ニルマトレルビル・リトナビル配合剤の併用禁忌と適正使用

ニルマトレルビル・リトナビル配合剤の適正使用

腎機能正常者に全量投与しても効果が出ません。

この記事の3つのポイント
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強力なCYP3A阻害薬との配合

リトナビルがニルマトレルビルの血中濃度を維持するため、多数の併用禁忌・注意薬が存在

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腎機能に応じた用量調節が必須

eGFR 30~60未満では半量に減量、30未満では投与非推奨となる

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症状発現後5日以内の投与開始

早期投与により入院率と死亡率を減少させる効果が期待できる

ニルマトレルビル・リトナビル配合剤の基本情報と作用機序

ニルマトレルビル・リトナビル配合剤(商品名:パキロビッドパック)は、COVID-19に対する経口抗ウイルス薬として2022年2月に特例承認された薬剤です。成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児に使用可能で、ニルマトレルビル1回300mg(2錠)とリトナビル1回100mg(1錠)を同時に1日2回、5日間経口投与します。kegg+1

ニルマトレルビルはSARS-CoV-2の3CLプロテアーゼを阻害することでウイルスの複製を抑制する主薬です。一方、リトナビルはニルマトレルビル自体の効果を持たず、CYP3Aを介したニルマトレルビルの代謝を阻害し、血中濃度を維持するためのブースト剤(薬物動態学的増強因子)として配合されています。covid19oralrx-hcp+2

ニルマトレルビルの半減期は6.05時間であり、リトナビルとの併用により適切な血中濃度が維持されます。つまり効果を発揮するには両剤の同時投与が必須です。

参考)https://www.okiyaku.or.jp/item/3363/large/20220228.pdf

この組み合わせは治療効果を高める一方で、リトナビルの強力なCYP3A阻害作用により、多くの薬剤と相互作用を起こすリスクがあります。そのため処方前の徹底した薬剤チェックが不可欠ですね。

参考)ニルマトレルビルとリトナビルの併用は新型コロナウイルス感染症…

ニルマトレルビル・リトナビル配合剤と腎機能障害患者への投与

腎機能障害患者では、ニルマトレルビルのAUCが大幅に上昇することが確認されています。中等度の腎機能障害患者(eGFR 30mL/min以上60mL/min未満)では87%、重度の腎機能障害患者では204%もAUCが上昇します。

このため中等度腎機能障害患者には、ニルマトレルビル1回150mg(1錠)とリトナビル1回100mg(1錠)を同時に1日2回、5日間投与する減量が必要です。注意点として、ニルマトレルビル錠のみを減量し、リトナビル錠は通常量を維持します。jpeds.or+2

重度の腎機能障害患者(eGFR 30mL/min未満)への投与は推奨されません。血中濃度が過度に上昇し、副作用リスクが高まるためです。

処方時には必ず患者のeGFRを確認し、腎機能に応じた適切な用量調節を行うことが患者の安全確保につながります。既存のHIV治療でリトナビルまたはコビシスタットを服用中の患者では、リトナビルの用量調節は不要という点も覚えておけばOKです。

参考)https://www.covid19oralrx-hcp.jp/assets/pdf/pax51n006c-list-of-pre-administration-confirmation-items-in-alphabetical-order-integrated-version-230808-2308-revised-version-of-the-supplement.pdf

腎機能障害時の詳細な調剤方法については、製薬会社が提供する適正使用ガイドを参照してください

ニルマトレルビル・リトナビル配合剤の併用禁忌薬と相互作用

リトナビルは強力なCYP3A阻害薬であるため、CYP3Aで代謝される多数の薬剤と重大な相互作用を引き起こします。

併用禁忌薬には以下のようなものがあります。

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主な併用禁忌薬剤

CYP3A誘導薬であるカルバマゼピンを併用すると、ニルマトレルビルのAUCは44.5%まで低下し、十分な治療効果が得られません。逆にCYP3A阻害薬のイトラコナゾールとの併用ではAUCが38.8%上昇し、副作用リスクが増加します。

また、ニルマトレルビルはP-gpの基質かつ阻害薬でもあるため、P-gpの基質となる薬剤(アファチニブなど)の血中濃度を上昇させる可能性があります。アファチニブとの併用時は、本剤をアファチニブと同時またはアファチニブ投与後に投与することが推奨されます。

処方前には必ず「適格性情報チェックリスト」を活用し、患者の服用中の全ての薬剤(処方薬、市販薬、サプリメント、ハーブ製品を含む)を確認することが医療安全の基本です。

参考)https://www.mhlw.go.jp/content/000994438.pdf

併用禁忌・併用注意薬剤の詳細な一覧は、厚生労働省が公開する投与前確認項目一覧表で確認できます

ニルマトレルビル・リトナビル配合剤の投与タイミングと有効性

本剤の効果を最大化するには、症状発現後5日以内に投与を開始することが重要です。主要臨床試験では、重症化リスクの高いワクチン未接種の外来患者に対し、症状発現から5日以内に投与した結果、入院率と死亡率の有意な減少が確認されました。passmed+2

試験対象者はデルタ株流行中に登録されたワクチン未接種の高リスク患者で、治療開始5日前までに症状が発現していました。この特定の集団において、本剤は死亡率を減少させ、入院の必要性や28日以内の死亡を減少させる効果を示しました。

オミクロン株流行期以降の入院患者データでは、ほとんどがワクチン未接種で軽度から中等度の症状を有していました。

厳しいところですね。

投与期間は5日間の継続投与が基本であり、途中で服薬を中止すると十分な効果が得られない可能性があります。患者への服薬指導では、症状が改善しても5日間の投与完遂が必要であることを強調する必要があります。

参考)医療用医薬品 : パキロビッド (パキロビッドパック)

早期診断・早期治療の体制構築が、本剤の効果を最大限引き出すための鍵となります。

ニルマトレルビル・リトナビル配合剤の副作用と安全性情報

本剤の主な副作用は味覚不全と下痢・軟便で、発現頻度は1~5%未満です。味覚不全は治療に関連した有害事象として特徴的で、プラセボ群と比較して発現頻度が高いことが確認されています。ubie+2

重大な副作用としては以下が報告されています(いずれも頻度不明):

参考)ニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッドパックⓇ)では、ど…

臨床試験では、治療に関連した有害事象(主に味覚障害と下痢)が増加しましたが、重篤な有害事象は減少する傾向にありました。つまり効果が期待できる患者層では、ベネフィットがリスクを上回ります。

あらゆる有害事象(薬剤と因果関係がないものを含む)の発生件数には、ほとんど影響がありませんでした。

患者には投与開始前に主な副作用について説明し、重篤な症状が現れた場合は直ちに医療機関に連絡するよう指導することが、安全な薬物療法の実践につながります。リトナビルの相互作用による予期せぬ副作用増強の可能性も含め、注意深い観察が必要ですね。

ニルマトレルビル・リトナビル配合剤の処方体制と薬局連携

本剤の処方には特別な登録制度と流通管理体制が整備されています。医療機関は「パキロビッド登録センター」への事前登録が必要で、院内処方または院外処方の選択が可能です。

院外処方を行う場合、医療機関は「パキロビッド対応薬局」に処方箋と「適格性情報チェックリスト」をファクシミリ等で送付します。このとき、事前に電話連絡することが推奨されます(開局時間外は必須)。mhlw+1

パキロビッド対応薬局は、チェックリストを活用して患者の併用禁忌や併用注意薬剤を再確認し、必要に応じて患者のかかりつけ薬剤師・薬局と連携して情報収集を行います。この二重チェック体制が、重大な薬剤相互作用の見逃し防止につながります。

参考)https://www.mhlw.go.jp/content/000896601.pdf

薬局は患者宅等への配送も可能であり、外出困難な患者への迅速な薬剤提供を実現できます。

登録センターの連絡先は0120-661-060(月曜日から土曜日9:00~17:30、日曜日・祝日を除く)で、Webサイト(https://cov19-medicine.force.com/)でも情報確認ができます。

医療機関と薬局の緊密な連携体制の構築が、本剤の安全かつ効果的な使用を支える基盤となります。

厚生労働省が発行する事務連絡文書には、処方から調剤までの詳細な手順が記載されています