入院中他院受診薬処方算定の処方料処方せん料調剤料薬剤料

入院中と他院受診と薬処方と算定

入院中の他院受診×薬処方×算定 まず押さえる要点

算定できる前提

入院医療機関で実施できない「専門的な診療」が必要で他院受診するケースが中心。出来高入院料かDPCか等で請求の流れが変わる。

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処方せん備考欄

他院が処方せん交付するなら「入院中」「入院医療機関名」「出来高入院料か否か」を備考欄へ。薬局は入院医療機関へ調剤内容を情報提供。

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査定を防ぐ勘所

摘要欄コメントや情報共有が弱いと疑義・再審査の火種になりやすい。ルールと記載・連携をセットで運用する。

入院中の他院受診で薬処方算定が必要になる場面

 

入院中の患者が他院受診するのは、入院医療機関で対応できない「専門的な診療」が必要な場合が中心で、ここを外すと算定の説明が破綻しやすいです。

典型例は、入院治療の主座とは別に、専門科の評価・処置が必要となり、他医療機関で診察・検査・投薬が発生するパターンです。

このとき現場で混乱しやすいのが「薬を出した医療機関が薬剤料まで全部請求するのか」「薬局は調剤報酬を請求できるのか」という点で、入院料の包括/出来高の区分とセットで理解する必要があります。

  • チェック1:他院受診の理由は「入院医療機関で実施できない専門的な診療」か。
  • チェック2:患者は出来高入院料の病床か(DPC算定病床か、特定入院基本料等か)。
  • チェック3:他院は院内処方か、処方せん交付か(院外処方か)。

意外に見落とされるのは、「他院受診=自由に外来同様の処方ができる」ではなく、入院医療の枠組みの中で“必要性が説明できる範囲”に整える運用が求められる点です。

参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-109.pdf

とくに定期薬の継続など、緊急性が低い処方を他院で漫然と行うと、算定以前に情報共有・重複投薬リスクが臨床的に問題化しやすくなります。

入院中の他院受診で薬剤料と調剤料と処方料と処方せん料の算定

出来高入院料を算定する病床に入院中の患者が、専門的診療のため他院受診し投薬を受けた場合、他医療機関は「専門的な診療に特有な薬剤を用いた投薬」に係る費用(調剤料、薬剤料、処方料または処方せん料等)を算定できると整理されています。

また、他院が交付した処方せんに基づき薬局が調剤した場合、当該薬局は調剤に係る費用を算定できるとされています。

この「算定できる」が、実務では“何でもOK”ではなく、「専門的な診療に特有」という説明可能性が重要で、監査・審査では適応や重複の観点と同時に見られやすい点に注意します。

  • 他医療機関(受診先):専門的診療に特有な薬剤を用いた投薬に係る費用を算定し得る。
  • 保険薬局:処方せんに基づく調剤に係る費用を算定し得る。

一方で、入院料の体系(DPC算定病床か否か等)により、請求の考え方・運用(院内の精算、連携の形)が変わり得るため、施設内の医事・薬剤部門でフローチャート化しておくと事故が減ります。

参考)https://www.fpa.or.jp/library/iryohoken/sinsa201403.pdf

査定が起きやすいポイントは、レセプト摘要欄や処方せん備考欄に“入院中他院受診の文脈”が残っておらず、第三者が見たときに外来処方に見えてしまうことです。

入院中の他院受診で処方せん備考欄と情報提供の要点

入院中の患者に対して他医療機関が処方せんを交付する場合、備考欄に①入院中の患者である旨、②入院医療機関の名称、③出来高入院料を算定している患者であるか否か、を記載して交付する取扱いが示されています。

さらに、薬局は調剤内容について入院医療機関に情報提供することが求められ、これが安全面(重複投与・相互作用)と請求面(算定根拠の説明可能性)の両方に効きます。

他院が院内処方を行う場合も、他医療機関から入院医療機関へ処方内容を情報提供する取扱いで、情報共有がルールとして明示されています。

  • 処方せん備考欄:入院中/入院医療機関名/出来高入院料か否か。
  • 情報提供:薬局→入院医療機関へ調剤内容を情報提供。
  • 情報提供:他医療機関(院内処方)→入院医療機関へ処方内容を情報提供。

運用上のコツは、「備考欄の3点セット」と「情報提供の到達(誰が受け、どこに記録したか)」をセットで監査可能にすることです。

ここが曖昧だと、臨床側は善意で動いていても、審査側からは“入院中に外来処方を外出先で受けた”ように見え、説明コストが跳ね上がります。

参考リンク(通知の根拠:入院中の他院受診と投薬費用、備考欄、情報共有のQ&Aが載っています)

https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-109.pdf

入院中の他院受診で摘要欄と疑義照会と査定を減らす実務

審査・再審査の局面では、摘要欄コメントが「請求者の意図がわかる」ことがトラブル予防になる、という趣旨の注意喚起が示されています。

つまり、入院中他院受診に関する算定は、点数算定の知識だけでなく、第三者に誤解なく伝わる記録(摘要欄・情報提供記録)を伴って初めて強くなります。

疑義照会は薬局側で起きることも多いため、入院医療機関側が「入院中他院受診の際の処方・調剤の連携手順(いつ、誰が、何を返す)」を明文化しておくと、現場の確認時間を短縮できます。

  • 医事:レセプトで「入院中の他院受診」と分かる情報が残る運用にする(施設ルール化)。
  • 薬剤:持参薬・院内採用・他院処方の切替時に、重複と相互作用の観点で情報を一本化する。
  • 病棟:患者・家族に「入院中は原則として入院先が薬を管理する」趣旨を説明し、例外(専門的診療)を共有する。

あまり知られていない“落とし穴”は、制度上の算定可否よりも先に、記載不足で「外来と同じ請求に見える」状態を作ってしまうことです。

この手の査定は、薬そのものが不適切というより“関係者が入院中という前提を共有していない”サインとして現れるため、再発防止は教育よりもチェックリスト化が有効です。

参考リンク(審査の視点:摘要欄コメントの重要性、調剤レセプトの疑義・査定の考え方の例が載っています)

https://www.fpa.or.jp/library/iryohoken/sinsa201403.pdf

入院中の他院受診で薬処方算定を安全に回す独自視点:情報共有を「薬歴」ではなく「入院治療計画」に接続する

入院中の他院受診の薬処方算定は、制度上は「情報提供する」と書かれていますが、実務で事故が減るのは“薬の情報”を薬剤部門の中だけに閉じず、入院医療機関の治療計画(主病名・合併症・手術予定・検査予定)に接続したときです。

たとえば、他院の専門薬が「術前中止が必要」「腎機能で用量調整が必要」など入院管理と直結する場合、情報提供がFAX1枚で終わると、受け手が病棟・主治医に届かず、結果として重複投薬や中止漏れが起きやすくなります。

そこで、他院受診が決まった時点で「入院中・他院受診・薬処方・算定」のチェック項目を、医事(算定)と薬剤(安全)と病棟(運用)の3者で同じ様式にし、入院診療録の見える場所に置くと、情報共有の“到達”が担保されやすくなります。

  • 様式に入れる項目例:他院受診理由(専門的診療)、他院診療科、薬剤名、開始日、予定日数、院内採用有無、相互作用注意、処方せん備考欄3点セット記載有無。
  • 到達確認:薬局・他院からの情報提供を「誰が受けたか」「主治医へ共有したか」を記録し、口頭だけで終わらせない。
  • 算定事故の芽:外来同様に見える記載になっていないか、摘要欄や院内記録を点検する。

この運用は点数を増やす話ではなく、制度が要求する情報共有を、臨床の意思決定に届く形へ変換する工夫です。

結果として、算定の説明可能性(なぜ他院でこの薬が必要だったか)も、薬剤安全(重複・相互作用・中止漏れ)も同時に強くできます。



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