ムンプスウイルス症状と合併症の基礎知識

ムンプスウイルスの症状

ムンプスウイルス感染の主な症状
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発熱と全身症状

37~40℃の発熱が1~6日間続き、頭痛や倦怠感、筋肉痛を伴います

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唾液腺の腫脹

耳下腺や顎下腺が腫れ、触れると痛みがあり2~7日間持続します

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潜伏期間の特徴

感染から症状出現まで12~25日間(平均18日間)の潜伏期間があります

ムンプスウイルス感染初期の症状

ムンプスウイルスに感染すると、約2~3週間の潜伏期間を経て症状が現れます。初期症状としては、悪寒、頭痛、食欲不振、全身のだるさ(倦怠感)、微熱や中等度の発熱がみられます。これらの症状は耳下腺が腫れる12~24時間前から現れることが多く、感染初期の兆候として重要です。潜伏期間は12~25日間とされ、多くの場合約18日間で症状が現れますが、この間も感染力を持っているため注意が必要です。

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初期症状の段階では、37~38℃台の発熱が2~3日程度みられることが多く、約半数の患者で発熱が確認されます。しかし、約25~30%の人では明らかな症状が出ない不顕性感染となり、本人が気づかないうちに周囲に感染を広げてしまう可能性があります。不顕性感染は特に低年齢の乳児に多く見られ、年齢とともにその割合は低下していきます。

参考)おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)|こども感染症ナビ|塩野義製薬


感染初期には食欲低下や全身倦怠感が顕著になり、日常生活に支障をきたすことがあります。また、頭痛や筋肉痛、首の痛みなどの症状を伴うこともあり、これらは唾液腺の腫脹が始まる前触れとして現れることが特徴的です。

参考)おたふくかぜ

ムンプスウイルスによる耳下腺腫脹の特徴

耳下腺腫脹はムンプス感染の最も特徴的な症状で、初期症状に続いて12~24時間後に現れます。耳の前下方のほっぺたにある耳下腺が腫れることで、顔が「おたふく」のような形になることから「おたふくかぜ」という通称で呼ばれています。腫脹は発症後1~3日でピークに達し、3~7日間持続した後、徐々に消失していきます。​
耳下腺の腫れ方には個人差があり、まず片側が腫脹し、数日遅れて反対側が腫脹する場合が多くみられます。しかし、両側同時に腫脹するケースや、片側だけで終わるケースも存在します。腫脹部位には疼痛があり、特に物を噛んだり飲み込んだりする際に痛みが増します。柑橘類のジュースのような酸っぱい液体を飲むと、唾液の分泌が促進されるため痛みが強くなることが特徴的です。

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耳下腺以外にも、顎の下にある顎下腺や舌の下にある舌下腺が腫れることがあります。これらの唾液腺が腫脹すると、触れても痛みがあり、この時期には熱が約39.5~40℃まで上がることもあります。発熱は通常1~3日間続きますが、腫脹のピークと発熱のピークが重なることで、患者は特に強い不快感を覚えることになります。

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ムンプスウイルス症状の経過と持続期間

ムンプス感染症の全体的な経過は、発症から完治まで約1~2週間を要します。発熱は1~6日間続き、多くの場合3~4日程度で解熱します。唾液腺の腫脹は発症後1~3日にピークとなり、その後徐々に縮小して3~7日で消失するのが一般的な経過です。

参考)おたふくかぜ


症状の持続期間には個人差があり、思春期以降の成人が発症すると症状がひどくなる傾向があります。特に大人になってから初めて感染した場合、耳下腺の腫脹がより顕著になり、痛みも強く、発熱も高熱となることが多いです。また、回復までの期間も小児に比べて長くなる傾向があります。

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感染力は耳下腺が腫れる1~2日前から腫脹後5日間程度が最も強いとされています。このため、学校保健安全法では「耳下腺の腫脹が出現してから5日間を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」を出席停止期間と定めています。ただし、症状が出ない不顕性感染の場合でも感染力があるため、周囲に感染者が出た際には注意が必要です。

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ムンプスウイルス症状における年齢別の違い

ムンプス感染症の症状は年齢によって大きく異なります。0歳児では感染しても症状が出ない不顕性感染がほとんどで、明らかな症状がないまま免疫を獲得することが多いです。低年齢の乳幼児では不顕性感染の割合が30~40%に達し、年齢とともにその割合は低下していきます。​
幼児期から学童期にかけて感染した場合、典型的な耳下腺腫脹と発熱を示すことが多くなります。この年齢層では症状は比較的軽度で、合併症のリスクも低い傾向にあります。しかし、思春期以降の成人が初めて感染すると、症状が著しく重症化する特徴があります。

参考)精巣炎 – いかど腎泌尿器科クリニック・松本市


成人男性がムンプスに感染した場合、約20~30%の確率で精巣炎を合併します。精巣炎は耳下腺炎の発症から約7日後に現れることが多く、急激な精巣の疼痛と腫大を伴います。片側性の精巣炎では約10%、両側性では約30%が将来的に不妊症を引き起こす可能性があるため、成人男性にとっては特に注意が必要な合併症です。

参考)精巣炎とは


MSDマニュアル家庭版:ムンプスの詳細な症状や年齢別の特徴について専門的な医学情報が掲載されています

ムンプスウイルス症状と他疾患との鑑別点

ムンプスの診断において重要なのは、他の原因による耳下腺炎との鑑別です。実際の臨床現場では、耳下腺が腫れたすべての患者がムンプスウイルスによる流行性耳下腺炎とは限らず、毎年一定数の「非ムンプス性耳下腺炎」が存在します。反復性耳下腺炎という疾患では、何度も耳下腺が腫れることがありますが、これはムンプスとは異なる病態です。

参考)外来診療におけるムンプスの診断|国立健康危機管理研究機構 感…


ムンプス特有の特徴として、両側性の耳下腺腫脹が多いこと、2日以上腫脹が持続すること、発熱を伴うことが挙げられます。しかし、これらの症状だけでは確定診断には不十分で、医療機関では唾液からのウイルス分離やRT-LAMP法による遺伝子検査、血清中のムンプス特異的IgM抗体検査などを用いて確定診断を行います。​
鑑別が必要な疾患には、細菌性耳下腺炎、唾石症、悪性腫瘍などがあります。細菌性耳下腺炎では耳下腺の圧痛がより強く、膿性の分泌物が確認されることがあります。また、ムンプスでは通常見られない局所の発赤や熱感が顕著な場合は、他の疾患を疑う必要があります。正確な診断のためには、臨床症状に加えて検査所見を総合的に判断することが重要です。​

ムンプスウイルス感染の合併症リスク

ムンプスウイルスは唾液腺だけでなく、髄膜、内耳、精巣、卵巣、膵臓など様々な臓器に感染しやすい特徴があります。このため、重篤な合併症を引き起こす可能性があり、予防接種による事前対策が重要視されています。

参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4268314/


最も頻度の高い合併症は無菌性髄膜炎で、ムンプス患者の1~10%程度が発症するとされています。脳を包む髄膜にムンプスウイルスが感染して炎症を起こし、高熱、嘔吐、激しい頭痛、項部硬直などの症状が現れます。症状は通常1~2週間ほどで治まりますが、稀に脳炎や脳症に進展することがあり、その場合は生命に関わる重篤な状態となります。

参考)https://www.shujii.com/0886687676/doc/suzue7676_2023030201.pdf


ムンプスによる難聴は、片側性の高度感音難聴として突然発症することが特徴的です。発症頻度は低いものの、一度発症すると治療が困難で永続的な後遺症として残るケースが多いため、特に注意が必要な合併症です。その他、成人男性では精巣炎(20~30%)、成人女性では卵巣炎、膵臓の炎症による腹痛なども報告されています。​
おたふくかぜの合併症・後遺症について:合併症のリスクや発症頻度、後遺症の可能性について詳細に解説されています

ムンプスウイルス症状の治療と対処法

ムンプスウイルスに対する特効薬や抗ウイルス薬は現在のところ存在しないため、治療は症状を和らげる対症療法が中心となります。高熱や痛みを軽減するために、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬を使用します。精巣炎を合併した場合も同様に、鎮痛剤による対症療法が基本となります。

参考)おたふく風邪


自宅での療養では、腫れた部分を冷湿布や冷たいタオルで冷やすことで痛みを和らげることができます。特に精巣炎の場合は、患部を氷嚢などでアイシングすることが推奨されます。食事については、口を大きく開けたり飲み込む際に痛みがあるため、のどごしが良く刺激の少ない食べ物を選びます。ゼリー飲料、冷めたスープ、ヨーグルトなどが適しています。

参考)おたふく風邪の症状とは?原因や治療方法を解説


水分補給は特に重要で、発熱がある場合は脱水症状に陥りやすいため、経口補水液や牛乳などでこまめに水分を摂取する必要があります。ただし、柑橘系のジュースなど酸味の強い飲料は唾液の分泌を促進して痛みを増強させるため避けるべきです。安静を保つことも回復を早めるために重要で、少なくとも発症から5日間は自宅で療養し、他人との接触を避けることが推奨されます。​

ムンプスウイルス症状の予防接種の重要性

ムンプスの予防には、ワクチン接種が最も効果的な方法です。日本では乾燥弱毒生おたふくかぜワクチンが使用されており、1歳以上の方に接種可能です。世界保健機関(WHO)は全世界での定期接種を推奨していますが、日本では現在任意接種として位置づけられており、地域によっては公費助成が受けられる場合があります。

参考)ムンプス(おたふくかぜ)ワクチン – 東京ビジネスクリニック…


日本小児科学会は、確実な予防効果を得るために2回接種を推奨しています。推奨される接種スケジュールは、1歳になったらなるべく早く1回目を接種し、数年(2~6年)空けて2回目を接種する方法です。ワクチンは生ワクチンに分類され、接種量は0.5mLで皮下注射により投与されます。

参考)おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン|彩の国 予防接種推進協議会


ワクチン接種後は、2~4週間程度の潜伏期を経て、軽度の発熱や唾液腺の腫れが見られる場合があります。稀に無菌性髄膜炎を発症する可能性があるため、接種後に激しい嘔吐や頭痛などの症状が出た場合には、速やかに医療機関を受診する必要があります。なお、妊婦に対しては接種禁忌とされているため、妊娠の可能性がある場合は接種を避け、接種後2か月間は避妊が必要です。

参考)おたふくかぜワクチン href=”https://kobe-kishida-clinic.com/vaccination/mumps-vaccine/” target=”_blank”>https://kobe-kishida-clinic.com/vaccination/mumps-vaccine/amp;#8211; 乾燥弱毒生おたふくかぜ…


VPDを知って、子どもを守ろうの会:ムンプスワクチンの接種時期や効果、副反応について詳しい情報が提供されています