脈絡膜剥離 低眼圧
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脈絡膜剥離 低眼圧の発症機序:過剰濾過・房水漏出・毛様体
脈絡膜剥離は、脈絡膜上腔に液体(脈絡膜下液)が貯留して脈絡膜が隆起する状態で、術後は低眼圧とセットで遭遇しやすい合併症です。
とくに濾過手術後は、房水漏出(縫合不全や薄い結膜の裂孔)や過剰濾過により眼圧が下がり、房水の循環動態異常として脈絡膜剥離が起きやすい、という整理が臨床的に有用です。
低眼圧が続くと、眼球壁の張力が低下し、ぶどう膜強膜系の圧バランスが崩れ、脈絡膜上腔への液体移動が助長されます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8302742/
一方で「毛様体機能低下(房水産生低下)」が関与するシナリオもあり、炎症や手術侵襲の影響で眼圧が上がらないタイプでは、漏れていないのに低眼圧が続くため、評価の起点を誤らないことが重要です。
臨床では原因を大きく二分すると判断が速くなります。
- 「出ていき過ぎ」:房水漏出、過剰濾過(濾過胞が大きい・Seidel評価など)
- 「作れない」:毛様体機能低下、強い炎症、薬剤影響など(手術直後や炎症強い症例で意識)
特に過剰濾過では「眼圧7mmHg以下」が一つの目安として示され、低眼圧による脈絡膜剥離や低眼圧黄斑症、前房消失に注意する、という具体的な警戒ラインが提示されています。
また、重症例の文脈では「術前高眼圧、術後低眼圧、高齢者で発生しやすい」という臨床像も、説明とリスク評価に役立ちます。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6328531/
脈絡膜剥離 低眼圧の鑑別:浅前房・悪性緑内障・出血性脈絡膜剥離
「浅前房+低眼圧」を見たときは、まず房水漏出の有無をSeidel試験で確認し、漏出(+)なら房水漏出、(-)なら過剰濾過の可能性を優先して考える、という分岐が実践的です。
同じ浅前房でも「浅前房+高眼圧」の場合は、悪性緑内障や瞳孔ブロックに注意する、と整理されます。
悪性緑内障は、毛様体で産生された房水が前房へ流れず硝子体側へ回り、硝子体体積増加を介して水晶体・虹彩が前方移動し、浅前房と隅角閉塞をきたす、と説明されています。
つまり、前房が浅いという同じ表現でも、眼圧と前房・隅角の状態をセットで読まないと、治療方向が真逆になり得ます。
もう一つ、見逃しが致命的になりうるのが出血性脈絡膜剥離です。
出血性脈絡膜剥離は「急激な眼圧変化で後毛様動脈が破綻し、脈絡膜上腔に血液が貯留する」状態とされ、緑内障手術の数%に発生しうる重篤合併症と位置づけられています。
リスクとして高血圧・高齢・抗血小板/抗凝固薬内服などが挙げられており、術前問診(薬剤・循環器背景)と術後の急変時の優先度判断に直結します。
鑑別を現場で回すための「最低限のチェック項目」は次のとおりです。
- 眼圧:低いのか高いのか(治療方針が分岐)
- 前房:浅前房/前房消失の有無
- 濾過胞と結膜:濾過胞の丈・範囲、裂孔の有無
- Seidel試験:房水漏出の有無(oozing含む)
- 眼底:高度剥離や出血を示唆する所見(不透見なら超音波へ)
脈絡膜剥離 低眼圧の検査:Seidel試験・眼底・超音波・OCT
低眼圧関連イベントの入口は、ベッドサイドで完結する評価が強いです。
Seidel試験はフルオレセイン染色でスリット観察し、Seidel(+)で房水漏出を示し、術後合併症の切り分けに直結します。
また、濾過胞は「軽く眼球を押して膨らむか」を見ることで癒着の可能性を推定し、術後管理の次手(ニードリング等)の判断材料になります。
眼底所見は重要ですが、術後出血や角膜混濁で見えない場面も少なくありません。
その場合、超音波(B-scan)で眼球の断面像として後眼部病変の有無を確認できるため、「眼底が見えない=評価不能」とならない導線を普段から持っておくべきです。
参考)検査・治療機器 – 医療法人 広田眼科医療法人 広田眼科
低眼圧黄斑症の評価では、黄斑部の皺壁や形態変化の把握がポイントになります。
ツカザキ病院の資料では、低眼圧黄斑症は「低眼圧により黄斑部に皺壁ができ、2カ月以上残ると視力も形状も戻らず眼軸も短くなる」とされ、時間軸を意識したフォローが強調されています。
この「形態+経時変化」を追ううえでOCTは有用で、網膜断面を三次元的に把握できる検査として一般向けにも解説されています。
参考)眼底三次元画像解析(OCT)検査 &#8211; 春日井…
検査の組み立てを、医療従事者向けに「順番」として固定すると事故が減ります。
- 眼圧測定(低い/高い)
- 前房・隅角の評価(浅前房、悪性緑内障の示唆)
- Seidel試験(房水漏出の有無)
- 眼底+必要なら超音波(高度剥離・出血性の示唆)hirotaganka+1
- 黄斑はOCTで形態フォロー(低眼圧黄斑症の時間軸管理)hirataganka+1
参考:ろ過手術後合併症(低眼圧・脈絡膜剥離・低眼圧黄斑症)とSeidel試験、過剰濾過への対応、脈絡膜剥離の排液適応がまとまっています。
脈絡膜剥離 低眼圧の治療:点眼・縫合・ヒアルロン酸・ガス・排液
治療の基本方針は「原因に合わせて、眼圧を適正域へ戻し、前房と黄斑を守る」です。
房水漏出が明らかな場合、資料ではSCL装用(径の大きい2weekタイプ)や結膜縫合術が挙げられており、漏出が続くと癒着が進み濾過胞形成が不完全となり、のちの高眼圧や感染にもつながる点が強調されています。
過剰濾過で眼圧が下がりすぎ、合併症が出るレベルなら「縫合で締める」という外科的方向が現実的です。
術後眼圧が低い場合の対応として、強膜弁の追加縫合(眼圧コントロール)が示されています。
前房が保てない(前房消失など)場合は、アトロピン点眼で毛様体位置を後退させ前房回復を期待し、それでも回復しないときはヒアルロン酸を前房内へ注入する「前房形成術」が提示されています。
ここは現場で混乱しがちですが、前房形態が視機能に直結するため、眼圧数字だけで様子を見るのは危険です。
さらに、重篤な低眼圧(低眼圧黄斑症・脈絡膜剥離)では「眼圧を上げる処置」が必要になり得ます。
小沢眼科内科病院の解説では、眼圧を上げる目的で眼内に粘性の高いヒアルロン酸を注入したり、硝子体腔にガスを注入する、濾過量が多い場合は結膜上から縫合を追加する、といった具体策が述べられています。
高度な脈絡膜剥離では追加手術が必要になる場合がある、とも記載されており、「保存→介入」の切り替えを先延ばしにしない姿勢が重要です。
排液(ドレナージ)のタイミングも押さえておきたい点です。
ツカザキ病院の資料では、眼圧コントロールしても改善しない、または網膜同士がくっつくほど高度な場合、3週ほどで経強膜的に脈絡膜下液の排液(強膜開創術)を行う、とされています。
この“待つ期間”が提示されている点は意外に実務的で、紹介・手術相談のタイミングを考える材料になります。
参考:低眼圧・脈絡膜剥離(重篤例での追加処置、ヒアルロン酸やガス注入、出血性脈絡膜剥離の説明)が具体的です。
脈絡膜剥離 低眼圧の独自視点:術後指導「やってはいけない動作」設計
検索上位の解説は「病態と治療」に寄りがちですが、医療現場で再発・増悪を減らすには、術後指導を“動作レベル”に落とすことが効きます。
ツカザキ病院の資料では、術後は「ぶつけない/押さない/こすらない/りきまない」、特に術後2〜3週は眼圧が低くなるため重いものを持たない、低眼圧状態で急ないきみや血圧上昇で駆逐性出血が起きることもある、と具体的に注意喚起されています。
この記載は、低眼圧と出血性合併症の“生活場面での増悪要因”を言語化しており、患者説明の質を上げる材料になります。
現場で使える「説明テンプレ(例)」を、医療従事者向けに組み替えると次のようになります。
- 🚫 目を押す:濾過路が開きやすく、低眼圧を助長し得るため避ける(洗顔・点眼時も注意)
- 🚫 強くこする:結膜や縫合部への機械刺激で房水漏出・感染リスクが上がる文脈を説明する
- 🚫 いきむ・重い物:低眼圧期の急激な血圧上昇は重篤出血の懸念があるため、排便指導も含めて調整する
- ✅ 痛み・流涙・充血・眼脂:濾過胞感染など重篤合併症のサインとして早期受診を促す
さらに一歩踏み込むなら、医療者側で“指導内容の優先順位”を決めておくのが有効です。
低眼圧・脈絡膜剥離が疑われる患者には、①押さない(物理的増悪を止める)→②受診閾値を下げる(痛み/流涙など)→③生活制限(いきみ・重い物)という順に伝えると、理解が追いつきやすくなります。
この独自視点の狙いは、病態理解の差があっても「危ない行動を減らす」ことです。
結果として、軽症の脈絡膜剥離が“高度剥離”へ進むリスクや、低眼圧期の重篤出血の誘因を、日常生活から減らす設計につながります。pmc.ncbi.nlm.nih+1