脈絡膜脈動
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脈絡膜脈動の眼圧と所見
脈絡膜脈動は、眼底観察中に脈絡膜(とくに後極〜乳頭周囲)側の動きとして捉えられることがあり、臨床的には「脈絡膜側の容積変化が相対的に大きい」状況を疑う入口になります。
この“相対的に大きい”を作る代表が低眼圧で、眼圧が過度に低下すると眼球形状が歪みやすく、脈絡膜剥離や低眼圧黄斑症など視機能に直結する合併症が問題になります。低眼圧は緑内障手術後などで起こり得て、低眼圧・脈絡膜剥離が合併症として説明されています。
低眼圧が絡むケースでは、眼底で「隆起性変化」や皺襞を拾うだけでなく、前房深度、創部漏出の有無、炎症所見など“房水動態の破綻”をセットで見にいくのが安全です(原因が残る限り脈絡膜側の変化も戻りにくいからです)。
現場での実務に落とすなら、脈絡膜脈動を疑った瞬間に優先度を上げるチェックは次です。
・眼圧(低値か、急変か)
参考)緑内障の手術(トラベクレクトミー・トラベクロトミー)|足利ば…
・術後/外傷/炎症の文脈(過剰濾過・漏出・ぶどう膜炎など)
参考)緑内障手術の種類|藤沢市辻堂の辻堂神台眼科|茅ヶ崎・藤沢
・視力低下の質(歪視・中心暗点・一過性の見えにくさ)
・眼底:脈絡膜剥離を示唆する隆起、皺襞、乳頭周囲の変化
脈絡膜脈動とOCTAのOCT
脈絡膜脈動は“動き”の現象なので、静止画の所見だけで完結させず、OCTで形態(皺襞、漿液性変化、脈絡膜厚、脈絡膜下の液体成分など)を押さえると解像度が上がります。
さらにOCTAは造影剤を使わず、短時間で網膜〜脈絡膜の血流情報を層別(3次元的)に評価でき、来院ごとに繰り返し評価できる点が臨床上の強みです。
一方で注意点として、OCTAは血流成分の抽出画像であり、蛍光眼底造影(FA/ICGA)が示す漏出(leak)などは原理的に描出されません。つまり「脈絡膜脈動+漿液性変化」が疑わしい症例で、漏出や炎症性の活動性評価が必要なら、OCTA“だけ”で完結させない判断が重要です。
実践上は、次のように役割分担すると迷いが減ります。
・OCT:形態(皺襞、網膜下/脈絡膜下液、黄斑の変形)を確認
・OCTA:層別の血管構造・灌流の“抜け/保たれ”を補助的に確認kurihama-ganka+1
・FA/ICGA:漏出や染まり、充盈遅延などが必要なときに追加(OCTAと読み替えない)
参考)All about OCT Angiography~原理と特…
脈絡膜脈動のうっ血乳頭と乳頭浮腫
脈絡膜脈動そのものと混同されやすいのが、乳頭周囲で見える“拍動”や“うっ血”の文脈です。乳頭浮腫(うっ血乳頭)は頭蓋内圧亢進を示す所見として位置づけられ、眼底では両側性の乳頭腫脹・充血、網膜静脈の怒張・蛇行、乳頭周囲の出血などが典型とされています。
うっ血乳頭が長期化すると視力低下や暗点拡大など視機能障害につながり得るため、「脈絡膜脈動らしい動き」だけに注意が偏ると、より危険な中枢性原因を見落とすリスクが残ります。
実際の鑑別では、眼圧の異常(低眼圧)を示す所見群なのか、頭蓋内圧亢進を示唆する乳頭浮腫の所見群なのかを、“乳頭の形(腫脹)”と“静脈の所見(怒張・蛇行)”で切り分けるのが合理的です。
紹介・連携の判断材料として、医療従事者向けに最低限共有したい観察点は以下です。
・乳頭境界の不鮮明、乳頭の隆起、乳頭周囲出血の有無
参考)乳頭浮腫 – 17. 眼疾患 – MSDマニュアル プロフェ…
・網膜静脈の怒張・蛇行(両眼性か)
・頭痛、嘔気、体位で変わる視症状などの随伴(問診で拾う)
・眼圧と前眼部所見(低眼圧の状況証拠を固める)
脈絡膜脈動の低眼圧と脈絡膜剥離
脈絡膜脈動を“危ない方向”に解釈するなら、最優先は低眼圧に伴う脈絡膜剥離(漿液性/出血性)です。緑内障手術の合併症説明としても、低眼圧・脈絡膜剥離は術後に起こり得る重要なイベントとして記載されています。
低眼圧では眼球が変形しやすく、視力低下の原因になり得るため、患者が「痛くない」「見える」と言っていても、視機能の質(歪み、かすみ、中心の見え方)を丁寧に聞く価値があります。
また、ろ過手術後の資料では、低眼圧による脈絡膜剥離や低眼圧黄斑症への注意が示され、眼圧が低い状態が続くと黄斑の皺壁が問題になる旨も述べられています。
現場で役立つ“行動”に落としたチェックリストです。
・眼圧が低い(例:7mmHg以下でリスク上昇が示唆される資料あり)
参考)https://www.tsukazaki-hp.jp/data/media/2023eye_rokasyujutsu.pdf
・脈絡膜剥離を示す眼底の隆起(周辺部からでも)
・OCTで黄斑の皺襞(低眼圧黄斑症の方向)
・創部漏出や過剰濾過(術後)を疑う状況
「脈絡膜脈動=珍しい所見」ではなく、「低眼圧合併症の入口」になっていないかを毎回確認するだけで、臨床の安全域が上がります。
脈絡膜脈動の眼動脈と内頸動脈(独自視点)
検索上位の解説では、脈絡膜脈動は“眼の中”の話として閉じがちですが、医療従事者向けには「眼循環の上流」を意識した説明が有用です。内頸動脈閉塞性病変では、内頸動脈の主要分枝である眼動脈血流が低下し、眼循環障害を来して視機能を低下させ得ることが、国内の報告でも明記されています。
この文脈に脈絡膜脈動を接続すると、眼圧だけで説明しきれないケース(例:全身の血行動態変化、頸動脈病変、循環不全)が混ざっていないかを考える“追加の目”が持てます。特に、片眼性の訴えが強い、眼底で虚血性変化が疑わしい、TIA様症状やリスク因子がある場合は、眼科内だけで完結させず頸動脈評価など連携の発想が出しやすくなります。
もちろん、脈絡膜脈動それ自体が内頸動脈狭窄の診断所見だと言い切るのは避けるべきですが、「眼動脈血流低下→眼循環障害」という上流の事実を踏まえると、説明の説得力と安全設計が上がります。
・眼科から他科へ情報提供するなら
- 眼症状(視力低下の性状、片眼/両眼、一過性か)
- 眼所見(乳頭浮腫の所見があるか、低眼圧の根拠があるか)msdmanuals+1
- 頸動脈病変の可能性(危険因子、既往、TIA様エピソード)
参考:乳頭浮腫(うっ血乳頭)の眼底所見と頭蓋内圧亢進との関係(鑑別の軸)
参考:OCTAの原理(非侵襲・層別表示)と、FA/ICGAで見える漏出がOCTAでは出ない注意点(検査選択の根拠)
J-STAGE:All about OCT Angiography~原理と特長~
参考:緑内障手術後の低眼圧・脈絡膜剥離(術後合併症としての位置づけ)