膠質浸透圧をわかりやすく看護師に解説

膠質浸透圧をわかりやすく看護師に向けて解説

膠質浸透圧の基本概念と看護への応用
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膠質浸透圧の定義

血漿タンパク質による浸透圧で、血管内の水分を保持する重要な力

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水分バランスの調節

毛細血管から間質への水分移動を制御し、浮腫を予防する機構

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臨床での重要性

患者の体液管理や輸液療法において必須の知識

膠質浸透圧の基本的なメカニズムと定義

膠質浸透圧とは、血漿中のタンパク質によって生じる浸透圧のことで、血管内に水分を引き寄せる重要な力として働きます。コロイド溶液と純溶媒の間に半透膜を置いた時に、膜の両側に生ずる圧力差として定義され、正常値は約25~28mmHgです。

参考)浮腫はなぜ起きるの?

この現象は、血漿タンパク質が分子量が大きく、毛細血管壁を通過できないため、血管内と間質との間でタンパク質の濃度勾配が生じることによって起こります。血漿タンパク質の中でも、特にアルブミンが膠質浸透圧の約80%を担っており、血液の膠質浸透圧の維持に中心的な役割を果たしています。

参考)アルブミンの働き 一般社団法人日本血液製剤協会

アルブミンは1gで20mLの水を保つことができる能力があり、血管内の水分量を維持するために不可欠な存在です。このため、アルブミン値の低下は直接的に膠質浸透圧の低下を招き、様々な病態を引き起こす原因となります。

膠質浸透圧と毛細血管における水分移動の仕組み

毛細血管における水分移動は、静水圧と膠質浸透圧のバランスによって決定されます。動脈側の毛細血管では、血圧が35mmHgと高く、これが水分を血管外に押し出そうとする力として働きます。一方、膠質浸透圧は25mmHgで、血管内に水分を引き寄せる力として作用します。

参考)いざ、毛細血管の中へ|流れる・運ぶ(5)

動脈側では、押し出す力(35mmHg)から引き寄せる力(25mmHg)を差し引いた10mmHg分の水分が組織に移動します。静脈側では血圧が15mmHgまで低下するため、膠質浸透圧(25mmHg)の方が強くなり、10mmHg分の水分が組織から血管内に戻ります。
この精密なバランスにより、正常な状態では動脈側で出た水分と静脈側で回収される水分が釣り合い、浮腫が発生しません。しかし、このバランスが崩れると間質に水分が貯留し、浮腫という病態を引き起こします。

膠質浸透圧低下による浮腫発生の病態生理

膠質浸透圧の低下は、浮腫発生の主要な原因の一つです。血漿中のアルブミンが減少すると、血管内に水分を保持する力が弱まり、間質に水分が移動して浮腫が生じます。

参考)浮腫(ふしゅ)に関するQ&A

低アルブミン血症による浮腫は、血清アルブミン値が1.5~2.0g/dL未満とかなり低下した場合に起こります。アルブミンの正常値は4.0~5.0g/dLであり、3.5g/dL以下を低栄養状態と判定します。

参考)アルブミン(血液)の基準値と低下した場合の症状

📊 膠質浸透圧低下の主な原因

  • 肝疾患によるアルブミン合成能力の低下
  • 腎疾患によるアルブミンの体外漏出
  • 栄養不良によるタンパク質摂取不足
  • 消化管疾患による蛋白漏出

肝硬変では肝細胞の減少により、食物中のタンパク質をアルブミンに変換する機能が低下し、血漿タンパク質が減少して浮腫や腹水が発生します。腎疾患では、腎機能低下によりタンパク質が尿中に排泄され、同時に血液内のナトリウム増加により浸透圧の変化も生じます。

参考)【浮腫とは?】浮腫の原因、メカニズム、治療・ケア

膠質浸透圧の測定方法と正常値の臨床的意義

膠質浸透圧の測定は、コロイド・オスモメータを用いて実測することが可能です。しかし、臨床現場では簡便式として「COP = 5.23 × C(total protein:mg/dl)- 2.6」の計算式も使用されています。

参考)https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0713.html

近年、人工心肺回路付属の限外濾過膜を用いた簡便な測定方法も開発されており、術中の膠質浸透圧をリアルタイムで把握することが可能になっています。この方法は血漿総蛋白値から算出したCOP値との相関が高く(ICC = 0.784)、臨床応用において有用性が示されています。

参考)新しい膠質浸透圧測定法の臨床応用についての検討

正常な膠質浸透圧は28mmHgで、このうちアルブミンによる分圧が22mmHg、グロブリンによる分圧が6mmHgを占めています。膠質浸透圧の維持は体液バランスを保つことに貢献し、臨床転機の改善が期待できます。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca1981/21/7/21_7_356/_pdf

膠質浸透圧を考慮した看護アセスメントと実践方法

看護師が膠質浸透圧を理解することは、患者の体液管理において極めて重要です。浮腫の評価は、脛骨前面末梢側1/3付近または足背を母指で圧迫し、圧痕の深さを4段階で評価する方法が一般的です。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/footcare/15/2/15_7/_pdf/-char/ja

浮腫の観察ポイント 🔍

  • 圧痕性浮腫:指で押すと凹みが残る状態
  • 非圧痕性浮腫:押しても凹みが残らない状態
  • 部位別の評価:下腿、足背、眼瞼部の観察
  • 体重変化の記録:急激な体重増加は体液貯留のサイン

血清アルブミン値と膠質浸透圧の関係を理解し、検査データから患者の状態を予測することが重要です。アルブミン値が3.5g/dL以下の場合は、浮腫のリスクが高まるため、特に注意深い観察が必要です。

参考)[2] 血清アルブミン(Alb)[albumin]

輸液管理においては、晶質液と膠質液の違いを理解し、患者の状態に応じた適切な選択をサポートすることが求められます。膠質液は膠質浸透圧を持つため、血管内容量の維持により効果的です。

参考)https://www.nakayamashoten.jp/sample/pdf/978-4-521-73711-9.pdf

膠質浸透圧の理解は、心不全、肝疾患、腎疾患患者の看護において特に重要であり、病態に応じた適切なアセスメントと介入につながります。定期的な体重測定、浮腫の評価、血液検査データの解釈を通じて、患者の体液バランスを総合的に把握することが看護師の重要な役割です。