網膜色素上皮剥離 治療
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網膜色素上皮剥離 治療で最初に確認する原因
網膜色素上皮剥離(PED)は「網膜の最外層にある網膜色素上皮が、その下の脈絡膜から剥がれる病態」と定義され、治療はこの“形”自体よりも背景疾患の同定が要になります。
臨床的に頻度が高いのは、加齢黄斑変性症(とくに滲出型に関連するPED)と中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)に伴うPEDで、同じPEDでも自然経過・介入タイミング・第一選択が異なります。
医療従事者向けの実務としては、紹介状や既往歴に「ステロイド使用」「強いストレス」「片眼性反復」「変視症」などの情報があるだけで、鑑別の初速が変わります。
一方で、PEDは“単独の診断名”として扱うと判断を誤りやすい点が落とし穴です。たとえばCSCでは自然軽快することが多い一方、遷延・再発を繰り返すと視力低下や変視症が残存し得るため、「放置=無治療」ではなく「計画的な経過観察」が治療の一部になります。
逆に滲出型加齢黄斑変性症が背景にある場合、活動性の新生血管が関与する局面では抗VEGF薬が視機能維持の中心になり、介入を遅らせるほど不可逆変化のリスクが上がります(PEDだけを見て待つ判断は危険になり得ます)。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/4d8c5739c655a375149cdc9c8c5ac55f11f6bd99
現場で迷うのは「PEDがある=すぐ治療」でも「PEDはよくあるから経過観察」でもなく、次の問いを同時に整理することです。
- 視力低下や変視症など症状は進行しているか。
- OCTで網膜下液や黄斑部の構造変化が増悪しているか。
- 漏出や活動性を示唆する所見があるか(必要なら造影)。
網膜色素上皮剥離 治療に必須の検査とOCTの読み方
網膜色素上皮剥離の評価はOCTが中心で、診察だけでは分かりにくい網膜の状態を明らかにし、治療方針の決定や治療効果判定に役立つとされています。
特にCSCなど滲出液が関与する病態では、OCTで「漿液性網膜剥離(網膜下液)」やPEDの形態を追い、時間軸での増減を捉えることが、治療介入の根拠になります。
症状としては視力低下や中心視野の歪み(変視症)が挙がり、これらがある場合は“見え方の訴え”を数値(視力)と構造(OCT)で同期させる姿勢が重要です。
検査の組み立ては、①OCTで構造評価→②必要に応じて蛍光眼底造影で漏出評価、が現実的です。
SRT(選択的網膜色素上皮レーザー治療)の文脈でも、CSCの典型例では蛍光眼底造影で点状漏出、ICGで脈絡膜血管の拡張や透過性亢進が見られ、漿液性網膜剥離の原因がRPE障害によるバリア破綻である、という整理がされています。
この「RPEのバリア機能・ポンプ機能」という生理が、治療選択(レーザー、PDT、抗VEGF)の狙いの違いを理解する鍵になります。
また、OCTは“病名当て”だけでなく、説明にも効きます。患者は「剥離」という語から重篤な網膜剥離(手術が必要なもの)を連想しやすい一方、PEDは病態が多様で、原因疾患により見通しが変わるため、画像を見せながら「どの層が、どの方向に、どの液が関与しているか」を短く翻訳するだけで治療同意の質が上がります。ikec+1
網膜色素上皮剥離 治療としての経過観察の基準
網膜色素上皮剥離では、原因や程度によって経過観察が治療選択肢になり得ることが明記されています。
特にCSCでは、発症から数カ月で自然治癒することが多い一方で、遷延・再発を繰り返す症例も少なくなく、長引くほど視力低下や変視症が残り得るため、観察中でも“いつ介入に切り替えるか”を先に決めておく必要があります。
観察の実務は「次回予約まで待つ」ではなく、OCTで網膜下液の推移を追い、症状(変視症、中心暗点)と一致して悪化する兆候があれば方針を更新する、というプロトコル化が安全です。
経過観察で見落としやすいのは、患者が慣れてしまい症状を過小申告するケースです。視力が保たれていても「歪みが強くなった」「文字がにじむ」などの質的変化があれば、OCT再評価や造影を前倒しする価値があります。
また、観察を選ぶ場合でも、患者説明では「今は治療しない」ではなく「今は自然軽快が見込めるので、OCTで構造が悪化しないかを監視し、悪化時はPDTやレーザー等へ切り替える」と伝えると離脱が減ります。
網膜色素上皮剥離 治療の光線力学療法と抗VEGF薬
網膜色素上皮剥離の治療選択肢として、光線力学療法(PDT)と抗VEGF薬硝子体内注射が挙げられています。
CSCの文脈では、従来は点状漏出部へのレーザー光凝固が行われてきたものの、中心窩近傍では暗点リスクから適応になりにくく、そのような症例にPDTが有効と報告され、中心窩付近やびまん性漏出でも治療できる可能性が説明されています。
ただしPDTはベルテポルフィリンの光感受性による生活制限(直射日光回避)など運用上の注意点があり、適応説明に“治療後の生活”まで含める必要があります。
抗VEGF薬は、滲出型加齢黄斑変性など新生血管が関与する病態で中心的に用いられる治療で、PEDを伴うケースでも原因疾患の活動性コントロールが主目的になります。
また臨床では「抗VEGFで網膜下液は減るがPEDが残る」など反応が一様でないことがあり、治療効果判定を“PEDの高さ”だけで行うとミスリードされます(視力、網膜下液、出血、症状のセットで判定する)。
網膜色素上皮剥離 治療の独自視点:SRTとRPE機能再建
検索上位の一般向け解説では、経過観察・PDT・抗VEGFが中心になりがちですが、医療者が知っておくと説明の幅が出るのが「RPEそのものを標的にする低侵襲レーザー」という考え方です。
選択的網膜色素上皮レーザー治療(SRT)は、神経網膜や脈絡膜に傷害を与えずRPE細胞のみを選択的に治療できる低侵襲網膜レーザーの一つとされ、CSCでは異常RPE細胞のバリア修復・ポンプ機能正常化の観点から良い適応と説明されています。
SRTでは病的RPEを破砕→マクロファージなどが処理→周囲RPEが遊走・増殖して再被覆し、外網膜血液関門のバリア機能や排出ポンプ機能が“活性化する”可能性が述べられており、単に漏出点を焼く発想と異なる点が意外性になります。
さらに実務的に面白いのは、SRTは従来の光凝固のように白濁が出ないため「照射できたか」を目視しにくく、光音響(OA)技術で微小気泡由来の圧力波を測定してリアルタイム評価する、という工学的な進化がある点です。
この話は患者向けに詳細を語る必要はありませんが、医療チーム内(視能訓練士・看護師・検査部門)で「なぜ造影や再検が必要になるのか」「なぜ“焼けた跡”が見えないのか」を共有する説明材料として有用です。
また注意点として、SRTは“RPEの再増殖・遊走”が効いて初めて効果が出る整理のため、萎縮型加齢黄斑変性のようにRPE機能が損なわれた病変では萎縮拡大の報告があり、適応の見極めが重要とされています。
表:主要治療の狙い(医療者向けの整理)
| 選択肢 | 主な狙い | 注意点 |
|---|---|---|
| 経過観察 | 自然軽快が見込める病態で、OCTで増悪を監視する。 | 遷延・再発で視機能が残存障害になるため、介入への切替基準を事前に設定する。 |
| 光線力学療法 | 中心窩近傍やびまん性漏出でも治療可能で、漏出停止→吸収促進を狙う。 | 光感受性物質使用に伴う生活制限など運用上の注意が必要。 |
| 抗VEGF薬硝子体内注射 | 原因疾患(例:新生血管関連)を抑え、滲出・出血など活動性をコントロールする。 | 評価をPEDの形だけに寄せない(視力・網膜下液・症状のセットで判定)。 |
| SRT(低侵襲レーザー) | RPEのみを標的にし、バリア修復・ポンプ機能正常化を通じて液体吸収を促す。 | 目視評価しにくく、OAなど評価技術が重要/萎縮型では注意が必要。 |
箇条書き:外来での説明テンプレ(そのまま使える短文)
- 🧾「網膜色素上皮剥離は“病名”というより“所見”で、原因により治療が変わります。」
- 🔍「今日はOCTで形を確認し、必要があれば造影で漏れ(活動性)を評価します。」
参考)網膜剥離
- 🧭「自然に治りやすいタイプもありますが、長引くと見え方が残ることがあるので、計画的に経過を追います。」
- 💉「原因によっては注射(抗VEGF)や光線力学療法など、視力を守るための治療に切り替えます。」
参考:網膜色素上皮剥離の定義・症状・治療選択肢(経過観察、光線力学療法、抗VEGF)
参考:SRTの原理と、CSCにおけるRPEバリア修復・ポンプ機能の位置づけ(低侵襲レーザーの考え方)