脳波計 主要メーカーと商品の特徴を比較

脳波計の主要メーカーと商品特徴

脳波計選びのポイント
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用途に合わせた選択

ルーチン検査用、長時間モニタリング用、研究用など、目的に応じた機種選びが重要です。

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システム連携性

電子カルテとの連携や他の医療機器との互換性を確認しましょう。

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データ品質と解析機能

ノイズ除去性能や波形解析機能など、診断精度に直結する性能をチェック。

医療機関や研究施設において、脳波計は脳の電気的活動を測定・記録する重要な医療機器です。かつてはアナログ(ペン書き)タイプが主流でしたが、現在ではデジタル化が進み、ペーパーレスタイプやウェアラブルタイプなど、選択肢が大幅に拡大しています。さらに、電子カルテとの連携機能を持つ製品も増え、患者データの管理効率が向上しています。

本記事では、医療現場で活用されている脳波計の主要メーカーとその代表的な製品の特徴を詳しく解説します。各製品の機能や性能を比較することで、施設の規模やニーズに合った脳波計選びの参考になれば幸いです。

脳波計の日本光電工業製品と特徴的な機能

日本光電工業株式会社は、国内市場の90%という圧倒的なシェアを誇る世界的な脳波計メーカーです。同社の製品は120カ国以上の医療現場で使用されており、高い信頼性と品質で知られています。

同社の代表的な脳波計「EEG-1200シリーズ」は、「だれでも」「どこでも」「らくらく使える」をコンセプトに開発された記録器付きデジタル脳波計です。コンパクト設計で移動が容易であり、測定ナビゲーション機能により検査手順をアイコン表示するため、経験の少ないスタッフでもスムーズに操作できます。

特筆すべき機能としては、ECGフィルタ機能があります。これにより、脳波に混入した心電図を全チャネル一括で除去できるため、より純粋な脳波データの取得が可能です。ディスプレイには最大64チャネルの脳波波形を表示でき、紙記録と同じ大きさに調節して表示することもできるため、従来の紙記録から移行するユーザーにも違和感なく使用できます。

また、「EEG-1290 ニューロファックス」は、限られたスペースでも設置しやすいコンパクト設計が特徴です。無線タイプの入力ユニットに対応しており、救急外来などスペースが限られた場所にも設置可能です。電極接続箱(JE-921A)を使用することで、外部ノイズの影響をほとんど受けず、大型機と同レベルの脳波測定を実現します。

日本光電工業の脳波計は、データの品質を4段階評価し、SQI値として脳波上に表示する機能も備えています。波形品質がひと目でわかるため、データ参照時に非常に役立ちます。さらに、再生端末を使って脳波計から離れた場所でも測定状況の確認や操作ができるため、病棟やICUにいる患者の変化にいち早く気づき、迅速に対応できる点も大きなメリットです。

脳波計のフクダ電子製品とオーストラリア技術の融合

フクダ電子株式会社は、オーストラリアのCompumedics社の製品を輸入販売しており、高解像度のEEGシステムを提供しています。同社の「Grael EEG」は、日々のルーチン検査から長時間ビデオ脳波まで対応した多機能システムです。

Grael EEGアンプユニットの最大の特徴は、高入力範囲と24ビット分解能を備えたDC結合アンプを採用している点です。これにより、表面電極だけでなく、皮質電極や深度電極からの脳波生理信号の増幅とデジタル化を高精度で実現しています。また、付属品を追加することで、心電波形・心拍数・呼吸波形の記録や再生も可能となり、総合的な生体情報モニタリングが行えます。

フクダ電子の製品は、特に神経内科や脳神経外科などの専門診療科において、てんかんの診断や脳機能マッピングなどの高度な臨床応用に適しています。オーストラリアの先進技術と日本のサポート体制を組み合わせることで、高性能かつ安定した脳波測定環境を提供しています。

脳波計のPGV社製パッチ式製品と革新的な計測方法

PGV株式会社は、大阪大学関谷毅教授の研究成果をもとに開発された革新的なパッチ式脳波計を提供しています。従来の脳波計とは異なり、頭部に電極を複数取り付ける必要がなく、額に貼るだけで脳波測定が可能な画期的な製品です。

同社の脳波計は、Storageモードを選択することで本体にデータを保存できるため、他の機器に接続する必要がなく、被験者は自由な姿勢で計測できます。また、連携したタブレットへデータを送信するWirelessモードも搭載しており、リアルタイムでのデータ確認も可能です。

手のひらサイズで42gという軽量設計は、長時間の装着でも被験者への負担が少なく、特に睡眠中の脳波計測に適しています。従来の脳波計では、電極の装着に専門的な技術が必要でしたが、PGV社の製品は誰でも簡単に装着できるため、専門スタッフがいない環境でも使用可能です。

この革新的な脳波計は、睡眠障害の診断や日常生活における脳活動のモニタリングなど、従来は困難だった場面での脳波測定を可能にしています。特に在宅医療や遠隔医療の分野での活用が期待されています。

脳波計のガデリウス・メディカル製品と長時間モニタリング機能

ガデリウス・メディカル株式会社は、クリニカル脳波計「Routine EEG ソリューション」と、長時間脳波モニタリングの「LTM ソリューション」という2種類の製品ラインナップを展開しています。どちらの製品もBrain Monitorをはじめとする4種類のアンプと組み合わせることが可能です。

同社の製品の大きな特徴は、アンプとビデオカメラがDHCPを使って自動検出・接続できる点です。これにより、複雑な設定作業なしにスムーズなセットアップが可能となり、医療スタッフの負担を軽減します。また、カートは人間工学に基づいて高さ調整ができるため、長時間の操作でも身体への負担が少なく、使用者の疲労を軽減します。

特に「LTM ソリューション」は、てんかん発作の長時間モニタリングに特化しており、発作時の脳波変化とビデオ映像を同期して記録・解析できる機能を備えています。これにより、発作の種類や頻度、発作時の行動パターンなどを詳細に分析することが可能となり、より精密な診断と治療計画の立案に貢献します。

ガデリウス・メディカルの製品は、特にてんかんセンターや神経内科病棟など、長時間の脳波モニタリングが必要な医療施設に適しています。高い信頼性と使いやすさを兼ね備えた製品設計により、医療スタッフの業務効率向上と患者ケアの質の向上を同時に実現しています。

脳波計の研究用途向け製品と最新技術動向

研究用途向けの脳波計は、医療診断用とは異なる特性を持っています。株式会社クレアクトが提供するABM社の「B-Alert X10」は、長時間の計測や自動車運転などの振動がある環境でも高品質の脳波計測が可能な製品です。通信部分も含めたセンサー全体でわずか110gという軽量設計で、被験者への負担が少なく、長時間安定した高精度計測が可能です。

また、同社が提供する「アルタイル – 8ch」は、10-20システムに基づいた電極配置のヘッドセットタイプの脳波計で、ドライ式のため事前準備が不要です。サンプリングレートは1KHzで、分解能は24ビットという高性能を誇ります。DCから262Hzまでの幅広い帯域で脳波計測が可能で、一回のフル充電で最大10時間使用できるため、長時間の実験にも対応できます。

研究用脳波計の最新技術動向としては、マルチモーダル計測の普及が挙げられます。ポルトガルPlux社の「biosignalsplux」は、脳波だけでなく、SpO2やfNIRSなどの血流関係のセンサーや、加速度、ゴニオメータなどの動きを計測できるセンサーを自由に組み合わせて使用できる製品です。これにより、脳活動と他の生体情報を同時に計測・分析することが可能となり、より包括的な研究が行えます。

睡眠研究の分野では、プロアシスト社の「脳波センサーZA-Ⅹ」が注目されています。このセンサーは、記録したデータを解析し、睡眠時間や睡眠深度、REM睡眠の時間、中途覚醒時間などを詳細に分析できます。脳波と筋電図を同時に計測できるポータブルな小型脳波計として、睡眠ビジネスや研究をサポートしています。

研究用脳波計の選定においては、研究目的に合わせたサンプリングレート、チャンネル数、ノイズ除去性能、データ解析ソフトウェアの機能などを総合的に検討することが重要です。特に事象関連電位(ERP)やブレインコンピューターインターフェース(BCI)の研究では、高い時間分解能と空間分解能が求められるため、それらの性能指標を重視する必要があります。

脳波計選びで重視すべきポイントと施設別最適製品

脳波計を選ぶ際には、施設の規模や用途に応じていくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。まず第一に検討すべきは、外部システムとの連携性です。近年の医療業界ではIT化が進んでおり、電子カルテとの連携機能は業務効率化に大きく貢献します。脳波データと他の検査結果を容易に比較できれば、診察や処置方法の判断がスムーズになります。

次に重要なのは、機器の設置スペースと移動性です。大規模病院では専用の検査室を設けることができますが、クリニックや小規模病院では限られたスペースで運用する必要があります。日本光電工業の「EEG-1290 ニューロファックス」のようなコンパクト設計の製品や、無線タイプの入力ユニットに対応した製品は、スペースが限られた環境に適しています。

データの品質と解析機能も重要な選定基準です。ノイズ除去性能や波形解析機能は診断精度に直結するため、ECGフィルタ機能や波形品質評価機能などが搭載された製品を選ぶことで、より信頼性の高い診断が可能になります。

施設別の最適製品としては、以下のような選択肢が考えられます。

  1. 大規模病院・専門センター向け。
    • 日本光電工業の「EEG-1200シリーズ」:多チャンネル対応と高度な解析機能を備え、様々な検査に対応可能
    • フクダ電子の「Grael EEG」:高解像度システムで専門的な診断に適している
  2. 中小規模病院・クリニック向け。
    • 日本光電工業の「EEG-1290 ニューロファックス」:コンパクト設計でスペースを取らず、基本的な検査に対応
    • PGV社のパッチ式脳波計:簡易的な検査や睡眠評価に適している
  3. 研究機関向け。
    • ABM社の「B-Alert X10」:長時間計測や動的環境での測定に適している
    • 「アルタイル – 8ch」:事象関連電位やBCI研究に適した高性能モデル
  4. 在宅医療・遠隔医療向け。
    • PGV社のパッチ式脳波計:簡単に装着でき、患者自身での操作も可能
    • プロアシスト社の「脳波センサーZA-Ⅹ」:睡眠障害の在宅モニタリングに適している

脳波計の選定においては、初期導入コストだけでなく、消耗品や保守サービスなどのランニングコストも考慮することが重要です。日本光電工業の製品は、購入後も電極やセンサなどの消耗品が必要になりますが、保守サービスも充実しており、長期的な安定運用が期待できます。

また、スタッフの技術レベルや教育体制も考慮すべき要素です。操作が複雑な高機能モデルよりも、測定ナビゲーション機能などユーザーフレンドリーな機能を備えた製品の方が、スタッフの負担軽減につながる場合もあります。

脳波計技術は日々進化しており、特にAI解析やクラウド連携などの新機能が登場しています。導入時には将来的なアップグレード可能性や拡張性も視野に入れた選定が望ましいでしょう。

脳波計の最新技術と将来展望

脳波計の技術は近年急速に進化しており、従来の医療機関での使用だけでなく、新たな応用分野も広がっています。最新の技術トレンドとしては、ウェアラブル化とAI解析の融合が挙げられます。

ウェアラブル脳波計の進化により、日常生活中の脳活動を長時間モニタリングすることが可能になっています。PGV社のパッチ式脳波計のように、装着の簡便さと計測の正確性を両立した製品が登場しており、睡眠障害の診断や認知機能のモニタリングなど、従来は病院でしか行えなかった検査が在宅環境でも実施できるようになっています。

また、AIを活用した脳波解析技術の発展も注目されています。膨大な脳波データからパターンを認識し、てんかん発作の予測や認知症の早期診断などに応用する研究が進んでいます。特に、機械学習アルゴリズムを用いた自動波形解析機能は、医師の診断をサポートし、診断精度の向上と業務効率化に貢献しています。

クラウド連携機能を備えた脳波計も増えており、計測データをクラウド上で管理・解析することで、複数の医療機関間でのデータ共有や遠隔診断が容易になっています。これにより、専門医の少ない地域でも高度な脳波診断が受けられる環境が整いつつあります。

研究分野では、脳波とfMRIやfNIRSなどの他の脳機能イメージング技術を組み合わせたマルチモーダル計測が進んでいます。これにより、脳の電気的活動と血流動態を同時に計測することで、より詳細な脳機能の解明が期待されています。

将来的には、ブレインコンピューターインターフェース(BCI)技術の発展により、脳波を用いた意思伝達装置や義肢制御システムなど、医療を超えた応用分野も広がると予想されています。すでに一部の研究用脳波計は、BCIアプリケーション向けの機能を備えており、この分野の発展を加速させています。

また、脳波計の小型化・低コスト化が進むことで、ヘルスケア分野での普及も期待されています。ストレス管理や集中力トレーニングなど、日常的な健康管理ツールとしての活用も視野に入れた製品開発が進んでいます。

脳波計技術の進化は、神経科学研究の発展と医療診断の精度向上に大きく貢献するとともに、新たな健康管理の形を創出する可能性を秘めています。医療従事者は、これらの最新技術動向を把握し、自施設のニーズに合った製品選定を行うことが重要です。

日本光電工業の脳波計市場シェアと品質への取り組みについての詳細情報
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