網膜血管腫状増殖と加齢黄斑変性
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網膜血管腫状増殖と3型MNV(RAP)病型分類
網膜血管腫状増殖(retinal angiomatous proliferation:RAP)は、新生血管型加齢黄斑変性における「3型MNV」に相当する病型として整理されます。
同ガイドラインでは、MNVを1型(RPE下主体)、2型(RPEを越えて網膜下へ伸展)、3型(網膜血管由来)に分類し、3型MNVを伴うものがRAPとも呼ばれる、と明示されています。
医療従事者の実務上は、「RAP=網膜内から始まり得る新生血管で、進行に伴いPEDや吻合所見が関与しやすい」という整理が、初診時の検査選択とフォロー設計に直結します。
また、患者説明で混乱しやすいのが「滲出型」という旧来用語です。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/ea9012e34ddd77dbf5ceea3eaad13b86da8c6f47
2024年の日本眼科学会系ガイドラインでは、滲出の有無にかかわらず新生血管が存在し得る点を踏まえ、「新生血管型(neovascular)AMD」という用語を採用する流れが示されています。
この用語の更新は、RAPのように検眼鏡的に典型的な滲出所見が目立たない局面でも、MNVを前提に診断・評価する姿勢を支えます。
網膜血管腫状増殖とOCT・OCTA・FA・ICGA検査
新生血管型AMD(RAPを含む)の診断および活動性評価には、視力・眼底所見に加えて、FA、ICGA、OCT、OCTAなどを組み合わせることが示されています。
とくに侵襲の少ないOCTは、治療前後の活動性評価(液体貯留の有無)に実臨床で用いられることが多い、という流れがガイドライン本文でも説明されています。
RAP(3型MNV)は、眼底写真だけで病変を捉えるのが難しい場面があり、軟性ドルーゼンが多い症例で網膜内出血があればOCTやOCTA、FA/ICGAで存在確認を行う、とされています。
OCT所見としては、発症早期から囊胞様黄斑浮腫が見られ、進行でPEDを併発することがある、という整理が提示されています。
また3型MNVに関連して、PED部でRPE断裂を示すbump signが観察され得ること、OCTAのB-scanで網膜表層血管と吻合した網膜内新生血管の連続シグナルを捉え得ることも、具体例として記載されています。
ここは見落としポイントで、「OCTでSRFが少ない=非活動性」と短絡せず、IRF・SHRM・出血など複数の指標で評価する姿勢が重要です。
意外に臨床で効く小技として、RAPを疑うときは「黄斑中心だけのスキャン」にならないよう注意が必要です。
ガイドラインでは、疾患活動性が高い部位は必ずしも中心窩に生じないため、黄斑もしくは病変全体をスキャンしてfluidやSHRMを正確に評価することが推奨されています。
つまり、撮像範囲とスキャン設計が、そのまま治療継続判断の精度に直結します。
網膜血管腫状増殖と活動性評価(IRF・SRF・PED・出血)
新生血管型AMDの活動性は、MNVからの滲出性変化があるかどうかで判断し、活動性あり/なしを区別する、と記載されています。
滲出性変化には、網膜内液(IRF)、網膜下液(SRF)、RPE下液(sub-RPE fluid)、出血、フィブリン、硬性白斑などが含まれ、OCTがfluid検出に有用とされています。
出血やフィブリンなどはOCT上SHRMとして観察され得るため、RAPのように網膜内出血を伴う文脈では、SHRMの解釈が実務的に重要になります。
PEDについても、ガイドラインは漿液性PEDと出血性PEDの鑑別の考え方を示しており、内容が透明なら漿液性、赤色の出血や器質化白色物が確認できれば出血性と判断する、とされています。
この鑑別は治療反応性だけでなく、合併症(例:大量出血→黄斑下血腫)のリスク見積もりにも関与します。
さらに、PEDの自然経過や治療後にRPE裂孔が生じ得ること、FAFで欠損部位が低蛍光となり検出しやすいことも示され、フォロー時の「見逃しやすい変化」として重要です。
なお、末期像との混同にも注意が必要です。
線維性瘢痕や囊胞様黄斑変性に伴う囊胞腔は、疾患活動性評価には用いない、と明確に述べられています。
「囊胞が残る=活動性が残る」とは限らず、治療継続の目的と限界(視力回復困難)を、画像所見とセットで共有することが実務上のトラブル回避になります。
網膜血管腫状増殖と抗VEGF薬・PDT治療指針
新生血管型AMD(RAPを含む)の治療第一選択は、抗VEGF薬の硝子体内注射である、とガイドラインに明記されています。
本邦で使用可能な抗VEGF薬として、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ブロルシズマブ、ファリシマブが挙げられ、代表的臨床試験で視力改善が示された旨が整理されています。
一方で安全性として、ブロルシズマブ投与後に網膜血管炎・網膜血管閉塞を含む眼内炎症が多いという報告があるため、早期発見を心がけるべきとも述べられています。
投与設計では、導入期(通常、月1回×連続3回:薬剤により4回)と維持期の概念が示され、維持期は固定投与、PRN、treat-and-extendなどから選ぶ枠組みが提示されています。
PRNは長期的に視力が低下し得ることが臨床試験で示された一方、treat-and-extendは月1回投与と同程度の視力改善・維持が得られる報告がある、とまとめられています。
実臨床では、患者の社会的状況や僚眼の状態も考慮して投与法を選択するのが望ましい、という記載があり、ここが「単にレジメンを覚える」以上に重要な実務ポイントです。
PDTについては、現在は安全性と視力改善の観点から抗VEGF薬併用が推奨されること、治療抵抗例ではPDT併用を考慮してよいことが示されています。
ただし、PDTは黄斑萎縮を増悪させる可能性があり、脈絡膜が薄い症例や黄斑萎縮がある症例では避けることが望ましい、さらに「3型MNVに対するPDTは現在では推奨されない」と明確に述べられています。
RAPでは「PDTを追加したくなる状況(反応不十分)」が現場で起こり得るため、この一文を知っているかどうかが方針の分岐点になり得ます。
網膜血管腫状増殖と長期管理(禁煙・食生活・僚眼)独自視点
新生血管型AMDは完治が不可能で、適切な治療と長期管理を行わないと不可逆的な視力低下を起こしやすい、とガイドラインに記載されています。
活動性が一時的に落ち着いていても再発し得ること、滲出を繰り返すことで萎縮性変化や線維性瘢痕を合併して視力が低下し得ること、僚眼にもMNVが高率に生じることを念頭に管理する必要がある、とされています。
ここから一歩踏み込んだ現場の独自視点としては、「片眼で生活できている人ほど、フォロー中断が最大リスク」になりやすい点です。
患者教育は“怖がらせる”のではなく、行動に落とすのが要点です。
例えば、禁煙は修正可能な危険因子であり、喫煙患者へ積極的な禁煙指導が推奨され、日本人疫学(Hisayama studyなど)で喫煙とAMDの関連が報告されている、と明示されています。
そのため、RAP治療の文脈でも「注射の回数」だけを説明するのではなく、禁煙・食生活・通院継続という“治療成績の土台”を、診断時点からルーチン化して伝えるのが効果的です。
食生活についても、魚(長鎖オメガ3多価不飽和脂肪酸)や果物・野菜(抗酸化物質)を多く摂り、飽和脂肪酸を控える食事が、各段階のAMD患者に推奨してよいと考えられる、と整理されています。
サプリメントはAREDS/AREDS2の知見がまとめられており、過剰摂取の副作用や併用時の注意点が示される一方、日本人での検証が十分でない点も併記されています。
現場では「サプリで何とかなる」へ誤誘導しないよう、画像所見(IRF/SRF/SHRM)と結びつけて“サプリは補助、通院と治療が主役”と位置づけるのが無難です。
最後に、医療従事者向けの運用チェックリストを置いておきます。
- 初診:OCTでIRF/SRF/PED/SHRM、可能ならOCTAで病変連続性、必要に応じFA/ICGAを検討。
- 治療導入:抗VEGF導入期→維持期(treat-and-extend等)を患者背景込みで設計。
- フォロー:中心窩だけでなく病変全体スキャン、RPE裂孔や線維化/萎縮の進行も監視。
- 生活指導:禁煙・食生活・僚眼リスクを“具体的行動”として反復。
診断・治療の一次情報(用語、病型分類、検査、治療フロー、PDTの注意点)がまとまっている(RAP/3型MNVの記載あり)