涙点外反 病態と原因と手術と予防

涙点外反 病態と原因と手術

涙点外反の全体像
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病態と分類を整理

流涙症の原因としての涙点外反を、眼瞼外反症や涙道閉塞と比較しながら理解する視点をまとめます。

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代表的な手術と選択

退行性下眼瞼外反に対するLTSやmedial spindleなど、涙点外反を是正する術式の要点を整理します。

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予防と多職種連携

高齢者や顔面神経麻痺症例での早期介入、スキンケアや点眼指導など、予防的介入の工夫を考えます。

涙点外反 病態と流涙症との関係

涙点外反は、本来涙湖に向かって内側に開口しているはずの涙点が外側へ反転し、涙湖との接触を失うことで導涙機能が低下する病態である。下眼瞼の弛緩や下眼瞼外反症の一部として出現することが多く、流涙症の原因検索では「涙道閉塞がないのに涙があふれる症例」で必ず確認すべき所見になる。英文では「punctal eversion」あるいは「lacrimal punctum ectropion」と表現され、初期には涙点外反による流涙だけが目立ち、進行すると結膜露出・炎症・角膜障害を伴う眼瞼外反へ移行しうる点が強調されている。

臨床的には、涙点の向きと位置が評価の中心となる。正常では涙点は涙丘側に位置し、涙湖側にやや内反しているが、涙点外反では涙点が眼球表面および涙湖から離れ、皮膚側へ向かっているため、涙が物理的に涙点へ到達できない。また、顔面神経麻痺や重度の眼瞼外反症では、まばたきによる涙排出ポンプ機構の破綻も加わり、導涙障害と分泌性流涙が複合して症状を悪化させる。

参考)Ectropion: Causes, Assessment,…

涙点外反 原因と眼瞼外反症・退行性変化

涙点外反の背景として最も頻度が高いのが、退行性(加齢性)眼瞼外反症や内側眼瞼の弛緩である。加齢に伴い下眼瞼を支持する腱・靱帯や眼輪筋、瞼板の支持力が低下すると、下眼瞼全体が外側に翻転し、内側端では下涙点の外反や上下涙点間距離の拡大が生じる。この「内側の弛緩」が目立つタイプでは、たとえ外見上は軽度の外反に見えても、涙点の位置ずれと涙湖からの逸脱が顕著で、流涙の訴えが強い症例も少なくない。

他の原因としては、瘢痕性眼瞼外反(熱傷・外傷・手術後などによる瘢痕収縮)、顔面神経麻痺による麻痺性眼瞼外反、眼瞼腫瘍や皮膚弛緩による機械的外反などが挙げられる。整容的な下眼瞼切開術やフェイスリフト後に下眼瞼外反をきたし、その一部として涙点外反を生じる美容外科領域の症例も報告されており、皮膚切除量や眼輪筋処理が不適切な場合にリスクが増す。退行性変化と美容医療の既往が重なる高齢女性では、とくに詳細な病歴聴取が重要である。

涙点外反 診断と鑑別・評価のコツ

診察では、まず自然なまばたき時の下眼瞼の位置と涙点の向きを観察し、軽く下眼瞼を牽引して戻りのスピードや瞼板の弾性を確認する。涙点が常に角膜側から離れている、もしくは下方に偏位している場合には、軽度の外反症例でも「punctal ectropion」と記載し、導涙障害の程度を意識した評価が望ましい。内側眼瞼の弛緩の有無は、下眼瞼内側を外側へ牽引した際の抵抗や上下涙点間距離の変化が参考になる。

鑑別として重要なのは、涙道閉塞(鼻涙管閉塞・涙小管閉塞・涙嚢炎など)や分泌性流涙症との区別で、涙道洗浄・涙道内視鏡検査で明らかな閉塞がなく、涙液産生も正常にもかかわらず流涙が持続する場合には、涙点形態・眼瞼形態の評価を再確認する必要がある。英文の眼形成外科の総説では、眼瞼外反の評価項目として「lid position」「punctal position」「lateral canthal angle」などが系統的に示されており、涙点位置を独立した評価軸として扱うことの重要性が強調されている。

涙点外反 手術 LTSとmedial spindle手技のポイント

退行性下眼瞼外反に伴う涙点外反では、水平弛緩の是正が基本となり、Lateral Tarsal Strip(LTS)などの外側支持組織の短縮・再固定術が広く用いられている。LTSでは外眼角腱を一部切離し、瞼板をストリップ状に形成して外側骨膜に再固定することで、下眼瞼の張力を回復させる。切除量については一定のコンセンサスはないものの、弛緩の程度に応じておおむね5〜8mm程度の切除を行うことが多く、過切除による内反化を避けるため術中に瞼裂幅や眼球位置を繰り返し確認することが推奨されている。

一方、内側の弛緩や下涙点の外反が主体の場合、medial spindle(medial tarsorrhaphy)と呼ばれる内側眼瞼の楔状切除・縫縮術が有効である。EyeWikiでは、涙点外反と内側退行性外反に対して、結膜側の紡錘形切除と内側瞼板の縫合を行う「medial spindle procedure」が紹介されており、単独またはLTSとの併用で良好な成績が報告されている。国内の形成眼科のブログでも、上下涙点より内側の結膜を皮膚粘膜移行部まで切除し上下を縫合するmedial tarsorrhaphyが、内側弛緩型の眼瞼外反に対して行われる術式として解説されている。

涙点外反 手術 眼形成と美容外科の「修正手術」という独自視点

一般の教科書・ガイドでは、涙点外反は主に眼形成外科領域の退行性眼瞼外反の一病型として扱われる。しかし、実臨床では、美容目的の下眼瞼切開や下眼瞼除皺術、フェイスリフト後に生じた瘢痕性・機械性の下眼瞼外反に、涙点外反が合併している症例が一定数存在する。こうした症例では、「皮膚が足りないから外反は仕方ない」と判断されることがある一方で、実際には瞼板処理と内側支持の再建を組み合わせることで、涙点の位置と眼瞼の支えを再構築し、流涙症状を大きく改善できる余地がある。

美容外科での修正手術では、単に皮膚移植やボリューム補填を行うだけでなく、LTSやmedial spindleに準じた「眼形成外科的アプローチ」を取り入れることで、涙点の復位と眼表面保護を同時に達成できる可能性がある。とくに中顔面リフトなどで頬部を強く牽引した症例では、外側支持だけが過剰に強くなり、相対的に内側の弛緩と涙点外反が顕在化するケースがあり、下眼瞼外反症の再手術プランニングの際には「涙点の向き」と「上下涙点間距離」をあらためて評価することが、流涙や羞明の長期改善に寄与すると考えられる。

涙点外反 予防・保存的治療と多職種でのケア

軽度の涙点外反や、一過性の炎症・浮腫に伴う外反では、まず保存的治療と生活指導が検討される。一般的な眼瞼外反症と同様、潤い保持のための人工涙液や保護用軟膏の夜間使用、眼表面を守るための保護眼鏡や湿房ゴーグルが有用とされるほか、皮膚の乾燥や過度な擦り洗いによる牽引を避けるスキンケア指導も重要である。顔面神経麻痺症例では、早期からのテーピングによる眼瞼の支持やリハビリテーションを通じて、眼瞼外反と涙点外反の進行を抑える試みが行われている。

高齢者の流涙症診療では、「ドライアイだと思って市販点眼だけで様子見」というパターンが少なくなく、内反症・外反症・涙道疾患が見逃されることがある。看護師や視能訓練士が問診の段階で「まぶたが外にめくれていないか」「涙が頬を伝っていないか」といった視診チェックを組み込み、必要時には眼形成外科への紹介基準を共有することで、涙点外反を含む眼瞼形態異常を早期に拾い上げることができる。さらに、術後フォローでは、患者自身にスマートフォンでの自撮り写真を活用してもらい、術前後および経時的な眼瞼形態と流涙の変化を記録することで、再発や新たな外反兆候を早期に検出する独自のモニタリング手法として応用しうる。

参考)高齢者の逆さまつげ(老人性眼瞼内反)で目がゴロゴロする方へ

流涙症と眼瞼外反症の症状・原因・治療の概要が整理されており、涙点外反を含む外反症の患者説明に活用しやすいページです。

眼瞼外反症 (がんけんがいはんしょう)とは

退行性下眼瞼外反に対するLTSやmedial tarsorrhaphyの具体的な適応や術中写真が掲載されており、涙点外反を伴う症例の手術戦略を検討する際の参考になります。

退行性下眼瞼外反について

英文だが、medial spindle procedureを含むpunctal eversion・medial ectropionの手術手技と適応が整理されており、涙点外反の外科的治療理解に有用です。

Medial Spindle Procedure – EyeWiki