尿道括約筋を鍛える男性のトレーニング
男性の尿道括約筋と骨盤底筋の関係
男性の尿道括約筋は、骨盤底筋群の一部として尿を我慢する重要な役割を担っています。骨盤底筋群は、尿道括約筋だけでなく、肛門挙筋や恥骨直腸筋などで構成されており、骨盤の底で膀胱や尿道を支えています。加齢や前立腺肥大症などの影響でこれらの筋肉が弱まると、尿もれや尿失禁といったトラブルが発生しやすくなります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8743604/
特に男性は女性よりも尿道が長く、前立腺が尿道を取り囲む構造になっているため、前立腺の状態が排尿に大きく影響します。前立腺肥大症により尿道が圧迫されると、膀胱が傷んで過活動膀胱という状態になり、急な尿意や尿もれが起こりやすくなります。骨盤底筋を鍛えることで、これらの症状を改善できる可能性があります。
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尿道括約筋を鍛える骨盤底筋トレーニングの基本
骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)は、尿道括約筋を含む骨盤底筋群を鍛えるための効果的な方法です。基本的なやり方は、仰向けに寝て足を肩幅に開き、両膝を軽く立てて体をリラックスさせた状態から始めます。この姿勢のまま、肛門まわりの筋肉を10〜15秒ほど締め、肛門、尿道を締めて陰部全体をじわじわっと引き上げるイメージで行います。
締めた後は30〜40秒ほど体の力を抜き、全身をリラックスさせます。このサイクルを10回繰り返すことが推奨されており、最初はきつい場合は5秒程度から始めて、徐々に時間を延ばしていくとよいでしょう。トレーニングは1日数回に分けて5セット以上行うことが効果的です。
参考)骨盤底筋訓練
骨盤底筋トレーニングの詳細な実践方法と図解(ライフリー公式サイト)
男性の尿もれ原因と骨盤底筋トレーニングの効果
男性の尿もれの主な原因は、身体機能の衰え、肥満、前立腺肥大症などの病気が挙げられます。加齢や筋力の衰えによって骨盤底筋群が緩むと、尿道括約筋が十分に機能せず、尿もれが起こりやすくなります。また、メタボリック症候群も動脈硬化を誘発し、膀胱や尿道の血流を悪化させるため、排尿トラブルの要因となります。
参考)骨盤底筋体操
骨盤底筋トレーニングを実施した調査では、2ヶ月以上継続した人のうち66.6%が尿もれの症状が改善したと報告されています。また、尿もれが改善した人のうち約6割が毎日1回以上トレーニングを実施していたことがわかっています。このことから、継続的なトレーニングが効果的であることが実証されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6858802/
腹圧性尿失禁や過活動膀胱に対しても、骨盤底筋体操は有効な治療法として推奨されており、薬物療法と組み合わせることでより高い効果が期待できます。
参考)尿失禁の種類と原因〜効果的な対策と治療法を専門医が解説
尿道括約筋トレーニングで効果が出るまでの期間と継続のコツ
骨盤底筋トレーニングを始めてから効果が現れるまでには、一般的に2〜3ヶ月程度の期間が必要です。骨盤底筋は普段なかなか使わない筋肉のため、正しい方法で行うことが重要であり、即効性はないため途中でやめてしまう方も少なくありません。しかし、毎日根気よく続けることで確実に効果が現れます。
参考)https://tokyoyamato-hp.com/wp-uploads/kotsubantaisou-male.pdf
継続するためのコツは、日常生活の中に組み込むことです。おやすみ前に必ず行う、運動の前後に行うなど、習慣化すると長続きしやすくなります。また、仰向けだけでなく、座った姿勢や立った姿勢でも行えるため、電車やオフィスなどでも気軽にできます。
トレーニングを行う際の注意点として、力んでしまうと逆効果になるため、腹筋や臀部の筋肉に力を入れず、骨盤底筋だけを意識することが大切です。また、静かでゆったりとした呼吸を心がけ、腹部が極端に膨らんだりへこむのは避けるべきです。
参考)締め方がわからない!骨盤底筋トレーニングを正しくマスターして…
前立腺肥大症と尿道括約筋の関係を知る
前立腺肥大症は、50歳以上の男性に多く見られる疾患で、前立腺が肥大することで尿道が圧迫され、排尿障害や尿もれが起こります。前立腺肥大により尿道が圧迫されると、尿が出づらくなり、膀胱が傷んでしまいます。すると、脳からの指令がうまく膀胱に伝わらなくなり、膀胱が勝手に収縮する過活動膀胱という状態になります。
参考)https://www.mdpi.com/2077-0383/10/24/5788/pdf
前立腺肥大症による尿もれ対策として、骨盤底筋トレーニングは有効な選択肢の一つです。前立腺摘出術後の尿失禁に対しても、骨盤底筋トレーニング(PFMT)は効果的であることが多くの研究で報告されています。ただし、前立腺を取り出した後、6ヶ月以上経過しても尿もれが改善しない場合は、人工尿道括約筋植込術などの外科的治療を検討する必要があります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6502040/
前立腺肥大症の予防や症状の軽減には、適度な水分摂取、便秘の解消、肥満の改善なども重要です。特に肥満がある人では減量すると腹圧性尿失禁が改善することが知られています。
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日常生活で尿道括約筋を意識した改善法
骨盤底筋トレーニング以外にも、日常生活の中で尿道括約筋を意識した改善法がいくつかあります。まず、膀胱訓練があり、これは尿意を感じてもすぐにトイレに行かず、少しずつ我慢する時間を延ばしていく方法です。ただし、我慢しすぎると膀胱の排尿する力が弱まることがあるため、適度な範囲で行うことが重要です。
参考)https://www.kissei.co.jp/urine/disease/bph.html
水分摂取の調整も効果的な対策の一つです。コーヒーやお茶などカフェインを含む飲料は腎臓の血流を促進して尿量を増やすため、控えめにすることが推奨されます。また、夜間頻尿に悩む方は、就寝前の水分摂取を控えることで症状が改善することがあります。
参考)頻尿・尿漏れを自力で治すために絶対やってほしいこと6選
生活習慣の改善として、便秘の解消も重要です。直腸に便がたまりすぎると骨盤底筋に負担がかかり、尿もれの原因になることがあります。規則正しい食生活と適度な運動を心がけることで、便秘を予防し、尿トラブルの改善につながります。
肥満の改善も尿もれ対策として非常に効果的です。体重が増えてから尿もれが始まった場合、元の体重に戻すことで失禁が改善することが多く報告されています。減量によって腹圧が軽減され、骨盤底筋への負担が減るため、尿道括約筋が本来の機能を取り戻しやすくなります。
参考)腹圧性尿失禁について