ナウゼリンの効果と作用機序
ナウゼリンのドパミン受容体拮抗作用機序
ナウゼリンの有効成分であるドンペリドンは、末梢のドパミンD2受容体を選択的に阻害することで治療効果を発揮します 。ドパミンは通常、消化管の運動を抑制する働きを持っていますが、ドンペリドンがこの受容体をブロックすることで、胃や十二指腸の蠕動運動が促進されます 。
参考)ナウゼリンの効果・副作用を医師が解説【吐き気止め】 – オン…
脳の化学受容器引金帯(CTZ)では、ドパミンD2受容体の遮断により吐き気の信号が伝達されにくくなります 。重要な特徴として、ドンペリドンは血液脳関門を通過しにくいため、中枢神経系への影響が限定的で、錐体外路症状の発現リスクが低いとされています 。
参考)http://www.igaku.co.jp/pdf/1405_resident-02.pdf
この二重の作用機序により、胃腸の動きを改善しながら同時に吐き気を抑制する効果を発揮します 。
参考)ドンペリドン(ナウゼリン)の効果|宇都宮消化器・内視鏡内科ク…
ナウゼリンの効果発現時間と血中濃度推移
ナウゼリンの効果発現時間は剤形や服用条件により異なります。経口剤(錠剤)では、空腹時投与において服用後約30分で血中濃度が最高に達し、制吐効果が現れ始めます 。胃腸運動の改善効果も比較的早期に発現し、30分から1時間程度で症状の軽減を実感できることが多いです 。
参考)ドンペリドンの効果と副作用|使う前に知りたいリスクとは?|コ…
食後投与の場合、血中濃度到達時間が約1.66時間に延長し、最高血中濃度も低下します 。このため、食前30分から1時間前の服用が推奨されています 。
参考)https://hokuto.app/medicine/dU7nj1UsKHmesuPvl443
坐剤を使用した場合は、直腸内投与後約2時間で血中濃度がピークに達し、半減期は約7時間となります 。嘔吐が激しく経口投与が困難な場合や、乳幼児への投与時に坐剤が選択されます 。
参考)302 Found
ナウゼリンの適応症と臨床使用場面
成人における適応症
慢性胃炎、胃下垂症、胃切除後症候群による消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨満、上腹部不快感、腹痛、胸やけ、げっぷ)の改善に用いられます 。また、抗悪性腫瘍剤やレボドパ製剤投与時の副作用としての吐き気・嘔吐の軽減にも使用されます 。
参考)医療用医薬品 : ナウゼリン (ナウゼリンOD錠5 他)
小児における適応症
周期性嘔吐症、上気道感染症(風邪症候群)、乳幼児下痢症に伴う吐き気・嘔吐の治療に適応があります 。小児用量は体重1kgあたり1.0-2.0mgを1日3回に分けて投与しますが、1日総投与量は30mgを超えないよう注意が必要です 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000577374.pdf
逆流性食道炎での使用
消化管運動機能改善薬として、胃酸分泌抑制薬と併用することで逆流性食道炎の症状改善効果が期待されます 。食道の蠕動運動を改善し、胃から腸への排出を促進することで胃酸逆流を軽減します 。
参考)逆流性食道炎を考察する その25 逆流性食道炎と消化管運動機…
ナウゼリンの副作用とプロラクチン上昇への注意
一般的な副作用
ナウゼリンで最も頻度の高い副作用は消化器症状で、下痢、腹痛、口渇などが0.1-5%未満の患者で報告されています 。神経系では眠気、頭痛、めまいが生じることがあり、服用中は車の運転や危険作業は避けるべきです 。
参考)ナウゼリン(ドンペリドン)に含まれている成分や効果、副作用な…
内分泌系への影響
ドンペリドンの抗ドパミン作用により、下垂体前葉からのプロラクチン分泌が促進される場合があります 。これにより女性では月経異常(70-80%)、乳汁分泌(50-60%)、不妊(30-40%)が生じる可能性があります 。男性では性欲減退、勃起障害、女性化乳房などが報告されています 。
参考)ナウゼリン
重大な副作用
稀ながら錐体外路症状(震戦、筋強剛など)、アナフィラキシー、肝機能障害、意識障害・痙攣などの重篤な副作用が報告されており、注意深い観察が必要です 。QT延長による不整脈のリスクもあるため、心疾患患者では特に慎重な投与が求められます 。
ナウゼリンの年齢別使用上の注意と禁忌
小児・高齢者での使用
小児では体重に基づいた用量調整が重要で、1日1.0-2.0mg/kgを3回に分割投与します 。乳幼児では坐剤の使用も可能で、10mg、30mg、60mgの規格があります 。高齢者では代謝機能の低下を考慮し、少量から開始し、症状に応じて慎重に増量する必要があります 。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00010661.pdf
禁忌事項と注意喚起
消化管出血、機械的腸閉塞など消化管に器質的障害がある患者では使用禁忌です 。プロラクチン分泌性下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)患者では、抗ドパミン作用によりプロラクチン分泌が更に促進されるため禁忌とされています 。
参考)医療用医薬品 : ドンペリドン (ドンペリドン錠5mg「杏林…
CYP3A4阻害薬(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、イトラコナゾールなど)との併用により血中濃度が上昇し、QT延長のリスクが高まるため併用注意です 。腎機能・肝機能障害患者では薬物の蓄積により副作用が増強する可能性があるため、用量調整や投与間隔の延長を検討する必要があります。
現在では多剤形(錠剤、OD錠、ドライシロップ、坐剤)が利用可能で、患者の年齢や症状、服薬能力に応じた選択が可能となっています 。