のう胞状網膜剥離と網膜剥離の原因と治療

のう胞状網膜剥離と原因と治療

のう胞状網膜剥離:臨床で迷う3点
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まず「裂孔原性」かを決める

裂孔原性は進行が速く、黄斑部へ及ぶ前の紹介・手術タイミングが予後を左右します。

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検査は眼底+OCT+超音波の組合せ

OCTは網膜剥離や層間分離などの同定に有用で、非侵襲的に反復評価できます。

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「髄液が関与する非裂孔原性」という例外

視神経乳頭部先天異常などでは、脳脊髄圧の変動と網膜下液が連動する報告があり、眼科単独の発想だと見落としやすい点です。


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のう胞状網膜剥離の原因:裂孔原性と後部硝子体剥離

のう胞状網膜剥離という語は臨床現場では「丈が高く(bullous)、袋状にふくらんだ網膜剥離」を指して使われることが多く、典型は裂孔原性網膜剥離の進展例として説明されます。裂孔原性では、網膜に裂孔ができ、その孔から液体が流入して神経網膜が基底側から剥がれる、という機序が基本です。

中高年に多いパターンとして、後部硝子体剥離の際に硝子体牽引が強い部位で網膜裂孔が形成され、液化した硝子体液が流入して剥離が進む、という説明が実臨床では最も腑に落ちやすいでしょう。実際、上方の弁状裂孔が原因となり「胞状の網膜剥離」になる例が提示されています(図説としての言及)。semanticscholar+1​

一方で若年者では、格子状変性などで生じた萎縮円孔が背景にあり、硝子体の液化が進んでいないため液体流入が遅く、進行が緩徐という整理が一般的です。

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/e26f4176b7b8296cb0cc5ad484a5680648d5e79d

この「若年は緩徐・中高年は速い」という対比は、患者説明だけでなく、紹介の緊急度判断にも直結します。特に“のう胞状”と表現されるほど丈が高い場合は、液体流入が勢いよく進んでいる状況を疑い、裂孔探索(周辺部の丁寧な観察)と早期介入の議論が必要になります。

のう胞状網膜剥離の症状:飛蚊症・光視症・視野欠損と黄斑部

症状の柱は、飛蚊症、光視症、視野欠損、視力低下、変視症で整理すると現場でぶれません。

飛蚊症は、裂孔を介して網膜色素細胞が硝子体中に散布されることで生じうる、という説明が患者の納得感につながります。

光視症は牽引がかかっているときに起きる、とされ、裂孔形成前後のサインとして拾い上げたい症状です。

重要なのは、視力低下や変視症は「黄斑部まで剥離が及んだ段階」で自覚されやすく、すでに予後に影響し得るフェーズに入っている点です。

したがって医療従事者としては、視力低下が出る前に拾いやすい“飛蚊症+光視症+視野の違和感”の組合せを問診テンプレに落とし込むことが、結果的に手術成績(黄斑温存率)に寄与します。加えて、視野欠損は「剥離が黄斑部に近づいたときに自覚しやすい」とされるため、訴えが出た時点で時間勝負であることをチームで共有してください。

のう胞状網膜剥離の検査:OCTと眼底と超音波

検査は、散瞳眼底検査(裂孔探索)を中心に、OCTと必要に応じた超音波を組み合わせるのが実務的です。OCTは、従来の診察だけでは難しかった網膜断面の観察を可能にし、網膜剥離を含む病変の発見や微細変化の確認に有用と説明されています。

また、糖尿病網膜症などの文脈でも、OCTで網膜剥離を同定でき、非侵襲的で反復の経過観察に向く、という整理がされています(疾患横断的に使える“検査の強み”として押さえておく価値があります)。

のう胞状(丈が高い)剥離は、眼底所見としては「袋状に盛り上がる」形で把握できますが、併存病変(黄斑円孔、黄斑上膜、層間分離など)を疑う場面ではOCTが説明の共通言語になります。webview.isho+1​

透光体混濁や小児例などで眼底観察が難しい場合、超音波が助けになるケースがあります。実際に小児例の報告では、術後評価として超音波で網膜剥離の検出有無が述べられています。

のう胞状網膜剥離の治療:硝子体手術・ガス・体位

裂孔原性網膜剥離の治療は、硝子体手術と網膜復位術(強膜内陥術/バックリング)が代表で、現在は裂孔原性の多くで硝子体手術が選択される、という整理が提示されています。

硝子体手術では、裂孔を牽引している硝子体を切除し、眼内を空気に置換して裂孔から排液し、裂孔周囲にレーザー(光凝固)を行い、その後に空気やSF6、C3F8などのガスを注入する流れが説明されています。

術後はガスの浮力を利用して網膜を内側から押さえるため、裂孔位置に応じた体位保持が重要で、飛行機搭乗や登山を控える注意喚起も必要になります(気圧変化でガス膨張→眼圧上昇のリスク)。

また、黄斑部が剥離しているかどうかが術後視機能を大きく左右し、黄斑部剥離がある場合は復位しても視力が完全に戻らないことがある、という点は医療者側が一貫して説明しておくべき核心です。

「丈が高い=のう胞状」に近い所見は進行例であることが多く、紹介元・手術施設・病棟の体位指導が同じ前提で動けるよう、症状発現からの時間、黄斑オン/オフ、裂孔位置(上方か否か)を要約して引き継ぐとミスが減ります。

のう胞状網膜剥離の独自視点:視神経乳頭コロボーマと脳脊髄圧

検索上位の一般解説では「裂孔原性(硝子体牽引)」が中心になりがちですが、医療従事者が知っておくと判断が変わる“例外”があります。視神経乳頭を含む脈絡膜コロボーマなどの先天異常を伴う症例で、非裂孔原性の網膜剥離(胞状の網膜剥離)が出現し、網膜下液が増減を繰り返した報告があります。

その症例では、Dandy-Walker症候群による脳脊髄圧亢進が背景にあり、脳室腹腔短絡術で脳脊髄圧が下がった後に網膜剥離が著明に減少した、と記載されています。

さらにMRIの所見として、網膜下液が髄液の信号輝度と同等であった可能性に触れ、「くも膜下腔と網膜下腔の異常交通」を推測している点が臨床的に示唆的です。

このタイプは、裂孔探索や硝子体牽引の説明だけで完結しないため、「眼底に裂孔が見当たらない」「乳頭部先天異常がある」「神経症状や頭囲拡大など中枢の背景が疑わしい」といった条件がそろう場合、眼科—小児科—脳外科の連携を早めに組む価値があります。

参考:網膜剥離の原因(若年/中高年の違い)、症状、硝子体手術とバックリング、ガスと体位、禁忌(飛行機・登山)など臨床説明に使える要点

網膜剥離の手術(硝子体手術・網膜復位術)|茨城県水戸市の小沢…

参考:視神経乳頭コロボーマ+Dandy-Walker症候群で、非裂孔原性の胞状網膜剥離が脳脊髄圧の低下で減少した症例報告(機序の考察が詳しい)

https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/100_832.pdf