網膜症の種類と分類
網膜症の主要な病型と分類体系
網膜症は、網膜に生じる様々な病的変化の総称であり、原因や病態によって多岐にわたる分類が存在します 。代表的な網膜症の種類には、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、加齢黄斑変性、網膜剥離などがあり、それぞれ独特の病態と臨床経過を示します 。
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原因による分類では、血管性網膜症(糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症など)、炎症性網膜症(ぶどう膜炎に伴うもの)、変性性網膜症(加齢黄斑変性、網膜色素変性など)、外傷性網膜症に大別されます 。
参考)https://www.nichigan.or.jp/public/disease/
国際的に使用される重症度分類として、糖尿病網膜症では国際重症度分類、改変Davis分類、新福田分類があり、これらは臨床所見に基づいて病期を体系的に評価します 。新福田分類では良性網膜症(A群)と悪性網膜症(B群)に大別し、さらに細分化して治療方針の決定に活用されています 。
参考)http://igaku.co.jp/pdf/tonyo1002-3.pdf
網膜症の糖尿病性網膜症の詳細分類
糖尿病網膜症は進行の程度により、単純糖尿病網膜症、前増殖糖尿病網膜症(増殖前網膜症)、増殖糖尿病網膜症の3段階に大別されます 。この分類は治療方針の決定と予後予測に極めて重要な役割を果たしています。
単純糖尿病網膜症(A1-A2期)では、毛細血管瘤、点状・斑状出血、硬性白斑などの初期変化が認められますが、多くの場合自覚症状はありません 。この段階では適切な血糖コントロールにより改善が期待できる場合もあります。
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前増殖糖尿病網膜症(B1期)では、網膜内細小血管異常、軟性白斑、網膜浮腫、線状・火焔状出血、静脈拡張などの所見が現れ、蛍光眼底造影では網膜無血管野が確認されます 。この段階では新生血管形成の準備段階にあり、積極的な治療介入が必要となります。
増殖糖尿病網膜症(B2-B5期)では、新生血管の出現、硝子体出血、線維血管性増殖組織の形成、牽引性網膜剥離などの重篤な合併症が生じます 。早期増殖網膜症から末期増殖網膜症まで段階的に進行し、視機能に深刻な影響を与える可能性があります。
参考)https://sugawara-eye.jp/wp-content/uploads/2021/01/956e90bba3eb978d21d522d47b0a3a9b.pdf
網膜症の血管閉塞性疾患の特徴と分類
網膜静脈閉塞症は、閉塞部位により網膜中心静脈閉塞症(CRVO)と網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)に分類されます 。さらに、網膜の血流状態により缺血型と非缺血型に細分類され、治療方針と予後が大きく異なります 。
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網膜中心静脈閉塞症では、視神経乳頭部での静脈の根元が閉塞し、網膜全体に広範囲な変化が生じます 。一方、網膜静脈分枝閉塞症では、静脈の枝分かれ部分での閉塞により、限局性の網膜変化が特徴的です 。
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光学相干断層撮影血管造影(OCTA)による最新の評価では、黄斑部の血管密度の低下と灌流状態の悪化が視力予後に密接に関連することが明らかになっています 。缺血型では浅層・深層の血管密度が有意に低下し、視力回復が困難な場合が多いとされています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11420977/
これらの疾患では、高血圧や動脈硬化などの全身疾患との関連が深く、特に高齢者での発症率が高いことが知られています 。早期診断と適切な治療により、視機能の保持と合併症の予防が可能となります。
網膜症の加齢性変化と変性疾患
加齢黄斑変性は、委縮型(dry型)と滲出型(wet型)の2つの主要な病型に分類されます 。委縮型では網膜色素上皮の萎縮が緩徐に進行し、滲出型では脈絡膜新生血管の形成により急激な視力低下が生じます。
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委縮型加齢黄斑変性は、ドルーゼンの蓄積から始まり、地図状萎縮へと進行する慢性経過を示します 。現在のところ根治療法は存在せず、進行抑制を目的とした栄養補助療法や定期的な経過観察が主体となります。
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滲出型加齢黄斑変性では、脈絡膜新生血管からの血管内皮増殖因子(VEGF)の過剰産生が病態の中心となります 。抗VEGF薬の硝子体注射が標準治療となり、ラニビズマブ、アフリベルセプトなどの薬剤が使用されています 。
参考)糖尿病網膜症の診断と治療
中心性漿液性脈絡網膜症は、網膜色素上皮からの漏出により黄斑部に漿液性剥離が生じる疾患で、多くは自然回復しますが、慢性化すると不可逆的な視機能障害を来すことがあります 。レーザー治療により回復期間の短縮や再発予防効果が期待されます。
参考)https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=51
網膜症の現代的診断技術と治療選択
現代の網膜症診断において、光学相干断層撮影(OCT)、OCT血管造影(OCTA)、広角眼底撮影などの画像診断技術が重要な役割を果たしています 。これらの技術により、従来困難であった網膜微細構造の評価や血流動態の可視化が可能となりました。
OCTでは網膜の断層像を高分解能で取得し、黄斑浮腫の程度や部位、網膜層構造の変化を詳細に評価できます 。特に糖尿病黄斑浮腫では、中心窩網膜厚の測定により治療効果の判定と経過観察が行われています 。
治療技術の進歩により、レーザー光凝固術ではパターンスキャンレーザー(PASCAL)の導入により、従来法と比較して短時間で正確な治療が可能となり、治療時の疼痛軽減と術後炎症の軽減が図られています 。
硝子体手術技術の向上により、増殖糖尿病網膜症や黄斑円孔、網膜剥離などの複雑な病態に対しても良好な治療成績が報告されています 。また、抗VEGF薬やステロイド薬の硝子体注射は、多くの網膜血管疾患において第一選択治療となっています 。