尿タンパクとは原因検査基準値について

尿タンパクとは基準値

尿タンパクの基準値と判定
🩺

正常範囲

1日あたり150mg未満、尿タンパク/クレアチニン比0.15g/gCr未満が正常値

⚠️

軽度蛋白尿

0.15~0.5g/gCrの範囲で要注意レベル、定期的な経過観察が必要

🚨

高度蛋白尿

0.5g/gCr以上で積極的な治療が必要、腎不全リスクが高い状態


尿タンパクとは、本来腎臓でろ過されるはずのタンパク質が尿中に漏れ出してしまう状態のことです 。健康な腎臓では、血液中の必要なタンパク質は血液中に保持され、不要な老廃物のみが尿として排泄される仕組みになっています 。尿タンパクは腎臓に何らかの異常が起きていることを示すSOSのような役割を果たす重要な検査異常です 。

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尿タンパクの基準値について、慢性腎臓病CKD)診療ガイド2012では、尿タンパク/クレアチニン比で0.15g/gCr未満を正常、0.15g/gCr以上0.5g/gCr未満を軽度、0.5g/gCr以上を高度とされています 。1日あたりの排泄量で表すと、150mg/日未満が正常範囲とされ、この値を超えると異常値と判断されます 。

参考)尿蛋白陽性と言われたら—蛋白尿の基準値や原因とは—

試験紙による定性検査では、結果が「-」、「±」、「1+」、「2+」、「3+」の5段階または「4+」を加えた6段階で判定され、「±」以上が蛋白尿とされています 。日本腎臓学会の基準では「±」を軽度蛋白尿、「1+」以上を高度蛋白尿として分類されており、「2+」や「3+」は尿中に排泄されているタンパク質がかなり多い状態を示します 。

尿タンパクの原因疾患

尿タンパクが出る原因は大きく分けて病的なものと一過性のものがあります 。病的な蛋白尿の原因には、糖尿病腎症、横紋筋融解症、慢性糸球体腎炎高血圧膠原病などが挙げられます 。また、尿路結石、尿路上皮がん、尿路感染症などの泌尿器系疾患でも血液中のタンパクが混入することで蛋白尿が陽性となります 。

参考)教えて!ドクター|蛋白尿が出るのは、何が原因でしょうか?

糸球体性タンパク尿は、糸球体疾患に起因するもので、糸球体透過性の亢進により血漿タンパク質の量が増加することで起こります 。一方、尿細管性タンパク尿は、近位尿細管でのタンパク質の再吸収を障害する尿細管間質性疾患に起因し、アルブミンではなく免疫グロブリン軽鎖などの低分子タンパク質に由来することが特徴です 。

参考)タンパク尿 – 03. 泌尿器疾患 – MSDマニュアル プ…

最新の研究では、朝食あるいは夕食を食べない女性は蛋白尿のリスクが1.3~1.5倍上昇することが大阪大学の疫学研究で明らかにされており、規則正しい食事リズムが腎臓病の予防につながる可能性が示唆されています 。

参考)https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20201222_3

尿タンパクの一過性要因

病気が原因でない一過性の蛋白尿も多く存在します 。一過性蛋白尿は、一時的な体の状態変化によって引き起こされる尿タンパクのことで、高熱を伴う感染症にかかった際や激しい運動の後、強いストレスを感じているときに検出されることがあります 。

参考)尿蛋白・尿潜血(血尿)について京都で相談するならソウクリニッ…

具体的な一過性の原因として以下のものが挙げられます:肉などのタンパク質を大量に摂取したとき、激しい運動の後、体の水分が不足しているとき、発熱時、精神的ストレスがあるとき、射精後(精子が混じっている)、月経中(おりものが混じっている)などです 。
運動後の蛋白尿は運動強度に比例して現れる傾向があり、マラソンなどの長時間の激しい運動後には高率で検出されます 。重要なのは、これらの一過性の蛋白尿は原因となる状態が解消されれば自然に正常化することです 。
起立性蛋白尿(体位性蛋白尿)は思春期のやせ形のお子さんに多くみられる現象で、立位時に蛋白尿が出るが臥位では正常になる特徴があります 。

参考)お子様の蛋白尿について

尿タンパクの精密検査方法

尿タンパクの正確な評価には、24時間蓄尿検査が最も信頼性の高い方法とされています 。24時間蓄尿検査では、1日の尿をすべてためてその一部を提出し、腎機能、1日の尿蛋白排泄量、塩分摂取量、たんぱく質摂取量を計算することができます 。

参考)日常臨床における24時間蓄尿検査 ~その意義を考える~(コメ…

しかし、24時間蓄尿は患者にとって煩雑であるため、外来では随時尿を用いた尿タンパク/クレアチニン比の測定が広く用いられています 。この検査では、尿タンパク濃度(mg/dl)を尿中クレアチニン濃度(mg/dl)で割った値を1日尿タンパク量の推定値として使用します 。

参考)蛋白尿の症状・原因・必要な検査・糖尿病や高血圧との関連とは

試験紙法による検査は簡便ですが、尿の濃縮度やpHによって偽陽性や偽陰性を示すことがあるため、あまり正確ではないとされています 。尿のpHがアルカリ側に傾いている場合や、尿自体が濃縮している場合は蛋白質を検出してしまうことがあります 。

参考)尿検査で何がわかる? ~ 症状が現れにくい蛋白(たんぱく)尿…

最新の技術として、ナノ粒子と機械学習を組み合わせた「三位一体」分析法が開発されており、従来の試験紙検査、タンパク質/クレアチニン比測定、電気泳動を一度に行うことが可能になっています 。

参考)https://advanced.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202410751

尿タンパクの治療法薬物療法

尿タンパクの治療は、まず原因となる基礎疾患の特定と治療が重要です 。蛋白尿のあるCKD患者では、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬であるACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が第一選択薬として使用されます 。

参考)コラム|慢性腎臓病の薬物療法:降圧薬|東京薬科大学 竹内裕紀…

RAS阻害薬が使用される理由は、これらの薬剤が蛋白尿を減少させることが報告されているためです 。腎臓が悪くなると蛋白尿が出てきますが、この蛋白尿自体が腎臓に悪さをして腎機能を低下させる悪循環があるため、蛋白尿を抑えてこの悪循環を断ち切るためにRAS阻害薬を使用します 。
メタ解析の結果では、ARBとACE阻害薬に抗蛋白尿効果の差はみられませんが、両薬剤の併用投与による有効性はいずれの単独投与よりも大きいことが示されています 。ARBとACE阻害薬の併用投与は各単剤投与よりも蛋白尿抑制効果が大きく、蛋白尿の度合いや基礎疾患とは独立して蛋白尿を抑制します 。

参考)https://www.ebm-library.jp/circ/metaanalysis/01-03.html

ただし、ACE阻害薬やARBはCKD治療の万能薬ではなく、最も効果を発揮するのは腎機能が比較的保たれた、蛋白尿を認めるCKD患者です 。進行したCKDステージ4、5では、これらの薬剤が残腎機能の低下率をさらに加速させる可能性が報告されています 。

参考)https://www.japha.jp/doc/CKDJ_vol2.pdf

尿タンパクの生活習慣改善法

尿タンパクを改善するためには、食事療法と生活習慣の見直しが重要です 。尿タンパクが±の場合、極端な食事制限は必要ありませんが、肥満傾向の場合は肥満を改善することで尿タンパクが下がることが明らかにされています 。甘いお菓子やジュース、脂っこいものなど高カロリーな食品の摂りすぎに気をつけることが推奨されます 。

参考)腎臓からのSOS見逃さないで!尿蛋白が出たら気を付けること …

塩分制限も重要で、複数の論文を検証した研究によると、1日食塩摂取量を4.2g減少させると収縮期血圧/拡張期血圧は6.1/3.5 mmHg低下し、4.8g減少させると尿蛋白は34%減少することが報告されています 。

参考)腎臓にいい食べ物と悪い食べ物について【玉ねぎ・にんにく・コー…

睡眠不足やストレスがたまっているときは腎臓にも疲れがたまっていると考えられるため、夜遅くに食べ物や飲み物を摂るのを控えて腎臓を休めることが大切です 。ストレスが原因で尿たんぱくが増えることがあるため、リラックスする時間を作ってストレスを発散させることも重要です 。

喫煙は腎機能に悪影響があり、喫煙本数が多いほど腎機能悪化のリスクが高まるため、禁煙が強く推奨されます 。健康診断で尿蛋白が陽性と判定された場合は、一時的な脱水や激しい運動などが原因である可能性も考えられますが、繰り返し尿蛋白が陽性になる場合は精密検査が必要となります 。