MRSA眼内炎 症例 予後 治療 ガイド

MRSA眼内炎 症例 予後と治療

MRSA眼内炎 症例と治療ポイント
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内因性MRSA眼内炎の特徴

重症全身感染やIVHカテーテル感染を背景に発症する内因性眼内炎のリスクと診断のポイントを整理します。

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術後MRSA眼内炎と予防策

白内障術後を中心とした術後眼内炎の起炎菌としてのMRSAと、その予防・早期対応を検討します。

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MRSA眼内炎 予後と治療ガイド

バンコマイシンを中心とした治療戦略と、予後不良例から学ぶべき点をまとめます。

MRSA眼内炎 内因性 症例とリスク背景

MRSA眼内炎の中でも内因性眼内炎は、血流を介して眼内に菌が到達する病態であり、基礎疾患や侵襲的医療行為を背景に発症する点が特徴です。

報告例では糖尿病やステロイドパルス療法、中心静脈栄養(IVH)カテーテル留置など、全身の免疫能が低下した状況でMRSA菌血症を起こし、その数日後に眼痛と急激な視力低下を来したケースが典型的です。

内因性MRSA眼内炎では、来院時すでに前房蓄膿や高度の硝子体混濁、虹彩ルベオーシス、網膜剝離など、眼球内全体に炎症が波及していることが多く、初診時視力が指数弁や光覚といった重症例が目立ちます。

参考)https://kusabaclinic.com/imagesWP/pdf/gjo2016-5_06.pdf

抗菌薬全身投与が先行していることも多く、眼科受診時にはすでに血液培養が陰転している場合もあるため、全身の感染症状・治療経過と合わせて「内因性眼内炎を疑うきっかけ」を拾えるかどうかが重要です。

参考)MRSAによる内因性眼内炎の1例 (臨床眼科 66巻4号)

内因性眼内炎を疑う場面として、次のようなポイントを共有しておくと有用です。

  • 発熱・悪寒・白血球増多などの菌血症所見に続く片眼の急激な視力低下。
  • 透視困難な硝子体混濁と前房蓄膿を伴う重度ぶどう膜炎像。
  • 術後などの明確な外傷性契機がない場合。

全身管理の現場では、敗血症患者に「視力の見え方の変化」「眼痛」をルーチンに確認することが、眼科紹介のタイミングを早めるうえで実践的な工夫になります。

MRSA眼内炎 術後 眼内炎の臨床像と予防

MRSA眼内炎は白内障手術や硝子体手術などの術後眼内炎としても報告されており、術後眼内炎の起炎菌の中では頻度は高くないものの、視力予後不良となりやすい点で特に注意が必要です。

白内障術後感染性眼内炎の検討では、検出菌としてMRSA・MRSE・α溶血性連鎖球菌などグラム陽性球菌が多く、特にMRSAや腸球菌は予後不良因子として挙げられています。

MRSAが検出された症例では、白内障手術創部に限局した角膜浸潤が全例で見られたとの報告があり、「創近傍の角膜浸潤+前房炎症」が術後早期に出現した場合には、耐性ブドウ球菌を含む重症眼内炎を念頭に置く必要があります。

参考)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/JJOS_PDF/107_590.pdf

眼内炎を疑うサインとして、以下のポイントを術後患者説明や看護記録に組み込むと、受診遅れを減らす一助になります。

  • 術後1週間以内の急激な視力低下、霧視、自発痛。
  • 充血、結膜浮腫に加えて、眼脂増加や前房蓄膿。
  • 通常の術後炎症経過から逸脱する強い前房炎症。

予防の観点では、術前の眼表面の清潔保持や、結膜嚢内の菌叢コントロール(ニューキノロン点眼など)が一般的ですが、MRSA保菌リスクが高い患者(長期入院、頻回抗菌薬使用、施設入所など)では、術前スクリーニングや入院環境での感染対策を眼科チームと感染制御チームが連携して検討することが推奨されます。

参考)https://totsukaganka.com/society-post/6001/

術後感染症全般の予防についての抗菌薬適正使用の考え方

術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン

MRSA眼内炎 予後 視力転帰とタイミング

MRSA眼内炎は、他の起炎菌による眼内炎と比較して視力予後が不良であることが複数の検討で指摘されています。

特に、内因性眼内炎や術後早期からの高度炎症例では、積極的な治療を行っても眼球癆に至るケースがあり、失明リスクの高い感染症として位置づけられます。

視力予後には、起炎菌だけでなく、以下の因子が大きく影響します。

  • 初診時の視力(光覚弁か指数弁かなど)。
  • 発症から硝子体手術・硝子体内抗生剤注入までの時間。
  • 角膜浸潤や網膜剝離の有無。

眼内炎全般のデータではありますが、MRSAや腸球菌は「視力予後の悪い起炎菌」として位置づけられ、早期の硝子体手術+眼内/硝子体内抗生剤投与が推奨される背景となっています。

一方、近年は抗VEGF薬硝子体注射後の眼内炎など、治療関連手技に伴う眼内炎も増加しており、外来で大量の注射手技を行う施設では「わずかな炎症変化を見逃さない」体制づくりが予後改善に直結します。

現場レベルの工夫としては、

  • 「術後炎症・眼内炎疑い」用の標準オーダーセットを作成し、培養採取・硝子体検査・抗生剤注射を迅速に実施できるようにする。
  • 看護師・視能訓練士が術後患者からの電話相談時にチェックすべき項目をリスト化し、眼内炎疑いのトリアージを標準化する。

といったシステム的対策が、予後改善の鍵になります。

眼内炎の発症時期別起炎菌と硝子体内注射の位置づけ

眼内炎に対する抗生物質硝子体注射のタイミングと効果

MRSA眼内炎 治療 バンコマイシンと新規抗MRSA薬

MRSA眼内炎の治療は、局所と全身を組み合わせた集学的治療が基本であり、眼内(硝子体内)および全身に対する抗MRSA薬の適切な選択が重要です。

一般的なMRSA感染症ではバンコマイシン(VCM)が第1選択薬とされており、眼内炎でも硝子体内注射・全身投与のいずれにおいてもバンコマイシンが治療の中心となっています。

眼科領域では、市販点眼薬が無効であったMRSA眼感染症(涙嚢炎や角膜炎)に対し、院内調剤でバンコマイシン点眼液(例:50 mg/mL)を作成し、1日4回程度の点眼で細菌学的および臨床的治癒を得た症例報告があります。

参考)MRSA眼感染症に対するバンコマイシン点眼液の使用経験 (臨…

眼内炎レベルでは点眼単独では不十分ですが、角膜創部浸潤や前部の炎症コントロールに補助的に使用されることがあり、「全身・硝子体内治療+局所VCM点眼」の組み合わせが検討されることもあります。

一方、新しい抗MRSA薬としてリネゾリドやダプトマイシンなどが登場し、肺炎や菌血症など全身感染症ではバンコマイシンに代わる選択肢として検討されていますが、眼内移行や安全性に関するエビデンスはまだ限定的です。

参考)https://www.jseptic.com/journal/31.pdf

そのため、眼内炎における第一選択は依然としてバンコマイシンであり、新規薬剤を用いる場合は感染症専門医と眼科医が連携し、全身感染症の制御と眼機能温存のバランスを慎重に検討する必要があります。

MRSA感染症全般における抗MRSA薬の位置づけ

亀田感染症ガイドライン:抗MRSA薬の使い方

MRSA眼内炎 予防とチーム医療 独自の視点

MRSA眼内炎は、一度発症すると視機能の回復が難しいため、「予防」と「早期拾い上げ」が何よりも重要です。

従来は術前の点眼・皮膚消毒など個々の手技に焦点が当てられてきましたが、MRSAに関しては院内の耐性菌サーベイランスやハイリスク患者のリストアップといった「施設単位の感染対策」と眼科診療の橋渡しが鍵になります。

独自の視点として、次のような工夫を「眼科×感染管理」のチームで検討すると、MRSA眼内炎のリスク低減につながります。

  • 入院患者のMRSA保菌状況を眼科外来の予約票や電子カルテのポップアップで可視化し、術前からスタンダードプリコーションを徹底しやすくする。
  • 手術室と外来処置室で使用する器具・洗浄ラインを、MRSA高リスク患者とそれ以外で時間帯やラインを分離し、環境汚染のリスクを低減する。
  • 術後説明資料に「MRSA眼内炎を含む重症眼内炎のサイン」を図解で明示し、患者・家族が自宅でセルフチェックしやすい形にする(例:まぶたの腫れ方、前房のにごり、痛みの程度などを写真付きで)。

また、敗血症・長期IVH管理患者を多く扱うICUや内科チームに対し、「内因性眼内炎の早期サイン」を共有するショートレクチャーを定期的に行い、視力低下の訴えや眼痛が出た際に、眼科コンサルトを早期に依頼してもらう文化を作ることも現実的です。

眼科側では、内因性眼内炎が疑われる患者の診療時に、全身状態や血液培養結果、使用中の抗MRSA薬などの情報を感染症チームとリアルタイムで共有できるようなフロー(共通テンプレートやチャットツールの活用)を整備しておくと、治療開始の遅れを減らすことができます。

参考)亀田感染症ガイドライン:抗MRSA薬の使い方 – 亀田総合病…

内因性眼内炎や眼内炎全般の硝子体手術成績・起炎菌の詳細な検討

白内障術後感染性眼内炎の硝子体手術成績