ニコチン酸効果と作用機序
ニコチン酸血管拡張作用メカニズム
ニコチン酸による血管拡張作用は、半世紀以上前から医学界で認識されている確立された薬理作用です 。この血管拡張効果は、血管平滑筋細胞においてカルシウムイオンチャネルを介した作用により、血管径を約15~20%拡張させることで実現されます 。
参考)トコフェロールニコチン酸エステル(ユベラN) href=”https://kobe-kishida-clinic.com/metabolism/metabolism-medicine/tocopherol-nicotinate/” target=”_blank” rel=”noopener”>https://kobe-kishida-clinic.com/metabolism/metabolism-medicine/tocopherol-nicotinate/amp;#8211;…
血管拡張のメカニズムとして、プロスタグランジンE2の産生を約30%促進し、微小循環の改善に寄与することが分かっています 。この作用により、末梢血管において血流量が投与前と比較して約40%増加することが臨床研究で確認されています 。
組織酸素分圧は投与2時間後に最大で約25%上昇し、12時間以上にわたって効果が持続するため、末梢循環障害の改善に有効とされています 。ニコチン酸による皮膚潮紅反応は、この血管拡張作用の直接的な現れとして観察される現象です 。
参考)https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc2_hishiryo_water_vitamin_4_250129.pdf
ニコチン酸脂質代謝改善効果
ニコチン酸は脂質代謝において重要な役割を果たし、複数の作用機序により脂質改善効果を発揮します 。末梢脂肪組織における脂肪分解が抑制され、遊離脂肪酸の肝臓への流入が減少した結果、VLDL(超低密度リポタンパク質)の合成が抑制されます 。
参考)ニコチン酸誘導体の作用機序
臨床研究では、II型糖尿病または非糖尿病の高脂血症患者44名を対象とした試験において、ニコチン酸1,500mg を12週間摂取することで、血中トリグリセリドとLDLコレステロールが減少し、HDLコレステロールが増加したことが報告されています 。
参考)ナイアシン
悪玉コレステロール(LDL)値を低下させ、脂質の代謝を改善する一方で、善玉コレステロール(HDL)値が低下しないことが特徴的です 。また、リポタンパク質など脂質代謝関連物質にも影響を与え、動脈硬化の予防効果も期待されています 。
ニコチン酸アミド皮膚効果と美容応用
ニコチン酸アミド(ニコチンアミド)は、皮膚科領域において多面的な効果を発揮することが確認されています 。肌のバリア機能において重要な役割を果たす細胞間脂質の大部分を占めるセラミドの合成を促進し、皮膚のバリア機能向上に寄与します 。
参考)ニコチン酸アミド|こばとも皮膚科|栄駅(名古屋市栄区)徒歩2…
臨床研究では、2%ニコチン酸アミドを4週間連用することで、経皮水分蒸散量(TEWL)が有意に低下し、皮膚表面の水分量が増加することが確認されています 。これにより乾燥肌や敏感肌でバリア機能が低下している患者に対して改善効果が期待できます 。
参考)美肌の万能成分「ナイアシンアミド」完全ガイド – アイシーク…
ニコチン酸アミドは抗炎症作用も有しており、炎症性皮膚疾患(にきびなど)の軽減効果があります 。また、皮脂分泌のバランス調整作用により、皮脂の過剰分泌を抑制する効果も報告されています 。軽度の色素沈着やシミの改善においては、肌のターンオーバーを整え、炎症後の色素沈着リスクを軽減することが知られています 。
ニコチン酸補酵素としての細胞機能
ニコチン酸は体内でNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)およびNADP(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチドリン酸)という補酵素に変換され、細胞の基本的な代謝活動において中心的な役割を果たします 。
参考)ナイアシンの働きと1日の摂取量
このNADを必要とする体内の酵素は400種類以上存在し、人の体で働く酵素の約2割を占めています 。補酵素として、脂肪酸やステロイドホルモンの生合成、ATP産生、DNAの修復や合成、細胞分化など、幅広い反応に関与しています 。
体がエネルギーを生み出す働きの60~70%にニコチン酸が関わっており、食品から摂取した糖質や脂質を燃やしてエネルギーに変える際に必要不可欠な物質です 。細胞の中にあるNADが、食品からとった糖質・脂質・タンパク質の燃焼を促進し、すべての生命活動の源となるエネルギーを産生します 。
ニコチン酸適応症と医療応用の最新知見
ニコチン酸およびニコチン酸アミドは、多くの皮膚疾患の治療に用いられており、ペラグラと関係の深い口角炎、口内炎、舌炎、急・慢性湿疹、接触皮膚炎、光線過敏性皮膚炎の治療に適応があります 。細胞の酸化還元反応における重要な役割から、これらの症状改善に効果を発揮します 。
参考)医療用医薬品 : ニコチン酸アミド (ニコチン酸アミド散10…
最新の研究では、がん治療への応用も注目されています。大阪大学の研究グループは、がん関連線維芽細胞(CAF)に高発現するニコチン酸アミドメチル化転移酵素(NNMT)を精密に制御する標的核酸医薬を開発し、難治がんに対する抗腫瘍効果を示すことを明らかにしました 。
参考)https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2025/20250610_1
また、移植レシピエントの皮膚癌の化学的予防における第3相試験では、ニコチン酸アミド500mgを1日2回、12ヵ月間投与する研究が実施されており、免疫抑制状態にある患者での効果検証が進んでいます 。NAD標的治療として、NAD合成を担う酵素NAMPTの働きを抑制することで、難治がんに対する新規治療法の開発も期待されています 。
参考)NAD標的治療:食事が鍵を握る、難治がんに対する新規治療 href=”https://www.miyagi-pho.jp/mcc/kenkyu/topic/20231214/index.html” target=”_blank” rel=”noopener”>https://www.miyagi-pho.jp/mcc/kenkyu/topic/20231214/index.htmllt;…
通常成人における投与量は、ニコチン酸アミドとして1日25~200mgを経口投与とされており、年齢や症状により適宜増減が行われます 。高齢者では生理機能が低下していることから減量など注意が必要で、妊婦・授乳婦・小児への投与については安全性が確立していないため慎重な判断が求められます 。
参考)https://www.zonnebodo.co.jp/2015/02/04/file/390092_3132002B1034_2_03.pdf