尿量測定容器と目盛
尿量測定容器の目盛の読み方と記録
尿量測定容器でまず外せないのが、「目盛をどう読むか」をチームで統一することです。採尿バッグや計量部の液面が傾いたまま読むと、見かけの尿量がズレやすく、記録の信頼性が落ちます。精密尿量計の取扱説明でも、尿が目盛に対して水平になるよう調整し、正面から目盛を読み取るよう明記されています。これは“計測”というより“観察条件の標準化”であり、誰が当直でも同じ値に近づける作業です。
臨床では「尿量(mL)」を数値として書くだけでなく、状況のメモが診療に効く場面があります。たとえば、体位変換直後・利尿薬投与後・輸液更新直後など、尿量変化の解釈に関わる要因が同時に起きていることが多いからです。排尿日誌の運用例でも、目盛付き紙コップや採尿器など“目盛がある容器”で測定する前提が示されており、測定できる形で残すこと自体が重要だと分かります。
記録の質を上げる、現場向けのコツは次の通りです。
- 目盛は「水平・正面」を徹底し、斜め読みを禁止する(当番でブレが出やすい)。
参考)302 Found
- 夜勤帯は特に、記録時刻と測定時刻のズレ(後追い入力)を最小化する。
- “測れない尿”をゼロ扱いにしない(失禁・オムツ・採尿失敗は、別枠で必ず可視化する)。
意外に盲点なのが、容器の「目盛そのものの精度」です。腎臓領域の解説では、蓄尿バッグの目盛りが正しいものはほとんどなく、メスシリンダー測定で10〜15%程度の偽高値になり得る、と指摘されています。つまり、目盛付きであっても“機器側の誤差”があり、バッグ目盛=正解と決めつけると、治療の評価が微妙に狂う可能性があります。
参考)https://www.yakan-hinnyo.com/chart/chart04.php
尿量測定容器と蓄尿の手順
蓄尿(一般に24時間尿)は、尿量測定容器の運用が「検査の成否」を左右する代表例です。看護用語集でも、一定期間(一般的に24時間)専用容器に尿を溜め、1日の排尿量測定と成分検査に用いる、と整理されています。さらに手順として「開始時刻の排尿は捨てる」「以後すべて溜める」「24時間後に採って終了」という流れが示され、開始と終了の取り違えが起きやすい構造だと分かります。
病院の検査説明書でも、最初の排尿は捨て、その後の尿はすべて蓄尿袋/蓄尿容器に入れること、翌日開始時刻と同時刻に尿意がなくても採尿して終了することが明記されています。さらに「排便時も忘れずに採尿」など、現場では抜けやすいポイントも強調されています。尿量の読み取りは、蓄尿袋を容器から出して床から持ち上げて目盛りを読むよう指示があり、読み方まで含めて手順化されている点が重要です。
実務では、次の“ありがちな失敗”が混ざると、24時間尿が一気に不正確になります。
- 開始時刻の尿を捨て忘れる(開始条件が崩れる)。
参考)蓄尿【ナース専科】
- 終了時刻の尿を採り忘れる、または遅れる(蓄尿時間がずれる)。
- 尿を一部こぼす、別容器に残す(全量性が崩れる)。
あまり知られていないが効く対策として、「患者説明を“図で再現”する」ことがあります。慶應義塾大学病院の説明書では、開始・終了時刻、捨てる/溜めるの違い、提出前に混ぜる、などが具体的に示されています。文章だけでなく“やる順番”が視覚化されていると、患者側の理解が上がり、結果としてスタッフの回収・確認負担も減ります。
蓄尿の方法(開始・終了、混和、尿量測定の注意)がまとまっている参考。
慶應義塾大学病院:蓄尿方法説明書(24時間尿の手順と尿量の読み方)
尿量測定容器と採尿バッグの誤差
「尿量測定容器=目盛があれば安心」と考えたくなりますが、採尿バッグは特に注意が必要です。腎臓領域の解説では、蓄尿バッグの目盛りが正しいものはほとんどなく、メスシリンダーで測定すると10〜15%の偽高値になると述べています。つまり、バッグ目盛の数値は“参考値”として扱い、トレンド評価に寄せる姿勢が安全です。
さらに同資料では、メスシリンダーで測り直す行為自体が、尿をこぼしたり白衣・手が尿で汚染されたりする点で望ましくないとも指摘されています。これは精度と感染リスクのトレードオフが現場で発生する、という非常にリアルな話です。精度を上げる目的で動作が増えるほど、曝露機会が増えることを意識する必要があります。
対策は「高精度の測定」だけでなく、「誤差が出る前提での運用設計」に寄せた方がうまく回ります。
- バッグ目盛は“絶対値”ではなく“変化(増減)”の把握に使う(例:1時間尿量の推移)。
- 重要判断(急性腎障害評価、厳密な出納管理など)は、測定法を統一し、可能なら精密尿量計の読み方も統一する。
- 測定者が複数いる病棟では、読み方(水平・正面)を申し送り事項にする。
意外な論点として、24時間尿の一部比例採取器(ユリンメートP®など)のように、操作が正しければ誤差が比較的小さい仕組みもありますが、高齢者では操作ミスで大きな誤差が出うるため“練習が必要”とされています。つまり、機器を変えても人間工学の壁は残り、導入時教育が精度を決める、ということです。
蓄尿器(比例採取の仕組みや誤差の注意)がまとまっている参考。
日本腎臓学会誌:蓄尿と蓄尿器について(蓄尿バッグ目盛の誤差、比例採取器の注意)
尿量測定容器と感染対策と使い捨て
尿量測定容器の運用は、手指・環境・リネンを介して汚染が広がりやすい業務です。だからこそ、感染対策は「洗浄を頑張る」以外に「そもそも洗浄工程を減らす」という発想も有効です。使い捨て採尿容器は洗浄が不要で、感染リスク低減に役立つ、という商品説明もあり、ディスポ運用が現場のリスクを下げる方向に働くことが分かります。
ただし使い捨てであっても、捨て方が雑だと意味がありません。蓄尿の説明書でも、混ぜたあと提出分を移し、残りの尿や蓄尿袋、紙コップは捨てる、という流れが明記されています。これは“必要なものだけ提出し、不要物は速やかに廃棄して汚染滞留を作らない”という感染対策の基本に沿っています。
現場で実装しやすい感染対策の工夫です。
- 測定エリア(尿量測定容器の置き場)を固定し、持ち運び距離を減らす(環境汚染の拡散を減らす)。
- “測る→記録→廃棄/保管”の動線を一筆書きにし、逆戻り動作を減らす。
- 目盛を読む際に容器を必要以上に傾けない(こぼれ・飛散を減らす)という意味でも、水平・正面の読みが安全側に働く。
尿量測定容器と体重測定の独自視点
検索上位の解説では「目盛を読む」「蓄尿する」という話が中心になりがちですが、実務では“目盛が信用できない/読めない場面”が必ず出ます。そこで独自視点として提案したいのが、「尿量を体重(重さ)でバックアップする」発想です。腎臓領域の解説でも、蓄尿バッグごと秤量しg(kg)で尿量を記載する方法に触れられており、一般的ではないが選択肢として存在します。
この方法が効くのは、次のような状況です。
- バッグ目盛が読みにくい(夜勤の照度、視力、結露、表示の薄さなど)。
- こぼすリスクを増やさずに“再計測”したい(移し替えは汚染・曝露が増える)。
- 連続的な出納管理で、概算でもよいから“再現性”を優先したい(同じ秤・同じ手順なら比較がしやすい)。
もちろん注意点もあります。バッグや付属品の重量(風袋)が一定であること、測定単位の取り決め、秤の設置場所(清潔・不潔動線)など、運用を作らないと混乱します。とはいえ「目盛の誤差が避けられない」という前提を共有できている病棟ほど、重さ測定は“最終手段”として現場を救う可能性があります。
