー法等によりCD20抗原が陽性であることを確認された患者にのみ使用することが添付文書で規定されています。
つまり、投与前の検査が必須です。
濾胞性リンパ腫に対するGALLIUM試験では、リツキシマブと比較してオビヌツズマブの方が無増悪生存期間を29%改善したという結果が示されており、治療効果の向上が期待できます。
製造販売元は中外製薬株式会社、販売元は日本新薬株式会社です。添付文書は電子添文(HTML版およびPDF版)としてPMDAのウェブサイトや各製薬会社の医療関係者向けサイトで閲覧可能です。最新の改訂情報は2025年11月20日付で第5版が公開されています。
PMDA医療用医薬品情報検索では、オビヌツズマブの最新の添付文書PDFおよびHTML版を確認できます。
オビヌツズマブの投与方法と速度調整の詳細
添付文書に記載された投与方法は適応疾患により異なりますが、濾胞性リンパ腫の場合、導入療法として第1サイクルは1日目、8日目、15日目に投与し、第2サイクル以降は各サイクルの1日目のみ投与します。
1回の投与量は1000mgです。
導入療法終了後の維持療法では、単独投与により2カ月に1回、最長2年間投与を繰り返します。
投与速度の調整は副作用の発現リスクを軽減するために極めて重要です。第1サイクル1日目(初回投与100mg)の場合、25mg/時(6.25mL/時)で4時間以上かけて投与し、投与速度を上げてはいけません。第1サイクル2日目(残り900mg投与)では、前回の投与でinfusion reactionが発現しなかった場合、50mg/時(12.5mL/時)で投与を開始し、30分毎に50mg/時(12.5mL/時)ずつ、最大400mg/時(100mL/時)まで上げることができます。
第2サイクル以降で、前回の投与でGrade 2以上のinfusion reactionが発現しなかった場合は、100mg/時(25mL/時)で投与を開始し、30分毎に100mg/時(25mL/時)ずつ、最大400mg/時(100mL/時)まで上げることができます。
これが基本です。
Infusion reactionが発現した場合の対応も添付文書で明確に規定されています。Grade 1~2の症状(軽度から中等度)では投与速度を50%に減速し、症状が改善または消失したら速度を上げることができます。Grade 3(重度)では直ちに投与を中断し、症状が消失してから初回投与時の速度以下で投与を再開します。Grade 4(生命を脅かす)では投与を中止し、適切な処置を行います。
慢性リンパ性白血病の場合は、アカラブルチニブを28日間投与した後に本剤の投与を開始することが用法及び用量に関連する注意として記載されています。どういうことでしょうか?これは併用療法における投与順序の規定であり、BTK阻害薬との併用時の特別な配慮となります。
オビヌツズマブ添付文書に記載された重大な副作用
添付文書の「重大な副作用」の項には、医療従事者が特に注意すべき副作用が記載されています。最も頻度が高いのはinfusion reactionで、濾胞性リンパ腫患者の安全性評価対象595例において59.0%で発現しました。主な症状は発熱、悪寒、悪心、嘔吐、呼吸困難、血圧変動、頭痛などです。
初回投与時に最も多く認められますが、2回目投与以降や投与開始後24時間以降にも発現する可能性があります。重篤化を防ぐために、抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤の前投与が必須とされ、副腎皮質ホルモン剤との併用を考慮することが推奨されています。具体的には、オビヌツズマブ投与の30分~1時間前に抗ヒスタミン剤と解熱鎮痛剤を投与し、副腎皮質ホルモン剤は投与60分~12時間前に投与します。
腫瘍崩壊症候群も重大な副作用として記載されています。腫瘍量が多い患者では発症リスクが高く、高尿酸血症、高カリウム血症、高リン酸血症、低カルシウム血症、急性腎不全などが急速に進行する可能性があります。予防処置として、投与開始前から高尿酸血症治療剤の投与や十分な水分補給を行い、投与開始後も血清中電解質濃度および腎機能検査を頻回に実施することが求められます。
厳しいところですね。
B型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化は、リツキシマブやオビヌツズマブを用いる化学療法において高リスクとされています。添付文書では「警告」の項に記載されており、投与前にHBs抗原、HBs抗体、HBc抗体を測定し、既往感染者に対しては投与期間中および投与終了後少なくとも12カ月間、HBV DNA量を定期的に測定することが必須です。再活性化が認められた場合は直ちに投与を中止し、抗ウイルス療法などの適切な処置を行います。
その他の重大な副作用として、好中球減少(45.5%)、感染症(37.0%)、血小板減少、出血、進行性多巣性白質脳症(PML)、間質性肺疾患、心障害、腎障害などが添付文書に列挙されています。これらの副作用発現を早期に発見するため、定期的な血液検査、画像検査、自覚症状の確認が不可欠です。
日本肝臓学会のB型肝炎対策ガイドラインでは、リツキシマブ・オビヌツズマブを用いる化学療法がHBV再活性化の高リスクであることが明記されています。
オビヌツズマブの調製方法と投与時の必須事項
添付文書の「適用上の注意」には調製方法と投与時の重要な規定が記載されています。まず、調製時には必ず無菌的操作で行い、バイアルから必要量(通常40mL全量)を抜き取り、日局生理食塩液で希釈して総量250mLとします。他の輸液(ブドウ糖液など)での希釈は認められていません。
希釈後の製剤は用時調製が原則です。抗菌性保存剤が含まれていないため、微生物学的な観点から調製後は速やかに使用してください。やむを得ず保存する場合は、2~8℃で保存し、調製後24時間以内に投与を完了させる必要があります。
室温保存は推奨されていません。
投与時には0.2または0.22μmのインラインフィルターの使用が必須です。これは必須条件であり、添付文書で明確に規定されています。フィルターを使用しないと微粒子が混入するリスクがあり、投与時の安全性が確保できません。
また、他剤との混注は禁止されています。
配合変化や薬効への影響を避けるため、オビヌツズマブ専用のラインを使用する必要があります。
投与に使用する点滴容器や輸液セットの材質については、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリオレフィン(PO)のいずれも使用可能であることが確認されています。希釈後の安定性試験では、これらの材質で24時間安定であることが示されています。
血管外漏出時のリスクについても添付文書に記載があります。オビヌツズマブは壊死性ではありませんが、漏出した場合は投与を中止し、患部を冷却するなどの適切な処置を行います。投与中は定期的に注射部位を観察し、腫脹、疼痛、発赤などの異常がないか確認することが重要です。
オビヌツズマブとリツキシマブの添付文書上の違い
オビヌツズマブの添付文書を理解する上で、既存薬であるリツキシマブとの違いを把握しておくことは臨床上重要です。両剤ともCD20陽性B細胞を標的とする抗CD20モノクローナル抗体ですが、構造と作用機序に明確な相違点があります。
オビヌツズマブは糖鎖改変型タイプII抗体であり、Fc受容体への結合親和性が向上しています。結論として、ADCC活性とADCP活性がリツキシマブより強力です。一方でリツキシマブはタイプI抗体であり、補体依存性細胞傷害(CDC)活性が主な作用機序となります。この違いにより、オビヌツズマブは直接的な細胞死誘導作用も持ち、より強力な抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。
添付文書上の投与方法も異なります。リツキシマブは初回投与から比較的速い速度(初回50mg/時から開始可能)で投与できますが、オビヌツズマブは初回投与を非常に慎重に行う必要があり、第1サイクル1日目は25mg/時で4時間以上かけて投与し、速度を上げることができません。これはinfusion reactionの発現頻度が高いことに対する安全対策です。
副作用プロファイルにも違いがあります。GALLIUM試験の結果では、オビヌツズマブ群のinfusion reaction発現率は66%、好中球減少は50%と、リツキシマブ群(それぞれ38%、43%)より高い傾向が認められました。
意外ですね。
治療効果が高い一方で、副作用管理により注意を払う必要があります。
薬価にも大きな差があります。オビヌツズマブ1バイアル(1000mg)は458,799円であるのに対し、リツキシマブ(先発品)500mg1バイアルは約15万円前後と、オビヌツズマブの方が高額です。ただし、リツキシマブにはバイオシミラーが複数発売されており、後発品を使用することでコストを抑えることが可能です。オビヌツズマブには現時点でバイオシミラーは存在しません。
臨床試験のエビデンスとしては、濾胞性リンパ腫の初回治療において、オビヌツズマブと化学療法の併用はリツキシマブと化学療法の併用と比較して無増悪生存期間を有意に延長したことが示されています。この結果を受けて、オビヌツズマブは濾胞性リンパ腫の新たな標準治療の選択肢として位置づけられています。
Please continue.