鉛中毒予防規則はんだ付け作業
鉛中毒予防規則はんだ付け作業の法的位置づけ
鉛中毒予防規則におけるはんだ付け作業は、労働安全衛生法施行令別表第四で定められた鉛業務の一つとして位置づけられています。屋内作業場において自然換気が不十分な場所でのはんだ付け作業は、特に厳格な管理が求められる作業として規定されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/4bf5154ff116e13d4c36ac1b4eb805cb39f4f134
鉛中毒予防規則第十六条では、屋内作業場におけるはんだ付け作業について、局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置の設置を義務付けています。自然換気が不十分な場所とは、窓がない場所または床面積の1/20の窓がない場所として解釈されており、こうした環境では特別な注意が必要です。
参考)https://www.eic.or.jp/qa/?act=viewamp;serial=26121
はんだには一般的に鉛が含まれており、加熱によって鉛酸化物の微粒子が発生します。これらの微粒子を吸入することで、慢性的な鉛中毒を引き起こすリスクがあるため、適切な予防措置が不可欠となっています。
参考)https://www.uchihashi.co.jp/support/post521/
鉛中毒予防規則はんだ付け作業の健康診断要件
はんだ付け作業に従事する労働者に対しては、鉛中毒予防規則第53条に基づく特殊健康診断の実施が義務付けられています。自然換気が不十分な場所におけるはんだ付け作業では、1年以内ごとに1回の定期健康診断が必要です。
参考)https://www.chubu-ishikai.or.jp/kensin_center/wp-content/uploads/2019/02/11_tokusyu_13_namari.pdf
健康診断項目には以下が含まれます。
- 消化器症状(食欲不振、便秘、腹部不快感、腹痛等)
- 末梢神経症状(四肢の伸筋麻痺または知覚異常等)
- 関節痛・筋肉痛
- 血中鉛濃度および尿中デルタアミノレブリン酸の測定
血中鉛濃度が5μg/dL(0.24μmol/L)以上の場合、鉛中毒の診断が確定します。長期間にわたり10μg/dL以上の濃度が続くと、認知障害のリスクが上昇するため、早期発見と継続的な監視が重要です。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/22-%E5%A4%96%E5%82%B7%E3%81%A8%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E9%89%9B%E4%B8%AD%E6%AF%92
鉛中毒予防規則はんだ付け作業環境測定システム
はんだ付け作業を行う屋内作業場では、鉛中毒予防規則第52条により、1年以内ごとに1回の作業環境測定が義務付けられています。測定は労働安全衛生法第65条に基づく作業環境測定機関によって実施される必要があります。
参考)https://bkb.co.jp/topics/metal-test-flow/
測定方法はA測定とB測定によって行われ、空気中における鉛濃度を評価します。宮城県での調査によると、はんだ付け作業を行う事業場の測定結果は、A測定・B測定ともに管理区分1の良好な結果を示すことが多いものの、継続的な監視が重要です。
参考)https://www.miyagis.johas.go.jp/information/tyousa/307
作業環境測定では以下の点が評価されます。
- 空気中鉛濃度の数値測定
- 管理区分(第1、第2、第3管理区分)による評価
- 換気設備の効果確認
- 呼吸用保護具の使用状況の確認
鉛中毒予防規則はんだ付け作業の症状と健康影響
はんだ付け作業による鉛曝露では、慢性中毒が最も一般的な健康影響として現れます。軽度の鉛中毒では症状が現れないことが多く、症状が生じる場合も数週間かそれ以上の時間をかけて徐々に現れるのが特徴です。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/25-%E5%A4%96%E5%82%B7%E3%81%A8%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E9%89%9B%E4%B8%AD%E6%AF%92
典型的な慢性鉛中毒の症状。
- 消化器症状:食欲減退、便秘、腹痛
- 神経症状:頭痛、めまい、感覚障害
- 筋骨格系症状:関節痛、筋肉痛
- 全身症状:疲労感、脱力感
- 口腔内症状:金属味の自覚
血中鉛濃度が50μg/dL(2.4μmol/L)を超えると、腹部痙攣、便秘、振戦、気分変化などの症状が現れる可能性があります。造血器障害として正球性または小球性貧血が生じることもあり、網状赤血球数の増加や赤血球の好塩基性斑点の出現が特徴的な所見となります。
慢性曝露では腎機能障害が無症状のうちに進行することがあるため、定期的な健康診断による早期発見が重要です。
鉛中毒予防規則はんだ付け作業の具体的安全対策
はんだ付け作業における具体的な安全対策は、複数の層による防護システムの構築が基本となります。作業環境の工学的対策として、局所排気装置の設置が最も重要な要素です。
参考)https://www.kotohira.biz/column/safety-of-usuing-solder/
工学的対策の要点。
- 局所排気装置:はんだ付け作業箇所への専用フード設置
- プッシュプル型換気装置:効率的な空気循環システム
- 全体換気装置:作業場全体の空気質管理
- 作業台への受樋・受箱設置:鉛粒子の飛散防止
参考)https://zrf.or.jp/wp/wp-content/themes/cms_zrf/pdf/download/file_07.pdf
個人防護具による対策。
- 防じんマスク(国家検定合格品)の着用
- 労働衛生保護服の着用
- 労働衛生保護手袋の着用
- 労働衛生保護眼鏡の着用
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001416077.pdf
管理的対策として重要なのは、はんだ付け作業後の手洗いの徹底です。また、はんだ槽使用時は表面の水滴除去を徹底し、適正なコテ先温度設定によりフラックス飛散を防止することも重要な安全対策となります。
作業環境の維持管理では、床面を真空掃除機または水洗により容易に清掃できる構造とし、定期的な清掃により鉛粒子の蓄積を防ぐ必要があります。