ナファモスタット透析投与量の計算方法

ナファモスタット透析投与量計算

ナファモスタット透析投与量の基本
💊

標準投与量設定

体外循環時には毎時20~50mgを5%ブドウ糖注射液で持続注入する標準的な投与量

⚖️

体重あたり計算式

体重1kgあたり毎時0.06~0.20mgの範囲で個々の患者状態に応じて調整

🩸

抗凝固モニタリング

ACT(活性化凝固時間)150~170秒を目標として投与量を調節

ナファモスタット透析での基本投与量

血液透析におけるナファモスタットメシル酸塩の基本投与量は、添付文書に基づいて毎時20~50mgを5%ブドウ糖注射液に溶解し、抗凝固剤注入ラインより持続注入することが定められています。体外循環開始前には、ナファモスタット20mgを生理食塩液500mLに溶解した液で血液回路内の洗浄・充填を行う必要があります。

参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00061696.pdf

持続的腎代替療法(CRRT)においては、実際の臨床使用では10~40mg/hrの範囲で投与されることが多く、そのうち30mg/hr程度での使用が最も多いとの報告があります。出血リスクの高い患者や重症患者では、添付文書記載量よりもやや少ない用量で慎重に投与される傾向が見られます。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/31/6/31_31_582/_pdf

ナファモスタット投与量の体重換算計算

汎発性血管内血液凝固症(DIC)における用法・用量では、体重1kgあたり毎時0.06~0.20mgを24時間かけて静脈内に持続注入するとされています。この体重あたりの計算方式は、患者の個体差を考慮した投与量設定の基準となります。

参考)https://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/pdf/files/314.pdf

例えば、体重60kgの患者の場合、最小投与量は60kg × 0.06mg = 3.6mg/hr、最大投与量は60kg × 0.20mg = 12mg/hrとなります。実際の臨床現場では、持続的血液濾過透析においてナファモスタットの平均投与量は0.3~0.37mg/kg/hrで使用されている報告もあります。

ナファモスタット投与量調節のモニタリング

ナファモスタットの投与量調節では、ACT(活性化凝固時間)を指標とすることが推奨されており、目標値として150~170秒程度に設定している文献が多数報告されています。ACTの測定タイミングは、投与開始や投与量変更から1~2時間後または24時間後に行い、必要に応じて調整を実施します。
一方で、APTT活性化部分トロンボプラスチン時間)を指標とする施設もあり、1日1回測定してAPTT延長やフィルターライフが24時間以上で減量する方法も採用されています。投与量調節の実際では、ベースラインの1.2~1.5倍を目標とする場合もあり、施設によって方法が異なっているのが現状です。

ナファモスタット投与の特殊な計算方法

臨床現場での実際の調製において、ナファモスタット50mg×3を5%ブドウ糖15mLで調製する場合や、50mg×2を5%ブドウ糖10mLで調製する場合があります。透析時間あたりの投与量が3mLとなる計算では、前者が4時間透析、後者が3時間透析での使用を想定した調製方法です。

参考)ナファモスタットの計算方法を教えてください。 – ・ナファモ…

アフェレシス治療では、ナファモスタットの持続投与量として0.5mg/kg/hrが標準的な用量として記載されており、これは通常の透析よりも高い投与量設定となっています。特殊な膜や治療条件によって必要投与量が変動することも考慮すべき重要なポイントです。

参考)https://www.apheresis-jp.org/download?file_id=186065

ナファモスタット投与量計算の実践的考慮事項

AN69膜(アクリロニトリル・メタリルスルホン酸ナトリウム共重合体膜)を使用する場合、ナファモスタットの吸着性が高いため、通常よりも高い投与量(中央値29mg/h vs 12mg/h)が必要となることが報告されています。膜の種類による薬物動態の変化は、投与量計算において重要な考慮事項となります。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11414190/

フィルターライフの観点から見ると、30mg/hr以上で投与されている場合のフィルターライフは平均30時間を超える傾向があり、10~20mg/hrの比較的低用量では平均より短いフィルターライフとなることが示されています。敗血症患者では凝固障害によりフィルターライフが短縮する可能性があるため、患者の病態に応じた投与量調整が必要です。
高齢者では生理機能の低下を考慮して減量することが推奨されており、また腎機能や肝機能の状態によって薬物動態が変化するため、個々の患者の状況に応じた慎重な投与量設定が求められます。ナファモスタットの半減期は約8分と短いため、回路内で局所的に作用し、透析終了後には速やかに効果が減弱することも投与量計算の際に考慮すべき特徴です。

参考)透析で使われる「フサン」とは?その役割・特徴・注意点を解説